レイバック登場。レヴォーグのSUV版。 [2023年10月11日更新]
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VN型レヴォーグ前期型に、ビッグチャンス到来。
レヴォーグ+アウトバック=レイバック。実にシンプルな方程式から生み出された、スバル久方ぶりの国内専用モデル。それが、新型SUVレイバックです。先行発表及びTVCF放映開始から、市場の反応は比較的好評。まずは、スバルの狙いは成功したと言えるでしょう。
レイバック、その名称の由来は「laid back[くつろいだ、ゆったりとした]」から。インプレッサ→クロストレック同様の、レヴォーグのクロスオーバー仕様です。ただ、スバルが言うような「SUV」かと言えば、そうでもなし。やはりクロスオーバーとの表現が適切。ボディはそのままレヴォーグですし、ガチガチのオフロード走行は想定外のため、「X-MODE」も用意されていません。だからと言って、商魂丸出しのニッチモデルでもありません。やはり、そこはスバルですから、しっかりとスバルブランドに落とし込んだ上で、丁寧にキャラクター設定が成されています。
アーバン志向を明確にしている、レイバック。その狙いは、都市型SUV。つまりは、ハリアー。巷はSUVだらけ、でも走りがモッサリとしてるのは、イヤ。そんな消費者がスバルに求めるのは、シャッキリ走るSUV。地上高の嵩上げは最低限として、重心の低さを維持。ハンドリングをギリギリ愉しめるキャラ設定を目指しているのです。
竹と梅の中間、Smart Editonに備わる5つの特別装備。
スバルが誇る、世界最高峰の安全性能。0次安全と称する視界確保から、アイサイトXや歩行者エアバッグに至る先進装備まで。単なる法規制対応ではなく、ちゃんと使える安全装備を。21世紀のスバルは、誰よりも安全にこだわってきました。2030年死亡交通事故ゼロを目指すスバルですから、レイバックにもその思想はたっぷり注ぎ込まれています。
視界無くして安全なしを号するスバルだけに、レイバックの視界の広さはは特筆モノ。クーペSUVだと、倒れ込んだリヤハッチで視界は絶望的。これに対し、レイバックは斜め後方までしっかり見えます。運転に慣れていない方は、見えないことに殊更恐怖を抱くもの。夫婦で運転する方には、見逃せないポイントでしょう。
依然として、世界最高峰の機能と能力を誇るアイサイト。口角泡を飛ばす社風でないがために、その進化はよく知られてないかも知れません。しかし、アイサイトはここ5年だけでも、着実に進化を遂げています。レイバックが搭載するアイサイトは、ver4+広角単眼カメラ+レーダ×4個という最新・最高仕様。ver4.5とも言えるこの仕様は、歩行者・自転車に対する対応シチュエーションを大幅に拡大。交差点でのリスク低減を図っています。
さらにさらに、レイバックはアイサイトXを全車標準装備。アイサイトXは、GNSS衛星からの位置情報と3D高精度マップを組み合わせることで、50km/h以下でのハンズオフを含め、高速道路に於ける運転支援機能を大幅に拡張した最新のシステム。レイバックでは、追加費用無しで世界最高峰の機能を体験できます。
アイサイトの白眉は、常に自然に安心して活用できること。特に、レーンキープアシストは秀逸です。それは、各モデルごとに専用のチューニングを施しているから。車両特性に合わせて、わざわざ最適な車両制御を用意しているのです。アイサイトにも、スバルならではのこだわりが詰まっています。
レヴォーグは「STI Sport」一択、ではない??
