WRC復帰が遠のく?2017年車両規定改正は廃案に。 [2014年12月13日更新]

WRC モータースポーツ
 
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スバルのモータースポーツの今後
 
次なるフィールドはどこ?

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

WRCの撤退から既に7年。

WRC撤退から既に7年。それ以来、ニュルブルクリンク24時間を除いて国際的な選手権には一切顔を出していないスバル。スバリストの方々は、物足りない思いを抱いておられることでしょう。以前ここに記したように、WRC無くして現在のスバルはありません。ですから、スバルの目指す方向がプレミアムスポーツブランドであるならば、モータースポーツフィールドでの活躍はブランドイメージを維持する上でも不可欠となるでしょう。

では、スバルは次なるモータースポーツフィールドをどこに求めるのでしょうか。

 

第一候補はやはり、WRC。

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image by yoogoo

WRブルーのマシンが鮮やかに駆け抜け、巨大メーカーのラリーカーを次々に打ち破る姿。それこそが近代スバルの原点です。市販車のイメージを強く残すWRCは欧州でのマーケティング効果が特に高く、名門の復活は多くのスバリストはもちろん、世界中のモータースポーツフリークの望むところでしょう。

一方で、現在のWRCでは人気の低下が懸念されています。Gr.B時代やGr.A時代と比較すると、迫力の低下が否めない現代のWRC。そこで、2017年に向けてレギュレーションの抜本的改正を検討しており、F1やWECと同様に燃料流量による出力制限を導入する見込みです。スバルは新レギュレーションの決定プロセスに注目しており、内容次第で復活参戦を決断することになるでしょう。

WRカーのベース車は「WRX STI」より、よりコンパクトな「BRZ」の方が可能性が高いでしょう。問題は、トヨタに「86」でのWRC参戦が噂があること。もし、「86 WRC」が先に誕生するのであれば、スバルが「BRZ WRC」で活動する意味はありません。WRC再参戦は、資本提携先でもあるトヨタの動向次第ということでしょうか。

2014年12月13日追記:
2017年へ向けて検討されていた、抜本的な技術規則変更をFIAが断念したことが明らかになりました。これにより、燃料流量制限によるエンジン選択の自由化などは全て見送られ、2017年以降しばらくは現在のWRカーの延長線上のマシンで争われることになります。つまり、WRCのハイブリッド化は当面先送りとなり、技術的にシンプルなBセグメント(スバルには存在しない)のラリーカーの時代が続くことになります。

今シーズン、WECで圧倒的な強さを見せたトヨタのハイブリッドテクノロジー。トヨタがハイブリッドカーを擁してWRCに参戦するとなれば、VWやフォードが危機感を抱くのも無理もないことです。さて、トヨタはどのような決断を下すのか。スバルに参戦の可能性はあるのか。かつての華やかさを失いつつある現在のWRCにとって、今回の決定がどのような影響を及ぼすのか注目されます。

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photo by TMG

2014年12月18日追記を2015年1月30日修正加筆:
トヨタが2017年シーズンからのWRCへの復帰を公式発表。モリゾーこと豊田章男社長自ら、並々ならぬ情熱を以ってこのプロジェクトを推し進めているようで、すでに「Yaris WRC」を自ら駆ってプロモーションムービーも撮影済み。

WRCの活動拠点はTMGへ置き、WECと平行してプロジェクトを推進する模様。かつて、F1プロジェクトのために拡張されたTMGの広大な施設であれば、そのキャパシティも充分なのでしょうか。人員は大幅に増強することが同時に発表されています。

今回公開されたプロトタイプは「Yaris WRC」であり、残念ながらスバルファン期待の「86」ではありませんでした。「Yaris」は日本では「VITZ」の名で知られ、世界65カ国で販売されるトヨタの基幹車種であるために選ばれたとのこと。

豊田章男社長は、自らがWRCの現場を訪れた際に「トヨタはいつカムバックするんだ?」と何度も聞かれ、その度に深い感謝を覚えたと語っています。モータースポーツを通じて世界の人々を笑顔にしたい。このメッセージからは、WRCを含むモータースポーツ全般に対する豊田章男社長の熱い情熱と深い敬意がビシビシと伝わってきます。

このプレゼンテーションを聞きながら、スバルからこんなメッセージが聞けたならなァ・・と考えた次第です。

2015年2月5日追記

スバルUSAは、米国の国内ラリー選手権である「Rally America」を通して、ラリーに対して積極的な関与を継続しているようです。マーク・ヒギンスがドライブするこの「WRX STI」は、この選手権独自のレギュレーションに準拠しているようで、今シーズンはこのマシンで戦う模様。

