新型レヴォーグ[VN型]特集:その4 新世代アイサイトの技術詳細とインプレッション [2021年01月09日更新]

レヴォーグ アイサイト
 

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

新世代アイサイト技術詳細10:後退時ブレーキアシスト

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リヤに設置した4個のソナーセンサーにより、後方約1.5mの範囲で障害物を探知。自車速約1.5〜15km/hの範囲で、自動的にブレーキを作動させ、衝突被害軽減及び回避を図ります。ソナーセンサーの特性上、吸音性の高い対象物や反射の弱いシーンでは作動しません。接近状況は、バックカメラ映像に重ねて表示され、ドライバーに直感的に危険を知らせます。

障害物の探知はソナーセンサーで行い、その脅威認識はソナーCU単独で判断しますが、車両制御そのものはアイサイトECUにて行います。

 

ドライビングインプレッション1:スムーズさを増したACCとALK。

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今回、スバルは全身全霊を掛けて、新世代アイサイト+アイサイトXの開発を行ってきました。その情熱を汲んでいただけたのかは分かりませんが、非アイサイトX車は全体の6%に留まっています。それ故、試乗車の大半もアイサイトX搭載車となっており、小生も非搭載車の試乗の機会を得られていません。そのため、アイサイトX搭載車を通じてのインプレッションとなりますが、新世代アイサイトの評価を行って参りたいと存じます。

アイサイトXがその全ての能力を発揮するのは、アイサイト用車載高精細マップに登録された、ナンバリングされた高速道路本線区間のみ。従って、それ以外の区間では基本的には非アイサイトX車でもその能力に大きな違いはありません。

ACCも、これまで同様に極めてスムーズ。クルコンの加速レベルは4段階で変更可能ですから、不用意な加速に違和感を感じる方は、加速レベルを「Lv.1(エコ)」まで下げて使うのがオススメです。アイサイトのACCが滑らかなのは、車速に厳密に従わないこと。登り坂では設定車速から少し落とし気味としつつ、下り坂ではムリに減速させない。そのため、先行車の流れにスムーズに合わせていくことができるのです。

また、ハードウェア・ソフトウェアの一新によって、一部機能に明確に進化がみられます。特に、車線の認識は相当に精度が向上しているようです。車線変更を行うと、直ちにディスプレイ上の白線がブルーに変わり、車線中央維持機能が復帰したことが分かります。意地悪のように、ガラガラの未明の23号線で車線変更を繰り返しても、即座に車線がブルーに変わります。ステレオカメラの視野が拡大したことで、車線変更前から隣接車線の白線を認識しているのかも知れません。

これまでは、車線中央維持機能がONになるまで、ジッとディスプレイを睨むシーンがありましたが、これは過去のものとなるでしょう。また、白線が薄れているような箇所での認識も改善しているように思われます。

 

ドライビングインプレッション2:変化したステアリングのフィーリング。

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ライントレースのスムーズさは、さらに洗練されています。今回、新たにパワステユニットを刷新。2ピニオンタイプとした事で、遊びが少なくなり、ダイレクト感が増したため、制御がしやすくなっているのでしょう。ステアリングを見ていても、どっしりと安定していて、大きなアンジュレーションや轍があっても、全く不安を感じさせることなく綺麗にラインをトレースしていきます。

ただ、ちょっと違和感を感じたのが、アイサイトによるステアリング制御時のステアリングフィール。これまでのアイサイトでは、制御中にステアリングを操作すると、若干「焦れったい」ような感触に逆らえば、容易に上書き操作が可能でしたから、落下物を回避する際にも、すんなりと白線を跨ぐことができました。

これに対し、新世代アイサイトはこちらの操作介入を、相当頑固に嫌がります。ドライバーがステアリングを操舵すると、ゴリッという相当な反発トルクが返って、ステアリングを制御舵角に戻そうとします。新型レヴォーグの全グレードに言えることなのかは不明ですが、違和感がある事はお伝えせねばならないでしょう。不意に障害物に遭遇したような場合、女性でもこれに逆らって回避可能なのでしょうか。小生が、年末に23号線で落ちていた石でホイールを叩き割っているだけに、若干不安を感じます。

アイサイトX搭載車に搭載される、静電容量式に改良されたステアリングホイールは非常に好印象です。これまでのトルク反動による感知では、路面がフラットな直線路では、ステアリングを保持しているにも関わらず、保持確認を要求される場合が多々ありました。これに対し、静電容量式ではこういった事がありません。ステアリングを片手で握っているだけで、ずっと車線中央維持機能を維持することができます。

