スバルとトヨタが共同開発。次世代EVのトヨタ版bZ4Xがワールドプレミア。 [2021年04月30日更新]
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トヨタ・スバルの協業プロジェクト第2弾。次世代EVが遂にベールを脱ぐ。
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2021年4月19日、トヨタは上海モーターショーにて、スバルと共同開発を進めてきた次世代BEV「bZ4X」を発表しました。bZ4Xは、トヨタの次世代EV戦略第2弾モデルであり、新たな時代の幕開けを告げる、全世界注目のモデルです。今後登場するスバル版とは兄弟車であり、トヨタグループの将来戦略の重責を担う1台となります。
昨年12月、トヨタは次世代EV戦略第1弾として、ミニマムEVモデル「C+pod」を発表。そして今回、本格BEVであるbZ4Xを発表したことで、トヨタの次世代EV戦略は漸く本格スタートを切ったこととなります。
おや?と思う方も居るでしょう。トヨタは、それ以前にもEVを市場投入済み。。。中国市場に投入されているCH-RやUXのEV仕様が、それです。ただ、これらは市場対応に迫られ投入した、既存モデルベースの急造モデル。これに対し、bZ4Xは次世代EV戦略に基づき、新開発のEV専用プラットフォーム「e-TNGA」をベースにゼロから開発された、完全なる次世代EV。両者は、出自からして全く異なるものなのです。
今回、スバルとトヨタの協業は、単なるOEMモデルの融通に留まりません。そもそも、e-TNGA自体が両者の共同開発なのです。スバルは、トヨタとともに次世代EV戦略を展開することで、絶望的とも思われた環境対応の壁に、漸く有効打を放つことができたのです。
未来を遮る壁に遂に穴は穿たれた・・・のでしょうか?
スバルに迫る2030年危機。CAFE規制が、スバルブランドの魅力を台無しにする?
スバルは、2030年に本格施行されるCAFE規制に対し、最も危険な立ち位置にいます。直近の高価格シフトにより、ラインナップはCセグメント以上に限定されているために、自社製モデルは只の1つさえ20km/Lをクリアすることはできず、そのうえOEM供給される「高燃費」モデルの販売台数はたった10%に過ぎません。これでは、到底CAFE規制のクリアは不可能です。
CAFE規制では、販売された全車両の燃費平均値が25.4km/Lに達せねばならないのです。あと、9年。たった、9年。。。喉元に突き付けられたナイフは、今にもスバルの命運を切り裂いてしまいそうに思われます。
だからこそ、bZ4Xはスバルにとって重要なのです。このモデル如何によっては、スバルは大きな転換期を迎えることになります。
スバルブランドを築き上げてきたのは、自動車本来の愉しさを追求する「こだわり」です。燃費には目を瞑って、走りの愉しさを存分に味わいたい!そういうファンが、スバルを支えてきました。ただ、CAFE規制をクリア出来ないのなら、スバルは刺激的なモデルを「リストラ」する他なく、そうなれば多くのファンを失うのは間違いありません。それは、そのままブランドの生存に直結します。
もし、このbZ4Xのスバル版が、しっかりと販売台数を積み上げることが出来れば、スバルは規制をクリアできるだけでなく、WRXのような刺激的なモデルを「販売する余地」を生み出すことができます。
未来志向のBEVと、伝統的なモデルの両立。それでこそ、スバルブランドの未来が拓かれると言えましょう。
トヨタのEV2正面戦術。bZシリーズと、それ以外。そして、ウーヴン・シティ。
トヨタは戦略上EVを2種に分けた上で、bZシリーズを2025年までに7車種、その他EVモデルを同年までに15車種、それぞれ導入する計画としています。
トヨタは、7車種展開するbZシリーズを「TOYOTA bZは、中国・米国・欧州など、EVの需要や再生可能エネルギーによる電力供給が多い地域で、多くのお客さまに受け入れていただけることを目指しているEV」と定義。「bZ」とは、「Beyond Zero」の略であり、今後展開されるBEVシリーズに冠せられるシリーズネーム。単なる排出ガスゼロ化を越えて、持続可能なカーボンニュートラル実現へ向けた願いと信念が込められています。
もう一方、15車種展開するEVについては、「『Mobility for All(すべての人に移動の自由を)』の実現に向け、電池のリユース・リサイクルの事業化やお客様向けのサービスなど、新しいビジネスモデルの構築を進めながら少人数・近距離の利用に焦点を置き、容量の小さな電池を搭載する超小型EV」としており、「C+pod」がこの第1弾に当たります。
恐らく、トヨタの本命はコチラでしょう。目下、建設中のウーヴン・シティ。ここでは、実証実験を行うために、様々な電動モビリティが投入されます。車いす、電動カート、キックボード、自転車、無人配達車等々、あらゆる形態が想像されます。このモビリティたちは、自動車の概念を次々に書き換え、移動の概念を根本から書き換えていくことになるでしょう。
ただ、こうしたモビリティたちは、既存の道路交通法の枠に収まらないもの。つまり、直ちに市販できるものでは無い、と思われます。ウーヴン・シティでの実証実験を通じて、確実な安全性を確立するとともに、将来的には法改正の努力が必要となるでしょう。
2019年に公表された、6つのバリエーション。そして、今回発表された7車種。
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7車種が展開される計画のbZシリーズ。これを、モビリティと商用車を含まないEV専用モデルと考えると、一体どのようなモデルが想定されるのでしょうか。それを紐解くには、トヨタが2019年6月7日に開催した「EVの普及を目指して」と題した方針発表の内容を振り返る必要があります。
この時、トヨタはEVを6つのバリエーションで展開する、としました。そのバリエーションは、ミディアムSUV(=bZ4X+スバル版)、ミディアムミニバン、ラージSUV、ミディアムセダン、ミディアムクロスオーバー、そしてスズキ、ダイハツと協業するコンパクトの計6つ。
e-TNGAでは、ホイールベースは可変なのに対し、全幅は固定されます。それを前提にすれば、ラージSUV、コンパクト以外の4つのモデルは全てe-TNGAを採用するはずです。
bZ4Xのサイズが大凡CH-R程度であることから、VOXY、プリウス、XVといったモデルが想定されます。車両価格300万円弱、世界的に見ても最も競争の激しい価格帯です。ここにトヨタは、EVを集中的に投入する戦略なのです。
ここに、米国市場対応のラージSUVと、日本市場対応のコンパクト。これで、6つ。あと一つは、何でしょう?それは、恐らくコンパクトの派生SUVモデルとなるでしょう。
2025年まで、あと4年。矢継ぎ早に7モデルを市場投入し、トヨタは新たな時代の幕開けを自ら告げることになります。
敢えて、トヨタブランドにEVを投入する理由とは。先行するEU勢をどう迎え撃つ?