世界中のあらゆる道路環境下で最高のパフォーマンスを引き出す「ラリー」というフィールドは、人とクルマを鍛えあげるには最も適したフィールドであり、人々に「感動」という鮮烈な記憶を刻みこむこともできる素晴らしいフィールドでもあります。スバルは、いつ輝かしいフィールドに現れるのでしょうか。

 

新たな潮流、ラリークロス。

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photo by FHI

「レッドブル・グローバル・ラリークロス」は、北米で盛り上がりを見せている「X Games」に端を発するラリークロス選手権です。ド派手なスタイリングとカラーリング、観客の眼前で全てのコンペティションが完結するアメリカンスタイルのこのスポーツは、今や全米ネットワークのNBCによって全戦が放送されており、その注目度は着実に上昇中。

スバルUSAは、2014年シーズンの後半戦からマシンを新型「WRX STI」にスイッチさせる予定です。既に、ヨーロッパではFIAが主導するラリークロス選手権がスタートしており、今後のシリーズの興隆が気になります。

ただ、ラリークロスはメーカーがファクトリー活動をすべきフィールドではなく、現地法人による参戦サポートが選択されるでしょう。

 

ルマンのグランドスタンドに、ボクサーサウンドが響く日。

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WEC(世界耐久選手権)はどうでしょうか。一部では、期待を込めてトップカテゴリーである「LMP1」の可能性がささやかれているようです。

LMP1は、王者アウディにトヨタとポルシェが挑む構図。パワーユニットと駆動方式の選択が自由で、燃費のみでコントロールされるフルハイブリッドのレギュレーションは、メーカーの強い関心を呼んでおり、来シーズンは新たにニッサンが加わる予定です。この規定であれば、スバルはボクサーエンジン+AWDハイブリッドというパワーソースを選択可能であり、これはスバルにとって大きな魅力です。

ルマン制覇を最終目的とするLMP1の場合、F1レベルの高度な技術開発能力と設備、数百億円規模の年間予算が必要になります。2年以上の歳月を費やして周到に準備を重ねたあのポルシェでさえ容易に勝てない現状を考えれば、F1レベルの技術を有する強力なレーシングカーコンストラクターとのジョイントが必須となるでしょう。

ルマン24時間総合優勝によるマーケティング効果は、強く長く持続するのが特徴です。ベントレー、アルファロメオ、ブガッティ、メルセデス、ジャガー、フェラーリ、フォード、ポルシェ、そしてアウディ。伝説に彩られたこのリストに名を連ねるのは、日本では唯一マツダのみ。スポーツプロトタイプカテゴリーでは、常にメーカーが主役。それが、このカテゴリーの一番の魅力です。

市販車ベースとするGTカテゴリーへの参戦は可能性はどうでしょうか。残念なことにスバルのラインナップにはベース車両が存在しませんので、GTEやGT3のプランは実現する可能性は低いでしょう。米国市場ではプレミアムブランドの2ドアクーペの人気は高く、スバルUSAの要望に沿って「レガシィクーペ」のようなモデルが市場投入される可能性がゼロではありません。逆に、そうしたクーペが登場すれば、俄然GTカテゴリーへの参戦がクローズアップされることになるでしょう。

2014年1月23日追記を2015年2月5日修正:

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ニッサンが開発していたLMP1、その駆動方式は何とFF!果たして、ニッサンはこのマシンで成功できるのでしょうか。

今、話題の中心は「幅の狭いリヤタイヤ」です。レーシングカーにおいて最も重要とされるタイヤのグリップは、接地面積と垂直荷重で決まります。いくら効率が高い駆動システムと空力性能有していても、それを路面に伝える能力が限られていては意味がないのですが・・・。

実はこのマシン。エンジン以外はほぼアメリカ製で、歴戦の日本人エンジニア達はほとんど関わっていないようです。デルタウィングという革新的なマシンで、過去2年チャレンジしたプロジェクトの流れに沿ったマシンなのでしょうが・・。メーカーは挑戦ではなく、勝つことにのみ意義があるのです。ニッサンの勝算、如何ばかりでしょうか。

 

