2代目WRX S4、フルモデルチェンジの詳細を徹底解説。 [2022年02月23日更新]
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大容量版第二世代リニアトロニック、スバルパフォーマンストランスミッション。
トランスミッションは第二世代リニアトロニックの大容量版、スバルパフォーマンストランスミッション(以下、SPT)を採用しています。WRXがCVT??そう聞いて、残念に思う方も多いでしょう。スバル最大のネガ、とまで言い切る方もいます。しかし、スバルは信念を以てCVTを採用しています。本来、変速ショックは必要悪。ならば、無段階変速が理想であり、機構がシンプルなCVTこそ、理想のトランスミッションである。そう、スバルは考えているのです。
ただ、CVTには弱点があります。それは、高速域で燃費がガタ落ちになること。その理由は、最大変速比と最低変速比の幅、つまりレシオカバレッジにあります。2つのプーリを結ぶベルト(リニアトロニックではチェーン)の最小巻きかけ径に制限があり、余りに小さく巻くと十分に摩擦を確保できず、滑ってしまうのです。
スバルは、SGP導入と同じタイミングでリニアトロニックを第二世代に進化。チェーンの最小巻きかけ径をさらに小径化させることで、VAG型では6.43だったレシオカバレッジを、新型のVBH型では6.901まで大きく拡大。これにより、よりレスポンスの高い加速と、エンジン回転数低下に伴う高速域での燃費向上及び静粛性の改善を実現しています。
一方、SPT独自の進化もあります。それは、コーナリング時のシフト制御。SI-DRIVEが[S]・[S#]モードの場合、高Gコーナリング時を予見して、ブレーキング時に自動でブリッピングを行いつつ、シフトダウン。コーナリング中は低速ギアにホールド。トラクションを確保しつつ、脱出時は高い回転数を維持して最大加速を図ります。
また、高負荷時にステップ変速へ自動移行するのは、先代同様。但し、[S]・[S#]モードでは変速時の制御が進化。アップシフト時は、エンジンのトルクカットを行うことで、よりキレ感のある小気味よい変速を実現。ダウンシフト時は、エンジンのトルク制御と協調、俊敏なブリッピングを行うことで、メリハリの強いキレ味鋭い制御を実現しています。
STI Sport Rにのみ設定される、ドライブモードセレクト。
2代目WRX S4は、基本的にレヴォーグ同様のグレード構成。そのラインナップの頂点に位置するのが、「STI SportR」です。このSTI SportRには、幾つか専用の装備が施されています。
中でも注目を集めているのが、ドライブモードセレクト。「COMFORT」「NORMAL」「SPORT」「SPORT +」「INDIVIDUAL」の5モードが用意されており、パワーユニット、パワステ、ダンパー、AWD、アイサイトACC、エアコンの各制御モードを任意で選ぶことが可能です。INDIVIDUALは、各ユニットの制御モードを自由に組み合わせるモード。例えば、ダンパーをNormalとして快適性を維持しつつ、パワーユニットを「S」にすることで、高速走行を軽快に愉しむこともできます。
各モードでキャラが積極的に変化するため、高速道路・市街地・郊外・ワインディングと、それぞれに最適なモードを探していくのもひとつの楽しみでしょう。また、モードセレクトを使うことで、パワーを求めないシーンでは、より効率の高い走りをすることができます。刺激的なスポーツセダンから、燃費と快適性を考慮したコンフォートセダンまで。キャラ変の幅も、新型WRX S4の愉しみの一つです。
STI SportRでは、モードセレクトを実現する電子制御ダンパーが標準装備されます。これは、レヴォーグで採用されたものを、WRX仕様にアレンジしたもの。左右フロントストラットと、助手席シート下のダンパーCU内に加速度計を設置。タイヤの上下加速度とバネ上の加速度を検出。さらに、ビークルダイナミクスコントロールからの情報を総合し、ソレノイドバルブを高速制御して、最適な減衰力にリアルタイム制御します。