ただ、惜しむらくは静電容量式になったがために、ステアリングヒータが非装備になったこと。この価格帯の車両では、付いていて当然の機能。この点については、将来的な改良が待たれます。

 

大幅に値上がりした、新型レヴォーグ。その理由の一つは、新世代アイサイト。

見事、カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した新型レヴォーグ。その評価は、概ね好評です。ただ、不安要因の一つに、価格の上昇が挙げられます。良いものは、当然高い。確かにそうですが、旧型比+50万円では候補から外さざるを得ない、という方も少なくありません。ただ、スバルが自身の奢りからこの価格を設定した訳ではないことは、伝えておかねばなりません。この価格上昇の要因の殆どは、ADASにあるのです。

2020年代の要求を満たすADASを考えた時、360度センシングは必須と言えます。右左折時や見通しの悪い交差点、駐車車両の死角等に於けるリスク低減を考慮すれば、前方設置のセンサーからは完全に探知範囲外となるため、側方・後方に設置したセンサーによって、接近車両・歩行者等をより的確かつ正確に把握する必要があります。

ただ、センサーを設置しただけでは、360度センシングは実現できません。静止物体と移動物体を確実に識別せねばなりませんし、物体と自車との相対速度・相対加速度・予測軌道も常にモニタリングし続けねば、リスク回避は実現しません。

2010年代のADASが前方監視のみに留めてきたのは、ECUの処理能力に限界があるからです。これを実現するには、自動車産業の垣根を超える必要がありました。

今、CASEをリードしているのは、GAFAに代表される新興IT企業です。2020年代の先進安全技術は、彼ら新興企業の技術的貢献あって実現したもの。この先、彼らへの依存度は年々高まっていくことでしょう。

ただ、この状況は決して手放しで喜べるものではありません。それは、彼らの社是・経営体制が自動車産業と根本的に異なるからです。そうした「常識」の相違が、ADAS向け周辺技術・部品の価格に現れていると言えるでしょう。もし、自動車産業にとって彼らが「不可欠な存在」となってしまえば、価格の主導権は全く奪われてしまい、「安全は価格相応」という自動車エンジニアが誰一人望まぬ未来が訪れるとも限りません。

 

開発体制をゼロから刷新して乗り越えた、新世代アイサイト。

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スバルは今回の「新世代アイサイト」開発に際して、大きな技術的飛躍を実現するために、開発体制の刷新を断行しています。

これまで、アイサイトは社内技術の強化・蓄積により、着実な進化を遂げてきました。ただ、その技術的発展性には、自ずと限界がありました。勿論、スバルのエンジニアたちの能力が劣っている訳では決してありません。しかし、更なる技術的飛躍を目指すのであれば、社内養成のエンジニアを多数投入するよりも、外部の有能なエンジニア(但し、相当高給)を成果主義方式で招聘した方が賢明であると判断したのです。

よって、技術統括及びマネージメントはスバルが行うものの、その開発に実際に携わるエンジニアたちは外部招聘の人財が「助っ人外国人」形式で投入されています。個人的に高い能力を備える人財を抱えるエンジニアリング会社と提携し、スバルの求める人財を逐次投入していきました。ただ、スバルの要求に違えば「スイッチ」もあったようで、その辺りのシビアさは自社社員にはあり得ないもの。一時期、スバルからアイサイト関連の技術者が離職している旨の報道がありましたが、この辺りに関連した動きだったのかも知れません。

何れにせよADASにとって大切なのは、「誰が作ったか。」ではなく、「何人の命を救えるのか。」です。餅は餅屋。自動車エンジニアのあり方そのものが、同様に転換期にあるのかも知れません。

結果、彼らの能力・スキルは極めて高く、信じられないスピードで開発が進展したと言いますから、スバルの判断は正しかったと言えるでしょう。そういう意味では、ADA以来の技術的系譜に一旦区切りが付いたと考えて良いでしょう。

また、スバルは年初の1月6日。技術統括本部つまり最高技術責任者(CTO)直轄の新部署「CTO室」を新設を発表しています。CTO室は、新たな時代に向けた技術開発の方向性をリードする部門を設けることで、モノづくりにおける課題解決力向上を図るとしています。こうした動きは、AI開発拠点「SUBARU Lab」の開設などと連動し、新世代アイサイト開発のような従来の組織・体制に縛られない開発体制を模索する動きとも思われ、開発の思い切った外部委託などを今後考慮していく可能性があるのでしょう。

 

新型レヴォーグ 2020年10月

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