レイバックは、レヴォーグのGT-Hがベース。レイバック化に伴う、専用装備は以下の通りです。
・225/55R18(オールシーズンタイヤ)&18インチアルミホイール(スーパーブラックハイラスター塗装)
・縦型LEDフロントフォグランプ
・電動格納式リモコンカラードドアミラー(サイドターンランプ&ターンインジケータ付)、リバース連動ドアミラー/ドアミラーメモリー&オート格納機能/ドアミラーフットランプ
・本革巻ステアリングホイール(カッパーステッチ、高触感革)
・本革巻シフトレバー(ピアノブラック調+シルバー加飾)
・シフトブーツ(カッパーステッチ)
・インパネミッドトリム[表皮巻(カッパーステッチ)]
・インパネ加飾パネル(ダークメタリック)
・センタートレイ加飾[ダークメタリック&表皮巻(カッパーステッチ)]
・フロアコンソールリッド(カッパーステッチ、ソフトパッドタイプ)
・トリコット/ファブリックシート(カッパーステッチ)
・サテンメッキ加飾付フロントグリル
・サイドクラッディング
・ハーマンカードンサウンドシステム[専用10スピーカ(フロント6+リヤ4)]
レイバックはLimitedのみと、シンプルな1グレード構成。メーカーオプションは、サンルーフ、本革シート、スマートリヤビューミラーから任意に選択可能です。
レヴォーグは「STI Sport」一択、ではない??
レヴォーグをベースとしつつも、レイバックの印象はすっかり別物。スバルらしさが濃厚なレヴォーグに対し、レイバックは薄味の仕立て。スバルSUVが得意とするラギッド感は、ほぼゼロ。フェンダーモールはシンプルで、ルーフレールの設定もありません。それもこれも、アーバン志向が理由。ゴテゴテのオフロード感ではなく、アッサリ味の大人の雰囲気で、スバルSUVには無かった新鮮感覚を演出しています。
フロントエンドを構成するのは、左右への広がりと、穏やかなラウンド感。これにより、エッジが効いた印象のレヴォーグから、ガラリとイメージを変えています。その軸となるのは、ヘキサゴングリルを貫き、左右ヘッドランプを結ぶウイング。SUVの常套である縦基調ではなく、敢えて横基調とすることで、フロントエンドを薄く見せると共に、アーバン感覚を演出しているのです。
リヤエンドは、最小限の変更のみ。コンビランプ等に違いはなく、相違点はシンプルになったバンパーフェースのみ。サイドに周っても、印象は同じ。フェンダーアーチは、ごく最小限。サイドガーニッシュも、シンプルで自己主張のないデザイン。
細部の造形の主張が強いレヴォーグに対し、敢えて印象を薄めることで対比的に見せているのでしょう。その狙いは成功していて、ホワッと見た印象にレヴォーグが漂うことはありません。スバルは、両者の差別化に成功しているように思われます。その一方、アーバン志向の傾向が強過ぎたのか、たまに脳内をハリアーが駆け抜けていったのは、否めない事実です。スバルらしさとは、何なのか。SUVという新たな領域にのめり込むことによって、背骨を失っていては本末転倒でしょう。
驚きは、パールホワイトが廃止されたこと。これまで、20年近くに渡ってほぼ全車種に設定されてきたパールホワイトが廃止されたのです。これに代わって、新たにセラミックホワイトが役を引き継ぐことになります。
レヴォーグは「STI Sport」一択、ではない??
インテリアは、カラーが一新。アッシュ表皮+カッパーステッチを大胆に取り入れることで、デザインは全てそのままながら、そのイメージを一新しています。特に、2トーンとなったシートは印象的。レヴォーグに比べて、全体の印象が明るくなり、軽快な雰囲気を醸し出しています。また、そのカラーが絶妙で、目立ちすぎず、安っぽくもなく、良く大人の雰囲気を演出しています。
ただ、シートで変更されたのは、カラーだけではありません。車高の嵩上げに伴う乗降性確保のため、新たにサイドサポートを僅かに柔らかくした仕立てとしています。それでも、同等のSUVに比較すれば、高いボディホールディング性能をキープ。これにより、クルマと一体感の強い、スバルらしい動的質感を確保しています。
今回何より嬉しいのは、オーディオにハーマンカードンサウンドシステムが標準設定されたこと。試乗会で拝聴した処、オリジナルとは明らかに別格の仕上がりに、ただ驚くばかり。一見、無駄な贅沢に思えるかも知れませんが、実質10万円での装備と聞けば、むしろお得だと言えるでしょう。
センターに鎮座するインフォテイメントシステムも、こちらも着実な進化を遂げています。オートビークルホールドは、トップ画面にアイコンで表示されるようになり、その隣にはアイドリングストップキャンセルが並びます。使用頻度の高い項目をトップに配することで、操作性の改善を図っているのです。
また、スバルが新たな安全領域「つながる安全」として充実を図っている、テレマティクスサービス「STARLINK」もさらに進化。様々な内容が新たに加わっています。ただ、その分無料提供期間が短くなっているので、注意が必要です。テレマティクスサービスは、ユーザの携帯電話や車両電源系に依存しない独立したシステムとなっているため、全電源を喪失するような緊急事態でも動作可能。何時如何なる時も、命を守るためにサービスの活用が可能です。
レヴォーグは「STI Sport」一択、ではない??
