2022年ルマン24時間。トヨタ完勝の陰にあるものとは。 [2022年06月17日更新]

モータースポーツ
 

ニュース ピックアップ [  モータースポーツ  ]

次のページ>>1 2

 

文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

ヨーストを超えたトヨタ。2022年、5連覇を達成。

すべてに万端の準備を整え、全く死角なしで迎えた、2018年のルマン。ただ、ここでもトラブルとは無縁ではありませんでした。小林可夢偉がピットインのタイミングを誤り、ガス欠寸前に陥ったのです。すると、TS050は直ちにセーフモードに移行。燃料供給を最低限にセーブして、モータで走行しつつ、スロー走行でピットを目指します。ところが、残り燃料残で走行可能な地点に達すると、システムが燃料供給を正常に復帰。レースペースに復帰すると、何事もなくピットインを終えたのです。

トヨタは、ガス欠さえ事前想定しており、緊急用のプログラムを準備していたのです。この年、トヨタは悲願の初優勝を1−2フィニッシュで飾ります。日本車がルマンを制するのは、1991年のマツダ以来、2度目のことでした。

遂に、勝利の方程式を完成させたトヨタ。以後は何事もなかったかの如く、盤石の勝利を重ねていきます。2019年、2020年を制したTS050は、ポルシェ・919Hybridに並ぶ3連覇を達成。2021年には、新規定に合わせGR010を投入。1−2フィニッシュを2年連続で達成します。

ただ、最新のGR010も、トラブルと決して無縁ではありません。2021年のルマンでは、中盤に燃料供給系にトラブルが発生。これを克服できず、騙し騙し走ることを強いられます。しかし、リタイヤに至ることはありませんでした。なぜなら、このトラブルが5月のスパで発生していたため、十分に事前想定を行っていたからです。ルマンでは、トラブルは必ず起こり得るもの。しかし、ストップしなければ良いだけのこと。これがトヨタが遂に手にした、本当の強さなのです。

そして、2022年のルマンでも、7号車がコース上でストップします。ハイブリッド系のトラブルでしたが、コース上でシステムを再起動。再び走り出したGR010はレーシングスピードに復帰。そのままピットへ戻ると、再起動を再び試みます。ハイブリッドマシンは漏電の可能性がある場合、クルーはマシンに触れることができません。GR010はピットで静止したまま、時間だけが過ぎていきます。

幾度か再起動を試みると、システムは正常に復帰。驚くことに、そのままレースに復帰します。エンジニアは慌てる素振りもなく、ピットクルーがカウルを開けるどころか、マシンに手を触れることすらなく、そのままレースに復帰していきました。

これこそ、徹底した事前想定の成果に違いありません。如何なるトラブルであっても、必ずピットに戻ることができ、手を触れずとも修復のために何をすべきかを予め把握している。トヨタは、あのヨーストを上回り、史上最強の強さを手にしているのかも知れません。

 

続々と参戦発表。ルマンは再びワークス決戦へ。

そして、来年2023年。ルマンは久方ぶりに、ワークス対決の場となります。新たな絶対王者トヨタは、プジョー、ポルシェ、フェラーリ、キャデラックを迎え撃つこととなります。

2010年代後半、アウディ、トヨタ、ポルシェが繰り広げた開発競争は、技術レベルと開発予算を際限なく上昇させ、遂にポルシェ・アウディの撤退を招くに至ります。結果、TS050は年々厳しくなる出力/燃費規制に対応して、遂には3km/Lでルマンを走るという究極的技術領域に達します。

ただ、このままの車両規定では、到底トヨタに敵うはずがありません。新規参戦は期待できず、FIAとACOはWECのトップカテゴリー・LMP1の全面改訂を決断します。こうして導入されたのが、ハイパーカー・LMHです。LMHでは、マシンのパフォーマンスはBoP(性能調整)で厳格に管理され、シーズン中の改良は最小限しか許可されず、空力に関連するカウル・ウイング等の変更は一切禁じられます。これにより、参戦費用を最小限に抑制しつつ、最大限のマーケティング効果が得られるとしたのです。

ハイパーカーはOEMの注目を集め、アストン・マーチンが新規参戦を発表します。ただ、このプログラムは中断を余儀なくされ、代わって名乗りを上げたのは2011年以来の復帰となるプジョーでした。

一方、北米で開催されるIMSAでは、DPiがトップカテゴリーを形成。このDPiは、市販のLMP2シャシーをベースに、オリジナルエンジンを搭載。これにブランドを表現するオリジナルカウルを被せたもの。ただ、ACOとの交渉が難航し、WEC及びルマンへの参戦は拒否されていました。低コストでトップカテゴリーを競えるDPiは好評で、キャデラック、アキュラ、マツダ、日産が戦いを繰り広げていました。

IMSAは、新たな時代を迎えるに際し、新規定LMDhの構想を発表します。これを歓迎した、ポルシェ・アウディがLMDhの開発を発表。キャデラック、アキュラ、BMWもこれに追従します。これを受け、ACOとIMSAは交渉を重ね、LMHとLMDhを同一カテゴリーとして扱うことを発表します。こうして、WEC及びルマンにLMDh車両の参戦が可能となります。

一方、F1では漸く予算制限策が始動。2021年移行、順次年間予算が削減されることとなります。そこで、余った人材の活用策として見出されたのが、WECでした。そこで動き出したのが、フェラーリのトップカテゴリーへの復帰でした。フェラーリはLMHを支持。これの開発を正式に発表したのです。

