SOAがプレスリリースを公開。次期WRX STIは存在せず! [2022年03月24日更新]
ニュース ピックアップ [ WRX STI ]
レヴォーグ/レイバック、WRX S4が年次改良。...
2024年12月21日 スバル
2023年初夏、注目の世界三大レースとニュル24...
2023年05月26日 スバル
レヴォーグ/S4が年次改良で、C型に進化。...
2023年01月08日 スバル
フォレスターがE型に進化、STI Sportが待...
2022年07月03日 スバル
スバルは、ニュルブルクリンクに何を求めたのか。...
2022年06月07日 スバル
SOAがプレスリリースを公開。次期WRX STI...
2022年03月24日 スバル
2代目WRX S4、フルモデルチェンジの詳細を徹...
2022年02月23日 スバル
電動化で、OK?エネルギーを浪費するモータースポ...
2022年01月14日 スバル
SOAが公式発表。次期WRX STIは存在せず!繰り返す!次期WRX STIは存在せず!!
2022年3月11日、スバル・オブ・アメリカ(以下、SOA)は公式リリースを発表しました。その情報は、スバルファンを大いに悲しませるものでした。
As the automotive marketplace continues to move towards electrification, Subaru is focused on how our future sports and performance cars should evolve to meet the needs of the changing marketplace and the regulations and requirements for greenhouse gasses (GHG), zero emissions vehicles (ZEV), and Corporate Average Fuel Economy (CAFÉ).
As part of that effort, Subaru Corporation is exploring opportunities for the next generation Subaru WRX STI, including electrification. In the meantime, a next generation internal combustion engine WRX STI will not be produced based upon the new WRX platform.
The Subaru WRX STI and the STI brand represent the zenith of Subaru’s performance vehicles exemplifying Subaru’s unique DNA and rally heritage. As we look to the future, we also look forward to incorporating the essence of STI into our next generation of vehicles.
訳:
「自動車市場が電動化に向かう中、スバルは変化する市場のニーズや温室効果ガス(GHG)、ゼロエミッション車(ZEV)、企業平均燃費(CAFÉ)などの規制・要件を満たすために、将来のスポーツカーやパフォーマンスカーがどう進化していくべきかに着目しています。
その一環として、スバル株式会社は、電動化を含む次世代スバルWRX STIの可能性を探っています。 一方、新型WRXプラットフォームをベースとした次世代内燃機関搭載のWRX STIは生産されない予定です。
スバルWRX STIおよびSTIブランドは、スバル独自のDNAとラリーの伝統を受け継ぐスバルのパフォーマンスカーの頂点に位置する車です。 今後、STIのエッセンスを取り入れた次世代モデルの開発を進めていきます。」
次期WRX STIが存在できない理由。それは、環境規制対応に対する余力。
先ごろ、漸く店頭に試乗車が到着したVB型WRX。特異なスタイリングと、SGPによる高いポテンシャルは、STIへの期待を十分高めるものでした。ところが、このVB型には、STI仕様が存在しない!というのです。これは驚天動地、大変残念なニュースです。
その理由として、SOAは環境対応を挙げています。現状の企業平均燃費値(CAFE)を勘案する限り、これを更に悪化させるパフォーマンスモデルを追加する現状にはない、ということでしょう。スバルを数年来悩ませてきた、このCAFE規制。これは、過去1年間の各OEMの販売車両すべてのWLTC燃費値を平均し、これが燃費規制値を下回る場合に、ペナルティを課すというもの。OEMにとって、この規制に引っ掛かるのは、間違いなく恥。企業イメージを酷く悪化させるのは、間違いありません。
ここで問題となるのは、10車種なら10車種の平均を取るのではなく、各車種の燃費値に販売台数を掛け算し、これを企業毎に集計して平均値を取ること。燃費の悪いモデルが自然的に排除される仕組みなのです。ただ、CAFE対応ならBEVのソルテラがあります。しかし、販売台数が限定されるソルテラでは、実際的な効果は殆どありません。高燃費モデルを大量に販売することでしか、状況の改善はできない仕組みなのです。
結局のところ、CAFE規制の問題が解決されない限り、例えスバルがWRX STIを開発しようとも、販売することはできない、ということになります。プレスリリースにある通り、電動化を図らない限り、次世代WRX STIの実現は不可能ということのようです。
CAFE規制に悩む最大の原因は、コンパクトカーをラインナップしないこと。
そもそも、スバルがCAFE規制に悩むのは、過去に小型車・軽自動車をリストラしてしまったのが理由です。もしも、25km/Lを超えるコンパクトカーの自社生産車があって、これがコンスタントに販売されていれば、CAFE規制に悩む必要はありません。現実に、スズキやダイハツはCAFE規制に対し、大きなアクションを取る必要はないのです。
