クラブ・スバリズム特別編「トヨタ・ルマン挑戦の歴史」 [2018年07月07日更新]
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2018年:敵がいない、ルマン。トヨタが孤高の戦いの中、遂に完璧にミッションを成し遂げる。
6月16日決勝スタート。デビュー3年目のワークスマシンと、参戦初年度のプライベータマシンでは、ルマンにおける安定性は別格。予選1−2のトヨタは、安定したリードを構築していきます。
こうした場合、問題になるのはチーム間での無用な争いです。オーバーペースが過度にマシンに負担を掛けるばかりか、良からぬミスを誘います。そこで、今回のトヨタ陣営は、7号車と8号車に互いの位置関係とタイム差は、ドライバーに一切伝えていませんでした。まずは、チームとして勝つことを第一義とし、ドライバーもエンジニアもメカニックもすべてのメンバーは与えられた役割に徹する。それを徹底していたのです。
マシンは昨年とほぼ変わらず、チーム体制もほぼ変わりません。ルマンに勝つためにすべきこと。それを成すために、トヨタ陣営は完全に生まれ変わっていました。ピットでは、機械のように正確かつ無駄なくメカニックが動きます。リヤウイングユニットの交換の際も、慌てることなくほんの数秒で作業完了。その仕事ぶりから、トヨタ陣営の完璧な準備が伺えます。
ヒヤッとさせたのは、小林可夢偉がドライブ中にピットインをしそこねたこと。ユノディエール手前から、燃料不足となった7号車は、EVモードでゆっくりピットを目指します。ところが、ここでもトヨタは慌てる素振りを見せません。ミュルサンヌを通過すると、燃料残量がOKになったのか再びペースを取り戻し、何事もなくピットイン。そして、ピットアウト。マシン―ドライバー―チームが完璧な連携を見せた瞬間でした。
そして、午後3時。完璧なレース運びでトヨタは1−2フィニッシュを飾ります。トヨタが、ルマン勝利の方程式を遂に完成させたのです。しかも、2台のTS050はずっとクルージングをしていた訳ではなく、昨年より速いペースで周回を重ねていたのです。苦節33年、トヨタは苦労の末に遂に頂点に辿り着いたのです。
今回のトヨタの勝利は、偶然でも神頼みでもありません。勝つべくして、勝った。トヨタが今年得たものは、本当に価値のあるものです。横綱としてルマンに登場し、横綱相撲の役割を完璧にやり遂げたのです。惜しむらくは、この方程式を昨年に完成させられなかったこと。やはり、王者ポルシェを打倒しておくべきでした。。。
モータースポーツの中で、得るものとは。
モータースポーツの意義とは、何でしょうか。ブランド価値の向上?スポーツイメージの訴求?知名度の向上?本当にそれだけでしょうか。
もちろん、量産車の技術と、レーシングマシンの技術とは、似て非なるものです。それ故、「あんな物は金の無駄」だと、モータースポーツを揶揄する方がいるのは事実です。ルマンで勝ったら販売台数が増えるのか?と問われれば、答えに窮するのは必定。
しかし、世界の頂点を目指した、ライバルとの厳しい戦い。その中で得られるもの。それは、閉ざされたラボの中では絶対に得られないものです。
今年で7年目を迎える、ハイブリッドでのトヨタのルマン挑戦。その間、プリウスのフルモデルチェンジはたった1度のみ。技術の進化の度合いを比較すれば、その差は明らかでしょう。「開発―試作―実験―実証―投入―評価―解析」と、モータースポーツでは凄まじいサイクルで開発が進行します。
そして、その技術の優劣は、勝敗によって立処に明らかになります。言い訳もゴマカシも一切通用しない、勝負の世界。その中で、エンジニアが育っていく。その事こそが、モータースポーツの真の価値なのです。
モータースポーツの中で、得るものとは。
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