最も身近なカテゴリー、GT500。そして、DTM。

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photo by FHI

東京R&Dとの共同でSuperGTのGT300クラスに参戦中のスバルですが、GT500へのステップアップの可能性はあるのでしょうか。SuperGTは東アジア各国でレースを開催するなど、日本のレースカテゴリーとしては奇跡的に成功を持続させています。このGT500クラスでは、20年の長きに渡って3メーカーが厚く激しい戦いを繰り広げてきました。

そして今、GT500クラスはドイツのDTMとのレギュレーションのすり合わせが進行中。相互の交流戦は近年中に実施される方向で検討が進められており、アメリカへの進出も画策中。2017年頃には完全にレギュレーションが統合される予定です。メルセデス、アウディ、BMW、トヨタ、ニッサン、ホンダが合流すれば、一気に6メイクスが顔を合わせることとなり、華やかなシリーズの成立が期待されます。ベース車両が「BRZ」しかないスバルですが、かつてのアウディ「TT」のように特認でサイズアップが認められれば、参戦は可能かもしれません。

ただ、エンジンが問題となる可能性があります。今後、規定はWRCやWTCCなどと共通の直列4気筒直噴ターボに統合される見込みですので、スバルのボクサーエンジンは許可されない可能性が高いのです。その点では、可能性は低いかもしれません。

 

フォーミュラの可能性は望み薄。

1980年代にF1プログラムに失敗したスバル。今後、フォーミュラカテゴリーへの参戦はあるのでしょうか。

スバルは、モータースポーツフィールドを常に技術的優位性の証明のために使ってきました。そのため、市販車の技術から大きく乖離しているF1やインディカーシリーズといったフォーミュラカテゴリーへの参戦は検討される可能性は低いと思われます。特に、エンジン型式が細かく規定されている関係上、ボクサーエンジンの採用が不可能であることは、決定的な要因となるでしょう。

今年新たにスタートしたEVフォーミュラによる世界選手権「Formula-E」のほうが、むしろ可能性が高いかもしれません。今シーズンは全車指定のシャシーとパワーユニットを使用しているFormula-Eですが、2015-2016年シーズンからは一気に自由化が進行。EVフォーミュラにおける技術的なコンペティションがいよいよスタートします。アウディ、ルノーは既に参戦を開始しており、今後の動向次第ではF1を凌ぐシリーズに急成長する可能性があります。その魅力は、環境負荷が小さいがために大都市の一般公道での開催が可能であること、厳しいコンペティションによる急速な技術レベルの向上が期待できることにあります。この分野における成功は、スバルの全く新しい時代への適合性を証明することになるでしょう。

この度、スバル・オーストラリアは競技ベース車両の販売を独自に開始しました。少数を限定発売することを発表したこの車両は、FIAが新たに策定した「NR4」レギュレーションに準拠しており、オセアニアの伝説のラリーストである故ポッサム・ボーンのファクトリーと共同開発されたものです。

ポッサム・ボーンは、スバルWRC黄金期にサテライトチームのドライバーとして世界各国で活躍した優れたラリーストでした。1993年にはコ・ドライバーのロジャー・フリースを事故で失うも、APRC(アジアパシフィックラリー選手権)のドライバーズチャンピオンを獲得。しかし、それから10年後、誰からも敬愛された彼もまた、事故で天に召されてしまいました。今日、STIのGlobalサイトの競技者向けページには、世界各国のインポータの名がリンクされています。ポッサムボーンモータスポーツもそのひとつであり、オセアニアにおけるラリーカーの活動をサポートしています。スバルの草の根モータスポーツ活動を支える、こうしたネットワークは今でも各国のラリードライバーの夢をサポートしているのです。

 

結論:スバルの歩む道。

スバルにとって、ボクサーエンジン+シンメトリカルAWDはブランドアイデンティティの根幹です。モータースポーツに参戦する意義は、このレイアウトの技術的優位性を示すことにあります。それゆえ、ボクサーエンジン+シンメトリカルAWDが許可されるカテゴリーのみが選択肢になり得ます。これを根拠とすれば、結論はWRCとLMP1の二者択一となるでしょう。

VWグループは、アウディとポルシェをWEC LMP1に、VWとシュコダをWRCに参戦させています。つまり、プレミアム志向が強ければLMP1を選択するでしょうし、そうでないのならスバルはWRCを選択するでしょう。

いずれにしても、過去の栄光はいつまでも続くものではありません。錆び付いた栄光にしがみつくよりも、新たなるフィールドで新たなる価値を創造していくスバルを、これからも期待したいと思います。

 

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