日本車の技術はなぜ停滞しているのか?その原因は何か? [2020年05月17日更新]
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今や、技術革新のキーマンは自動車メーカーではなく、メガサプライヤー。
日本では、系列崩壊が進んでいます。デンソー、アイシンでもトヨタ自動車との取引は、全体の半分以下。その多くを系列外で稼いでいるのです。自動車メーカーが系列を解体するのは、部品メーカーの自立を促すことで競争原理に基づく価格低減と能力向上を期待しつつ、互いの経営リスクを減じるためです。
もし、自動車メーカーがすべてを自力開発を賄おうとすれば、全方位での開発投資を強いられます。それには、優勝なエンジニアを大量に雇用せねばなりませんし、莫大な開発投資が必要です。しかも、その投資回収を自社生産分だけに頼らねばなりません。だったら、部品メーカーから「買ってきた方が安い」となるのは自明です。
自動車技術は年々複雑化しており、部品単位ではなく、コンポーネント一式で供給する必要があります。例えば、点火プラグ単体では今はダメで、シリンダヘッド廻りの燃焼解析を含めて、燃焼技術を丸ごと「販売」せねばなりません。自動車メーカーの機体に応えるべく、部品メーカーは全方位化を目指して、会社規模をどんどん拡大しています。技術領域をますます拡張し、はるかに人員・設備共に充実させねばなりません。今や、ボッシュ、デンソー、コンチネンタル、フォルシア、ZF、アイシン等々、メガサプライヤーは中堅自動車メーカーを超える規模にまで成長しています。彼らは、選択と集中を図りつつ、自らの得意領域の先進技術開発に積極投資を行っているのです。
かくいう先進的な欧州車技術の殆どは、自動車メーカーのものではなく、メガサプライヤーのもの。今や、自動車メーカーはメガサプライヤーの技術を「採用」するだけが仕事。つまり、欧州メーカーの技術革新のキーマンは、自動車メーカーではなく、メガサプライヤーなのです。こうした状況は、系列を解体した日本でも顕著になりつつあります。
人づくりは、ものづくり。鍵となるのは、人を育てる組織体系。
自動車メーカーの若きエンジニアが、遥かな高みを目指して苦学と試行錯誤を重ねていたのは、もう昔のこと。今では、自動車メーカーよりも部品メーカーの方が、遥かに高い専門技術を有しているのです。優秀なメガサプライヤーの技術を組み合わせ、自らのブランド戦略に落とし込んで味付けを行い、商品化する。それが、現代の自動車メーカーの業務です。
欧州では、若いエンジニアはサプライヤーで経験を重んだ後に、転職を重ねて、最後は自動車メーカーへとステップアップしていきます。ですから、彼らはちゃんと設計や開発に関する知識と経験を備えて、自動車メーカーへと辿り着くのです。ところが、日本ではこうした人事制度は、未だ本流ではありあせん。
そのため、日本の自動車メーカーに於ける、若いエンジニアの経験不足は殊に深刻です。彼らは、自ら開発を手掛けることができず、仕事は会議と管理業務だけ。彼らに対する評価基軸は、管理の優秀さであって、未来を見据えた優れた技術開発能力でも、挫けず難関に立ち向かう熱い信念でもありません。だからこそ、転職を選択するエンジニアも少なくないのです。
彼らの目が、技術の先進性よりも、上司の顔色に向くのは、致し方ない事でしょう。だからこそ、彼らは「失敗」忌み嫌うのです。もちろん、失敗を恐れては、技術的進歩はあり得ません。
何度も繰り返すように、人づくりは、ものづくりです。人の進化なくて、自動車の進化はありません。すなわち、日本の自動車技術が停滞したのは、それはつまり日本の自動車エンジニアが停滞したからなのです。日本の自動車産業は、確実に袋小路に陥りつつあります。そして、そこに新型コロナウイルスが更なる追い打ちをかけています。
でも、情熱を持ったエンジニアは溢れるほどいます。彼らを如何に導き、如何に育てるのか。そして、有能な彼らの主張を「面倒だ。」と排除する管理職の再教育。それが、日本の自動車メーカーに求められている喫緊の課題なのでしょう。