レイバックの印象は、走ってみても変わりません。鮮烈な印象はなく、極めてコンベンショナル。それも、すごく良くできたコンベンショナル。確かに、強く印象付くような感触・感覚はありません。走りの全てが、ごくスムーズに、手に取るように分かりやすく、穏やかに展開していきます。
レヴォーグと比較すれば、やはりモーションは大きめ。ピッチは穏やかながらしっかり分かるし、ロールもゆっくりながら確実に発生します。だからと言って、決して不快ではありません。重心の高いSUVにありがちな、際限のないロール感や恐怖感は微塵もないのです。だから、ごくフツー。しかも、ハイレベルな領域で。
そもそも、VN型レヴォーグの企画段階には、レイバックの計画はまだ存在していませんでした。つまり、最低地上高145mmのレヴォーグを前提に設計されたボディに、最低地上高200mmの派生車種が後々追加されたということです。その点では、クロストレックを前提に設計されたインプレッサより、難易度の高い作業になったのは、間違いありません。
レイバック化に伴う変更は、すべて車高の変更に集約されます。最低地上高を55mm嵩上げするため、サブフレーム取付点にスペーサを追加。これに伴って、スプリング、ダンパー、アーム、スタビの他、ステアリングのコラムシャフトが変更されています。
だからと言って、伝説的なエスティマ→ルシーダ/エミーナやワゴンRプラスのような、「やっつけ仕事感」は微塵もなく、すべての走りは破綻なくまとめられており、限界付近に於いてもその印象は変わりません。敢えてオーバースピードで突っ込み、強引に舵角を増やしていっても、すべては盤石。恐怖心を煽るようなロールはなく、僅かなアンダーが顔を出すだけ。そうした状況でも、ヨーが突如減少するようなことはありません。穏やかにトルクベクタリングが作動し、ごく自然にヨーを稼いでくれるからです。
一般的な速度域に於いては、レイバックが馬脚を現すようなシーンは絶対にあり得ないでしょう。それでも不足と仰る方は、レヴォーグを選択すべきなのかも知れません。
レヴォーグは「STI Sport」一択、ではない??
さてさて、レイバックはレヴォーグより「買い」なのでしょうか。
スバルが如何に真剣であろうとも、モデルライフ途中で起爆剤代わりに投入した「マーケティング先行の間に合わせモデル」の感は、やはり否めません。だからと言って、スバルがおざなりに市場投入した訳ではないのは、試乗した感触からも間違いありません。スバルのエンジニアは、未だにこだわりを失ってはいないようです。
ただ、レヴォーグと比べた時に、レイバックがこれを凌駕する可能性だけは無いように思えます。純粋に車両の完成度だけを考えれば、やはりレヴォーグ一択でしょう。やはり、スバルを長らく愛してきた方にはレヴォーグをオススメしたいのが、正直なところ。
じゃぁ、レイバックは不要だったのでしょうか?いや、そうではありません。
レイバック誕生の背景には、間違いなくレヴォーグの不振があります。ライバルが次々に消え、ツーリングワゴン市場が縮小する中、唯一敢然とそこに立ち向かうレヴォーグですが、販売の絶対量は決して多くありません。このまま行けば、BEV販売比率50%の波に押し流され、モデルの存続は不可能となるでしょう。しかし、レヴォーグの喪失は、WRXの終焉を意味します。スバルがスバルであるために、レガシィ以来の伝統を維持するために、レイバックは重い使命を以て誕生したのです。
もちろん、レイバックにも良さはあります。それは、乗降性です。僅か55mmですが、その差は歴然。膝が痛い、乗り降りが大変など、乗降に難を抱える同乗者がいらっしゃるのなら、レイバックは選択肢として考えておくべきでしょう。