例えば、ブレーキング時にはフロントの減衰力を高めて、ノーズダイブを抑制。コーナリング時は、アウト側の減衰力を高めることで、ロール角を抑制します。また、路面の凹凸を判断した場合は、減衰力を弱めることで揺れを軽減します。そのため、Sportモードを選択したからと言って、ガタガタ不快な振動に見舞われることはありません。
また、新型WRX S4ではモードセレクトの変化幅を拡大。Sportでは、より高い減衰力設定とするこで、より大きなキャラ編を愉しむことが可能です。
パワステのモードセレクトも可能です。Comfortでは操舵力は軽めの設定。煩雑な狭い市街地では有り難いものの、高速域やワインディングではちょっと心細い印象。しかし、Normalでは操舵力がしっとり重みをもち、Sportではグッと重くなって、安心感を与える設定となっています。ただ、こちらの制御もWRX専用設定。全体的に重めの設定としつつ、車速に応じてより操舵力が重くなる制御としています。
盤石の信頼性、ハイパフォーマンスモデル専用のVTD-AWDを搭載。
AWDシステムには、ハイパフォーマンス系AT車に採用されるVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を搭載しています。このVTD-AWDは、フロント:45%、リヤ:55%というトルク配分が基本。リヤ寄りのトルク配分によって、コーナリング時の弱アンダー傾向を押さえ、ドライバーにとって理想的なニュートラルステアを実現します。
新型WRX S4の搭載に際しては、ドライブモードセレクトに対応するため、新たにSportモードを新設。アクセルON時のLSDの作動制限を抑制することで、アンダー特性を低減。よりニュートラルなコーナリング特性を実現します。
実は、スバルのAWDシステムは、この30年大きな変化をしていません。このVTD-AWDは、かのSVXに搭載されたのが始まり。以来、制御を細かくアップデートしつつ、長らく進化を続けてきたものです。
ハイパフォーマンスモデルでは、駆動系にも高い性能が要求されます。近年では電子制御技術が進展したため、タイヤからより高いパフォーマンスを引き出すことも可能です。アクティブヨーコントロールシステムなどは、その好例でしょう。ただ、こうしたシステムは良い面ばかりではありません。
駆動系に要求される性能のうち、最も大切なもの。それは、信頼性です。駆動を失った自動車は、単なる鉄の箱。極寒地では、命に関わることにもなりかねません。しかし、余りに張り切った新基軸は、当然リスクを孕んでいるため、少なからず信頼性を損じます。性能上はベストであっても、マイカーとしてはベストでは無くなってしまいます。
スバルは、AWDシステムにドラスティックな仕様変更をすることなく、地道な改良・改善を積み重ねていくことで、信頼性と耐久性を高く維持しつつ、スバル独自の高い走破性とスタビリティを進化させてきました。それを証明するのが、スバルのヴィンテージカーです。今も矍鑠と走るレガシィやインプレッサWRXは、その耐久性を身を以て証明しています。
スバルのAWDは魔法のようには曲がりませんし、恐ろしいグリップを誇る訳でもありません。しかし、AWDであることを忘れるほど、何のストレスもなく自然に走ります。その一方で、高速道路での強い横風や、圧雪やヘビーウェット路面でも高く安定した走りを実現します。これこそ、スバルの理想とするAWDシステムです。
2030年死亡交通事故ゼロへ。世界最高峰の安全装備を搭載。
新型WRX S4が搭載するアイサイトは、レヴォーグと完全に共通。設定は2パターンで、一つはアイサイトver.4を搭載するタイプ。もう一つは、ハンズフリーを実現するアイサイトXを搭載するタイプ「EX」グレードが選択可能です。
EX仕様では、インフォテインメントシステムと一体の全面液晶メータパネル、緊急通報を可能にするテレマティクスユニット、高速道路の道路情報を事前収録した3D高精度マップを追加搭載。これにより、360度全方位の状況と先方の道路形状の把握を可能にし、高速道路上でのアイサイトXの各種先進的な機能を実現します。また、ドライバーの表情認識を行うドライバーモニタリングシステムを搭載することで、高速道路上での渋滞時のハンズフリーの認可を取得。ドライバーの疲労軽減を図ることで、事故の抑止を図ります。
