スバルBEV戦略に大異変!「2025方針」を徹底解析。 [2025年12月12日更新]
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激しさを増す、東京でのAI人財争奪戦。
E/Eアーキテクチャの採用により、アイサイトはさらなる高度化が可能になります。そのカギは、内製AIの搭載にあります。スバルは、ステレオカメラのみで状況認識、測距を行うアイサイトは、AIとの親和性が高いとしています。平板な画像から物体を抽出・認識し未来予測を行う、という一連の作業は、AI化によってより高速かつ正確に行えるからです。また、現在のアイサイトでは不可能な、障害物を乗り越えるべきか、回避すべきかといった判断も、AIの方がより正確に行えるとしています。
スバルは、AI関連技術の強化に際し、渋谷に新拠点「SUBARU Lab」を新設。日本のIT先進地で、AI関連の人材確保や関連企業との連携を可能とし、よりスピード感のある開発を実現するとしています。自動車関連企業は、工場立地に由来して地方に開発拠点を構えていることが多く、この事が人材確保の弊害になってきました。東京出身の自分には、今の東京の良さはサッパリ理解できないのですが、IT関連の方々は東京で働くことを職業選択の条件としているようで、トヨタ、デンソーも東京に拠点を設置。AI技術開発を巡る人財争奪戦は、より一層激しさを増しているようです。
スバルは2024年4月、ステレオカメラの認識処理とAI推論処理を統合し最適な判断結果を出力可能なSoCの最適化に関して、AMD社と協業を開始することを発表。AMD社のVersal™ AI Edge Series Gen 2の採用により、ステレオカメラの認識処理をさらに改善し、2020年代後半の次世代アイサイトに搭載することを目指すとしています。さらに、2025年11月にはSoCのカスタマイズに向けた回路設計を進めていることを発表しています。
また、2024年11月にはオンセミ社と、Hyperluxイメージセンサ「AR0823AT」の専用設計に関する協業を開始することを公表。AI推論処理に最適な視覚データの取り込みを可能にし、ステレオカメラによる認識技術をさらに磨き上げ、2020年代後半の次世代アイサイトに採用するとしています。
つまり、次世代アイサイトは2020年代後半に登場。オンセミ社製イメージセンサを採用したステレオカメラと、AMD社製Versal™ AI Edge Series Gen 2で構成。AI推論処理によって、より高度な運転支援技術を実現するということになります。
AI導入でも、自動運転機能はそのまま?
AI技術の導入によって、アイサイトの運転支援能力はどのように拡張されるのでしょうか。AIの有無による最大の違いは、現状認識です。今、自車が如何なる状況に置かれ、どのように走っているのか、AIであれば理解できるからです。
現在のアイサイトXは、スバルが事前収録した3D高精度マップと、走行中のステレオカメラ映像を照合。双方が合致した場合にのみ、ハンズオフ機能が作動しますが、AIの導入によって事前収録のない道路でもハンズオフが可能になる可能性があります。例えば、一度目の走行は無理でも、AIの学習により二度目の走行では可能なるということは考えられます。ただ、非自動車専用道路でいわゆる「自動運転」を可能にするのは、安全上の問題から今しばらく先でしょう。歩行者や駐車車両など、周囲の状況が非常に複雑になるからです。その一方で、AI導入により、使用が不適切と考えられるシーンでレーンキープの使用を不可能にするなど、積極的な機能制限による安全対策も考えられるかも知れません。
これらを鑑みる限り、AIが導入されても、運転支援機能が革命的に進化する、というのは考えにくいかも知れません。唯一考えられるのは、渋滞時ハンズオフ時の自車車線への進入車両への対応です。AIにより、車両及び歩行者の動向予測が可能になり、より高度な判断・制御が可能になると考えられます。
続いては、回避運動です。現在のVer4.5では、同一車線内での追突回避運動及び意識喪失時の自動停車は実現しています。しかし、車線をまたいでの回避は現在のところ不可能。これは、隣接車線の安全確保と状況認識が不可能なためですが、AIであればそれが可能になりますから、2車線以上の道路での自動危険回避が実現する可能性があります。ただ、他車に危険を及ぼす可能性があるため、作動する条件は相当に限られると考えられます。
最後は、高速道路での自動進路選択。AIによって、目的地と進路が理解できるのなら、高速道路での分岐も自動化が可能なようにも思われます。しかし、実際には難しいでしょう。そもそも、高速のランプは殆どが一般道と同じ40km/h制限。これを遵守するとなると、本線上から減速せねばなりません。実際には弾力的な運用がされているようですが、OEMが意図的にプログラムとして組み込むことが許可されるとは思えません。そのため、将来に渡って、高速道路での進路選択が自動化されることはないと思われます。
つまり、AI技術が導入されても、運転支援技術が飛躍的に進化することは無いように思われます。それよりも、歩行者や車両の動きの予測、危険度の判断など、衝突回避技術の精度向上が、現実的なところでしょう。
目下開発中の新ユニット、その概要は?