1.2L級のエンジンに、スバルらしい低重心・左右完全バランスのパッケージング。それは、素晴らしくファンの胸高鳴らせるコンパクトカーとなるでしょう。これをベースにすれば、WRCへの道も拓けます。例えば、スイフトスポーツの燃費は16.2km/L(JC08モード)ですから、インプレッサの1.6i-Sと同等。このサイズであれば、CAFE規制への影響も最小限に抑えられます。
しかし、ここでもう一つ問題があります。それは、スバルのエンジンラインナップが水平対向のみである、ということ。このサイズで標準的な3気筒を実現できないのです。加えて、現有のプラットフォームもSGPのみで、インプレッサがミニマム。もし、コンパクトカーを作るとなれば、プラットフォームからエンジンまで全てを新規で起こさねばなりません。これでは、全く非現実的です。
ならば、トヨタから供給を受けて・・・。しかし、ジャスティやステラの販売台数を見ても分かる通り、OEMモデルには限界があります。OEMモデルではお茶を濁すことはできても、苦境を打開するのは難しいでしょう。
次期WRX STIを阻む、もっと現実的な問題が存在する。
次世代WRX STIを断念した理由は、他にも存在します。それはもっと現実的なものです。
この拙稿でも繰り返しご紹介している通り、パワートレインの問題です。スバルは、WRX STIのパワートレインをGC8以来、ずっと使い続けてきました。少々古さは否めないものの、その完成度は高く、十分期待に越えるポテンシャルは有しています。しかし、このパワートレインは、米国向けS209の447Nmが最大。これ以上はトルク容量上、耐えられないのです。
今、2.0L級パフォーマンスモデルは350ps級が当たり前。これに匹敵、凌駕するパフォーマンスを実現するには、パワートレインを新規開発せねばなりません。それならば外注で、、、しかし、スバルの水平対向縦置き+AWDというパッケージングは、世界唯一無二のもの。自社開発以外ありえないのです。加えて、時代は電動化を目前に控えています。今、内燃機関を前提としたパワートレインを新規開発したとして、その寿命はものの数年。。。現実的ではありません。
そして、もう一つがADASです。スバルのアイサイトはADASのパイオニアとして、自動車業界をリードしてきました。ただ、このアイサイトはMTには一切対応していません。ところが、日本国内では2021年11月から新規販売車両へのADAS搭載を義務化しています。もし、WRX STIをMTで発売するのなら、MT用のADASを新規開発せねばならないのです。
勿論、ADASは外注でも実現可能です。しかし、スバルには安全への強いこだわりがあります。MT用のADASが、既存のアイサイトを下回るものだとすれば、それはスバル自身が決して満足しないでしょう。それならば、R35型GT-Rのように2ペダル化して、アイサイトを搭載するのが最善です。しかし、この場合もトランスミッションの新規自社開発が前提となります。。。八方塞がりです。
電動化で実現する次世代WRX STIの姿とは。。。?
しかし、諦めてはいけません。SOAは「STIのエッセンスを取り入れた次世代モデルの開発」を約束しています。
スバルは、既にTHSをベースとしたHVユニットの投入を予告しています。このHVユニットは、現在米加州のZEV規制対応向けに販売されている、CROSSTREK HYBRIDというPHVに既に先行投入されており、これの進化版が各モデルに展開される予定です。ただ、このHVユニットをベースにハイパフォーマンスモデルを作るのは、恐らく不可能でしょう。トヨタ側がそれを前提にTHSを開発していないからです。
次に考えられるのが、「STI E-RA CONCEPT」をヒントとするモデル。E-RAは技術的プレゼンスを目的とした、ワンオフのプロトタイプモデル。これをこのまま市販化することは、絶対にあり得ません。しかし、そのエッセンスを受け継いだ市販モデルの可能性は十分考えられるでしょう。
ソルテラ/bZ4Xがベースとするe-SGP(e-TNGA)は、ミドルサイズSUVタイプに留まらず、スポーツカーから大型SUVまで幅広いラインナップを想定して開発されています。実際に、トヨタはe-TNGAをベースにしたスポーツカーの登場を予告していますから、スバルもこれをベースとすることは可能でしょう。つまり、次世代WRX STIはHVより、BEVで登場する可能性の方が高いといえます。
E-RAは、ニュルブルクリンクでのタイムアタックを予定しています。スバルはE-RAの開発を通じて、最大トラクションを実現する全輪駆動制御についての技術的知見を習得する予定です。この技術をフィードバックしたハイパフォーマンスBEV、それが次世代WRX STIの自然な姿でしょう。
異常なほど急騰する中古車市場。但し、ご用心あれ。
このプレスリリースを受けて心配されるのが、VABの中古車市場です。程度の良い個体は、既に新車価格を遥かに上回るプライスタグが付けられています。VABバブルと言っても良い、異常な状況です。これを受けて、GRB/GVBの価格も急騰しています。
ただ、ご注意頂きたいのは、WRX STIがハイパフォーマンスモデルであるということ。その使い方はオーナーによって様々です。程度の悪い個体だと、その後の維持に困ることになります。オイルメンテナンス、クラッチの残量、ミッションの状態、サーキット走行の頻度等々、よくよく勘案することをオススメします。VABの場合、A型だと2014年。程度が良いと見えても、8年選手です。その点には、十分留意する必要があるでしょう。
VABは確かに素晴らしいクルマです。ただ、3月下旬の段階で、10万キロ超えの最安個体でも259万円。やはり、ちょっと異常です。ちなみに、2015年8万キロの個体が310万円ほど。この予算があれば、BRZが新車で買えるのに。。。。WRX STI狂想曲は、一体いつまで続くのでしょうか。次世代モデルが存在しないのなら、より一層相場は上がるのでしょう。少なくとも、今後も値下がりする要素は一切ないように見えます。