混迷の始まりか。躍進への一歩か。たった3ヶ月でBEV戦略を変更。 [2023年08月09日更新]
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懸念4:車両価格が高いBEV、需要に限界あり。
今回の方針大転換は、必ずやスバルの一大転換点となるでしょう。もちろん、スバルがBEVで躍進を遂げ、一気にBEVのトップランカーに躍り出て、60万台達成の可能性もゼロではありません。でも、その可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
なぜなら、2030年に至っても、経済アナリストの予想通りにBEVに普及することはあり得ないからです。誰しもが期待する全個体電池が実用化されたとて、それは恐ろしく高価なはず。つまり、依然として一般消費者の間では、航続距離の問題は未解決のまま、ということです。そのため、BEV全体でも市場占有率が20%にも達すれば御の字、といった状況で暫くは推移するはずです。
この穴を埋めるのが、BEV技術の発展の恩恵を受け、さらに進化するPHEVです。短距離走行なら電気で、長距離はガソリンで距離を稼ぐ。ペロブスカイト太陽電池が実用化すれが、通勤ユースは充電無しで済むかも知れません。そして、地球環境の変化によって多発する気象災害が、PHEVの優位性をより強く印象付けるはずです。
結果として、スバルは目標の半分となる30万台の販売が精一杯で、過剰な生産キャパとBEVの在庫が経営を強く圧迫し、BEV化による価格高騰が顧客離れを加速させることでしょう。そして、過剰な目標達成の圧力が社内をひどく疲弊させ、優秀な人財を失うことになるはずです。スバルは、もっと現実的な目標と経営方針に回帰すべきです。
結論:ピンチこそ、ファンに支えてもらうべき。
ただ、時代は移りゆくもの。いつまでもフォロワーのままでは、敗者となるは必然。野心的な計画を以て、時代の波に抗わない限り、未来が拓けないのも事実です。では、如何にせば、スバルはこの混迷の時代を生き抜くことができるのでしょうか。
最も重要なことは、コアなファンを大切にすることです。スバルには、市場の5%に達する熱いファンがいます。彼らの期待に沿うクルマを用意できるのならば、スバルが潰れることは絶対にありません。スバルは彼らを大事にしつつ、彼らとともにゆっくりとBEVに移行していくことが何よりも肝要です。現実的には、次のようなプランとなるでしょう。
当面は、トヨタ由来のe-Axleと次世代e-BOXERでCAFE規制値を稼ぎつつ、MTのホットモデルを復活。電動化技術の強化と技術プレゼンスのために、Formura EやWEC等の世界選手権に参戦。BEVのブランドイメージを確立しつつ、新たなファンを獲得。これに乗じて、BEVにホットモデルを用意。高価格モデルには自製e-Axleを採用しつつ、コンパクトモデル及び軽はトヨタから調達。これにより、台数を上乗せ。生産キャパが過剰となれば、トヨタからの受託生産で穴を埋め、必要に応じてICE車専用ラインを閉鎖。あくまで、現状の生産キャパ100万台体制を維持。ICEの開発投資は継続しつつ、BEV技術と並進。最終的に最高効率のPHEVの実現を目指す。将来への技術投資として、太陽光や熱など自然エネルギーの活用や、水素エンジンによる排出物ゼロを目指す。
代わり映えのしない、リスク回避の意気地なし妥協案かも知れません。でも、フェラーリもポルシェも、コアなファンを何よりも大事にして、繁栄を築いているのです。ファンなくして企業なし。その事をスバルは、強く再認識すべきでしょう。