このbZ4Xに於いて最も重要なポイントは、「レクサスではない」こと。これは、EU勢の戦略とは全く対照を成しています。VWグループでは、VW、シュコダではなく、ポルシェ、アウディでBEVを先行させています。EU勢はBEVを「プレミアムな存在」としてプロデュースすることを望んでいるのです。
ただ、EU勢の戦略が、BEVのコストダウンが進んでいない裏返しでもある点には、充分留意する必要があります。BEVとは、そもそもSDGsに呼応して施行されるCAFE規制に対応するために、各OEMが投入を急でいるプロダクトです。当然、これを考慮すれば、本来は台数が稼げる普及価格帯に投入するべきです。しかし、EU勢には現状それが不可能なのです。
トヨタは、今回のプレスリリースの中で次のように述べています。
「TOYOTA bZは、中国・米国・欧州など、EVの需要や再生可能エネルギーによる電力供給が多い地域で、多くのお客さまに受け入れていただけることを目指しているEVです。」
これは、先行投入を焦るEU勢に対する強力なメッセージとなるでしょう。そして、次のようにも述べています。
「『環境車は普及し、CO2削減に貢献してこそ初めて環境車としての意義がある』すなわちサステナブル(持続可能)な移動手段をプラクティカル(実用的)な形で提供する」と・・・。
トヨタがパートナーとともに展開する、パワーソース全方位作戦。
トヨタは、BEVだけがパワーソースの最適解である、とは言っていません。そこには、世界最大のOEMとしての稔侍があるように思えます。売れるものを創るのではなく、人類が必要とする移動体(=モビリティ)を提供する。トヨタは、それを社会的使命として、自らに課しているのです。
世界には、電力需給が良くない地域・国家や、再生可能エネルギーの導入が進まない国家もあります。南洋の孤島にBEVは、最適でしょうか?砂漠の真ん中に、BEVは好都合でしょうか?もし、BEVだけに特化すれば、そうした国家・地域の人々は切り捨てられることになります。何のためのBEV、誰のためのBEVか?BEV一辺倒のOEMは、よくよく考え直す必要があるでしょう。
トヨタは、「それぞれの事情に合わせ、お客様に『使いやすい、乗りたい』と感じて受け入れていただけるパワートレーンをご提供し、その結果、CO2排出量が削減されるということが重要」としており、「HV/PHV/EV/FCVという電動車のフルラインナップ化」を推し進め、「2025年までに70車種程度にラインアップを拡充」する計画であるとしています。
このトヨタのパワーソースの全方位作戦は、多大なリスクとコストを要します。勿論、トヨタ一社では到底賄えるものではありません。だからこそ、トヨタはパートナーを必要としました。それが、スバルであり、スズキ、ダイハツだったのです。これら4社は、電動パワートレインを共用しつつ、各々の「味付け」に専念することになるでしょう。
凄いだけのEVは作らない。本当に意味のあるEVを、必要とされる市場に投入。
今回、bZ4Xに関して公開された情報は、余り多くありません。特に、各種性能値やボディサイズ、後続距離などは、一切公開されていません。
ただ、スバルが2020年1月に開催した「技術ミーティング」で公開したミディアムSUVのモックアップモデルと、今回発表されたbZ4Xは、サイズ・シルエットともに非常に近似しています。その点から考慮しても、デザインはほぼ市販版であると見て間違いないでしょう。
初の本格BEVということで、期待されるのはスペック。何より、航続距離とパフォーマンスです。折角購入するのなら、みんながビックリするくらいの性能を手に入れたい!誰しもが、思うはずです。
しかし、性能は期待と違って、殊更ビックリするようなものとはならないでしょう。トヨタは、EU勢のような「スゲェだけのBEV」ではなく、CO2排出量削減に実際的に効果のあるBEVを作ろうとしているのです。
敢えて航続距離競争から距離を置き、最大航続距離よりも「バッテリの経年劣化」に開発の主眼を置いています。いたずらにバッテリ搭載量を増やせば、重量が嵩むだけでなく、コストを急騰させてしまうからです。それよりも、ライフサイクルを通じて、実用に耐え得る航続距離を維持することが大切だと考えているのです。
そのため、バッテリの劣化を早めるような急速充放電は敢えて避ける設計を採用しているはずです。また、コストを意識して、必要にして充分なスペックと、充分実用に耐え得る航続距離を実現するだけの、必要最低限のバッテリを搭載しているはずです。BEVとて、普及してこそ意味があるのです。