なお、非EX車であっても、先代モデル同等の機能が搭載されています。ですから、その違いは高速道路上の追加機能に限定されると考えて差し支えありません。この場合、インフォテインメントシステムはナビと別体式となります。メーカーオプションでEXと同等のインフォテインメントシステムを選ぶことも可能ですが、非EX車ではメータパネルは全面液晶とはなりません。
視界なくして安全なし。スバルは、安全確保を目的に厳しい死角制限を課してきました。それは、新型WRXでも変わりません。歩行者の視認を助けるフロントの三角窓や、ギリギリまで広く確保された後方視界。また、各ピラートリムは死角が最小限になるよう面取りされています。また、フロント・左下方のモニタがオプション設定されている他、ナビパックではバックカメラにエアブロアが装備されます。
SGPの導入に際しては、動的質感の改善ともう一つ目的がありました。それが、世界最高峰の衝突安全性能を確保すること。SGP採用モデルは、世界各国のアセスメントで宣伝文句に違わぬ実力を既に証明済みです。
エアバッグは、何と9個を標準搭載。フロント、サイド、カーテンを左右で6個。あと3つは?そのうち2個は、前席の膝下を保護するもの。運転席にはニーエアバッグを、助手席にはサブマリン現象を防止するシートクッションエアバッグが装備されています。そして、残る1つがフロントウィンドウ下に装着される歩行者保護エアバッグ。スバルの安全思想は、乗員保護という自己防衛の垣根を越えて、歩行者を守る段階へと進んでいるのです。
新型WRX S4のグレード構成は、GT-HとSTI Sport Rの2グレード。
新型WRX S4のグレード構成は、標準モデルのGT-Hと上級モデルのSTI Sport Rの2つ。これらに、それぞれアイサイトX仕様が用意されているため、計4グレードの設定です。
ただ、GT-HとSTI Sport Rで性能上に違いはありません。両者はホイールサイズも同じですし、メーカーオプションで装備を揃えることも可能です。そのため、両者の違いはSTI Sport専用インテリア/エクステリア、そしてドライブモードセレクトに限定されます。その価格差は、税抜き35万円。電子制御ダンパーや本革シートを考慮すれば、極妥当な価格差でしょう。
一方、EXと非EXの価格差も同じく、税抜き35万円。ただ、非EX車はナビが非搭載ですから、これを搭載するとなれば、価格差はほぼ無いと考えて良いでしょう。現実には、非EX車は下取り価格が低く留まることが想定されますから、実際にはEX車の方がオトクかも知れません。
この他、STI Sport Rにはメーカーオプションで、ウルトラスエード仕様のRECAROシートが選択可能です。その価格は+20万円。ノーマルの本革シートとデザインが異なる専用品です。
新型WRX S4は、最大限価格上昇を抑えてはいるものの、STI Sport R EXでは税抜き434万円に達します。各種税や登録費用を加味すると、取得費用は最低でも500万円を越えていきます。確かに、高いです。ただ、今クルマはどれも高いのです。ノア/VOXYでは凡そ300万円超え、ヤリスでさえHVなら200万円に達するのです。そうした状況を考慮すれば、十分にアフォーダブルだと言えるのかも知れません。(小生はとても手が出ませんが。。。)
ただ、一つ思うことがあります。これまで、日本のものづくりは、「アレコレ機能が付いたのに価格は同じ」が基本でした。勿論、そこには凄まじい努力と奇跡のような創意工夫がありました。
けれど、昨今の日本のものづくりは、その基本を忘れているように感じます。日本の白物家電が壊滅状態になったのは、欲しくもない機能を勝手にアレコレ追加して、それをそのまま価格に転嫁したからでした。消費者は、シンプルで安いものを求めていたのです。翻って自動車はどうでしょうか?中古スポーツカーが高騰しているのは、一つの予言のように思えてなりません。