 

最新技術のLMHと、既存技術+HVのLMDhの戦い。


トヨタ打倒へ向けて、真っ先にWECに登場するのがプジョーです。プジョーは、リヤウイングを持たない画期的なデザインを持った、LMHマシン・9X8を発表済み。WECの次戦の第4戦モンツァから、新たに参戦を開始します。

一方、トヨタ最大のライバルと目されるポルシェのLMDhカーは、既にテストを開始済み。相当の距離を走行しており、シーズン終盤戦への復帰が噂されています。ただ、惜しまれるのは、アウディがF1へ注力するため、LMDhのプログラムを中断したこと。ただ、VWグループでは、これに代わってランボルギーニが2024年を目処に参戦を開始することを発表しています。

ワークス参戦が前提のLMHと異なり、LMDhは市販が条件。そのため、プライベータでもメンテナンス可能な技術レベルに抑制されます。そのため、ポルシェは919Hybridでは最新技術を導入した2.0LV4ターボを採用したのに対し、LMDhでは大排気量V8ターボという少々前時代的なエンジン形式が採用されています。ただ、低廉なコストのメリットは遺憾なく発揮され、2023年のルマンには最大8台のポルシェ・LMDhが登場する可能性があると公表されています。

注目は、F1テクノロジーを余す所なく投入するフェラーリでしょう。フェラーリは、GTEで長年WEC及びルマンに参戦を続けており、既に十分な知見・経験とデータを持ち合わせています。間もなく発表されるフェラーリのLMHカーに、期待に胸高鳴ります。

現在のところ、2023年のルマンへ登場することが確定しているのは、トヨタ、プジョー、フェラーリのLMH、ポルシェ、キャデラックのLMDh、全5メイクス。一方のBMWとアキュラは、IMSAのみの参戦を計画しています。ただ、問題はLMHとLMDhの性能調整です。両者は、建前上全く互角の性能を有するはずですが、ハイブリッドへの依存度を含め、両者は全く出自を持つマシン。性能を完全にイコールとすることは、容易ではないでしょう。

対するトヨタは、新型LMHの開発が噂されています。参戦初年度でルマンを制するのは、凡そ不可能。トヨタは、出揃ったライバルの動向を綿密に調査し、2024年に新型LMHを投入するつもりなのかも知れません。

 

2023年、初めて防衛戦に挑むトヨタ。死角はあるか。

2023年、トヨタは初の防衛戦を勝利で飾れるのでしょうか。恐らく、問題はないでしょう。トヨタは、ほぼ間違いなく6連覇を遂げるはずです。新たな挑戦者が現れても、勝利の方程式を完成させたトヨタの絶対的有利は微塵も揺るぎません。2012年のアウディがそうであったように、トヨタは盤石の強さを発揮し、レース中盤以降は完全に主導権を確立し、そのままチェッカーを受けるはずです。

LMHとLMDhでは完全な性能調整が成されるため、2年落ちのGR010でもパフォーマンスは互角。逆に、GR010は完全に熟成されており、完璧な信頼性を確立しています。この時点で、トヨタは勝利の方程式を完成させているのです。

最も危険なのは、やはりポルシェです。ルマンを知り尽くしたポルシェは、LMDhで既に相当の距離を走り込んでいます。ただ、ポルシェにも死角があります。それは、オペレーションをペンスキーが行うことです。米国の伝説ペンスキーであっても、ルマンでの知見は十分ではありません。今年、習熟を期してLMP2に参戦しているものの、台数は1台のみ。その上、既存のLMP2チームに遅れを取っています。ところが、来年のルマンにはIMSAから2台、WECから2台と、最低4台を投入する予定。1台と4台では、オペレーションは全く別物。アンドレアス・ザイドルも今はなく、十分な体制を確立できるか疑問が残ります。

プジョーは活躍が期待されますが、残念ながらルマンの新王者トヨタと絶対王者ポルシェの敵ではありません。フェラーリは注目ですが、現代のルマンではトップカテゴリーの経験はなく、2023年は習熟の年となるでしょう。

かつてのヨーストに匹敵する強さを手に入れたトヨタ。これを打倒するのは、真に容易ならざること。ただ、ルマンに絶対はありません。幾度も不運に見舞われてきたトヨタ。決して不安が無い訳ではありません。

真の勝負は、2024年です。ポルシェ、フェラーリは熟成を極め、形振り構わずトヨタ打倒を目指すことでしょう。もし、ここで倒すことが出来れば、トヨタは7連勝となり、ポルシェの記録に並ぶことになります。これで、名実ともにルマンの新たな王者として名声を確立することができるはずです。

来るべき2023年へ向けて、ルマンへの戦いは既に始まっています。来年のルマンまで、残すところ350日。久方ぶりのワークス対決が、今から楽しみで仕方ありません。

 

文責:スバルショップ三河安城和泉店 営業:余語

336

 

次のページ>>1 2

 

スバルショップ三河安城 店舗案内

スバルショップ三河安城本店
スバルショップ三河安城和泉店
 

>>最新情報一覧

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

JAPAN MOBILITY SHOW 2023...

2023年10月12日 スバル

 
 

夏季休業のごあんない

2023年08月12日 スバル

 
 
 
 
 
 
 

自動車は、どう進化すべきか。...

2023年05月09日 スバル

 
 
 
 
ニュースピックアップ