このように、次世代のスバル車に劇的な進化をもたらすのは、E/Eアーキテクチャに代表されるデジタル技術の進化です。制御統合ECUと、AI技術を搭載するアイサイトにより、より安全かつ快適な車両が実現するのです。
では、ハードウェアの進化はどうでしょうか。今回、開発中の次世代エンジンについて、若干の情報開示がありました。それは、「次世代パワーソースについては、バッテリEVに加え、電動化を前提とした最適な新エンジンの開発も進めていきます」とのコメント。ここから察するに、目下開発中の新エンジンは「電動化に最適化されたユニット」と考えることができます。
2024年に登場したS:HEVは、FB25をベースにアトキンソンサイクルを導入したもの。さらなる効率改善のために、エンジン全体の小型・軽量化は必須でしょう。また、FB系全体を考えてみても、後継機が無いことは宜しくありません。一部情報によれば、ブロックまで新規開発とのこと。となると、CB18をベースとしない/できないエンジン。つまり、CB18より排気量が大きい、と推察することが可能です。となれば、排気量は2.0L以上と想像されます。
今度は、100%電動化の目標から考えてみましょう。S:HEVユニットの生産計画は30万台程度。60万台をBEVとしても、120万台のうち30万台が採用するパワーソースが不明です。となると、次世代マイルドハイブリッドユニットが登場する可能性が考えられます。現在のところ、S:HEVは2.5Lユニットに最適化されており、2.0L仕様の登場はない模様。となると、クロストレックのベースモデル等に搭載する、廉価版の電動化ユニットは不可欠となります。この点から、開発中のユニットはFB20+e-BOXERの代替となると考えるのが自然です。
一方で、S:HEV用に全面刷新されたとは言え、ブロックは古いままのFB25の今後も気になります。今後、10数年に渡ってHEVが主力となると考えると、2010年代に登場したFB系を使い続けるのは妥当ではありません。この点を考慮すれば、新ユニットに2.3L程度のボアアップ版が存在する可能性も考えられます。
何れにしても、電動化投資の見直しにより、ICE関連の開発予算は増額が見込まれます。これにより、開発が加速することは間違いありません。ただ、小世帯のOEMですから、トヨタのようにハイパフォーマンスモデル専用エンジンの開発は、望み薄でしょう。
スバルが目指す、BEVとICE車の兄弟化。
さて、パワーソースの次は、プラットフォーム。現用のSGPは、GT系インプレッサと共に登場していますから、間もなく10年。更新時期を迎えます。このプラットフォームについても、スバルは僅かながらヒントを提供しています。
2025方針に示されたイメージをよく見ると、現行のSGPが前・フロア・後に3分割され、フロア及び後部に互換性があるよう描かれています。恐らく、このイメージは、ICE車とBEVでプラットフォームを共用することを示しているものと思われます。
BEVは、フロアにバッテリを敷き詰める、2重底とするのがセオリー。これにより、スペース効率と冷却効率を高める他、衝突時のバッテリの損傷を防ぐだけでなく、車体全体の重心を下げる効果もあります。これに対し、ICE車はフロアは2重ではなく、センターにプロペラシャフト用のトンネルを設けるのがセオリー。そのため、BEVとICE車では別のプラットフォームを用いるのがスタンダードでした。
ただ、これでは2種類のプラットフォームが存在することとなり、小世帯のスバルには辛い。そこで、プラットフォームを3分割とした上で、フロアを別設計としつつ、前後部分を共用。BEVのAWD仕様ではリヤにeAxleを搭載するため、後部もICE車のAWD仕様と共用させるつもりなのでしょう。これにより、主に衝突安全分野での開発工数を削減、さらに柔軟な車種展開を可能にするものと思われます。また、ものづくり革新によって、超効率開発/生産を実現し、BEV、HEV、ICEを問わず、変化の激しい市場環境に柔軟かつ迅速に答えられるようにする、としていることから、バリエーション違いのモデルを幅広く展開していくことを考えているものと思われます。
スバルは、ICE車のモデル群を維持しつつ、新たにBEV8車種を追加する腹積もり。2025方針の商品展開の説明でも、ベールに包まれたモデルを加え、依然として15車種が存在するように描かれています。BEV計画の後退により展開速度は多少低下するでしょうが、モデル数の削減はない、と考えてよいのでしょう。レヴォーグに対するレイバックのような、バリエーション展開は多いに期待できる処です。
そのためにも、E/Eアーキテクチャの採用とBEV/ICE共用のプラットフォームは開発は、最重要課題となっているはずです。なぜなら、E/Eアーキテクチャが導入されれば、コンポーネントの入れ替え、追加の技術難易度が劇的に低下するからです。つまり、超効率開発/生産を実現するカギは、E/Eアーキテクチャが握っていると考えてよいでしょう。
クルマがアップデートして進化する。
E/Eアーキテクチャによる車両技術革新は、ユーザに全く新たな楽しみを付与します。その一つが、車両のアップデートプログラムです。現在の私たちは、購入した自動車がどんどんアップデートされて進化していく、なんてことはありません。購入したまま、ただただ古くなっていくだけです。しかし、スマホはどうでしょう。最新のOSに対応する限りは、ハードウェアの能力上の制約はありつつも、中身はどんどん進化していきます。自動車も、E/Eアーキテクチャの導入により、いわゆる「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」へ進化。様々なアップデートプログラムにより随時機能進化を遂げ、新世代車両へと生まれ変わることになります。
スバルは、電子制御サスの設定変更など、幾つかのアップデートプログラムを開始しています。ただ、その効果は趣味性の強いものに限られており、一般的なものにはなっていません。それが、多くのユーザが求めるものにまで拡大されるとすれば、自動車の可能性は多いに広がっていくことでしょう。スバルは、ソフトウェア、ハードウェア問わず、一人ひとりに最良の安心と愉しさを実現するとし、体験価値を拡張するものになるとしています。
ただ、こうした機能進化を実現するには、基幹となる車載OSの確立が欠かせません。スバルはこの点について何ら情報を明らかにしていませんが、トヨタのアライアンスBEVを共同開発し、アイシンと次世代eAxleを共同開発している以上、トヨタ系の車載OSを採用するとみて間違いないでしょう。となると、提携先を明らかにしていない制御統合ECUについても、トヨタ系のものを採用することになるはずです。そして、スバルと時期を同じくして、トヨタもE/Eアーキテクチャを採用するものと考えられます。逆に言えば、巨人トヨタが歩調を合わせるからこそ、全コンポーネントの大刷新という、画期的な技術革新が可能になる、と言えるかも知れません。
車載OSの重要性は、セキュリティ面からも非常に重要です。アップデートが可能になるということは、セキュリティホールをわざわざ作るという事でもあるからです。そのため、将来的には車載OSのハッキングという最悪の事態も想定する必要があるのです。この点についても、トヨタと歩調を合せて、将来的な危機に一丸となって対処していくことになるでしょう。
2030年スバルは大躍進?ラインナップは?
スバルというこの小さなOEMは、ラインナップ半数のBEV化により、革新的な進化を遂げることになります。その進化は、小世帯のOEMには多分にリスクを伴うものとなります。それでも、さらに先の30年を考えれば、生存のための必然的な進化であるとも言えます。その一方で、BEVが一般的な存在となるか否かについては、依然として議論の余地が残されています。
では、現計画が完遂されるであろう2030年代前半のラインナップについて予想してみましょう。まず考えるべきは、スバルBEVのブランド戦略です。トヨタやボルボのようにBEVを別ブランドとして定義するか、メルセデスのように既存モデルとの親和性を高くするか、BMWのように既存モデルにBEV仕様を追加するか。スバルは、どの戦略を採用するのでしょう。
そのヒントも、2025方針にあります。スバルは、WILDERNESSを軸とするAdventureと、STIを軸とするPerformanceの2つを、軸に据えていくとしています。この点から考慮すると、新たにBEVの軸を増やすとは考えにくい。一方で、スバルを象徴する水平対向エンジンが失われることから、既存モデルのイメージを活用したい。となると、既存モデルと高い親和性を持たせてBEVラインナップを展開していく、と考えるのが自然でしょう。
となると、レガシィ等の名称リバイバルの他、既存モデルのBEV仕様での展開という可能性もあるでしょう。何れにしても、全くの新ブランドとして展開することだけはない、と断言しても良いのかも知れません。
さて、ハイパフォーマンスモデルはどうなるでしょう。JMS2025に出展されたPerformance-Bの市販版は、何処かのタイミングで登場するのは間違いありません。ただ、あのままで市販されるとモデルライフが短くなるため、次世代インプレッサをベースに新たに造り直す可能性もあるでしょう。また、高出力仕様のeAxleが存在するとの話があることから、Performance-Eの市販版としてBEVのハイパフォーマンスモデルの登場も期待できます。その場合、そのモデルにはレガシィまたはアルシオーネの名が冠されるものと思われます。また、BRZについては、プラットフォームが古いため、トヨタ側の動きを待って廃止されるものと思われます。
兎にも角にも、スバルの動きは非常にアグレッシブなもの。ファンとしては、新たな展開に心躍らせつつも、しっかりと応援をしていきましょう。
間もなく2020年代前半も終わり、後半戦に突入します。2030年代へ向け、自動車産業は如何なる飛躍を遂げるのでしょうか。こたつでミカンを食べながら、愉しみに待つことにしましょう。
2025年11月 SUBARU 2025方針

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