ドラスティックに進化を遂げた「フォレスター」 [2015年10月09日更新]
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「フォレスター」ビッグマイナーチェンジ。ドラスティックな変化を遂げる。
スバルは、10月28日開幕する東京モーターショーに合わせ、「フォレスター」のビッグマイナーチェンジを実施します。
今回のビッグマイナーチェンジで大きく変更されたのが、NA系のフロントエンドのデザインです。フロントバンパー、グリル、ヘッドランプの大掛かりなデザイン変更により、一転してシャープな造形となっており、これまでの丸みのあるソフトなデザインから、イメージが一新されています。ヘッドランプは、硬めのラインで構成された内部の造形とブラックアウトされたベゼルが、シャープさを演出しています。また、NA、ターボ系ともにリヤコンビランプとホイールデザインが変更されています。
どうしても大きく変化したエクステリアに目が奪われがちですが、EyeSightがver.3に換装されるなど中身も大幅な進化を遂げる新型「フォレスター」。では、その詳細を見ていきましょう。
新たに「EyeSight ver.3」を採用。
「フォレスター」のEyeSightが、満を持してver.3に進化しました。探知距離・探知角が40%拡大されたうえ、カメラがカラー画像認識となり、CPUの処理速度が大幅に向上しています。結果、衝突回避速度が50km/h(カタログ値)に向上した他、各種制御がブラッシュアップされています。
ver.3の進化を最も強く感じるのが、「全車速追従機能付クルーズコントロール」です。ver.2と比較して制御が大幅に滑らかになっており、ver.3はより自然に加減速をこなします。その甲斐あって、クルーズコントロール使用中の燃費が大幅に改善されていて、ドライバー自身の運転とほとんど差異は無くなっています。
もちろん、「アクティブレーンキープ」機能も搭載されていますから、高速走行時にうっかり車線をはみ出しそうになっても、大丈夫。GWなどの長距離のお出かけでも、安心です。
「アドバンスドセーフティパッケージ」の追加とLEDヘッドランプへの変更。
新たに採用された「アダプティブドライビングビーム」は、アドバンスドセーフティパッケージにセットで装着される、先進のヘッドランプシステムです。EyeSightのステレオカメラが対向車、先行車を感知して、ハイビームの照射範囲をアクティブに制御して、照射を制限します。これによって、対向車を幻惑せずに照射範囲を大幅に広げることができます。
さらに、このヘッドランプはステアリング連動式となっています。ステアリングの操作に合わせてヘッドランプの角度が変わり、車両の正面ではなく、車両の進行方向を明るく照射してくれます。
夜間ドライブの危険は、常に暗闇の中に潜んでいます。出来るだけ遠方まで、出来るだけ広範囲を明るくできれば、安全性は大幅に向上するはずなのです。新型「フォレスター」のヘッドランプシステムがあれば、常時ハイビームが使用可能となりますから、夜間の安全性が格段に向上します。
「フォレスター」に搭載される「アドバンスドセーフティパッケージ」には、「アダプティブドライビングビーム」の他、後方の危険を探知する「スバルリヤビークルディテクション」が搭載されます。これらの機能の詳細は以下のとおり。
・スバルリヤビークルディテクション(側後方警戒支援システム)
リヤコンビネーションランプの下方に内蔵されたレーダーセンサーユニットが、各ユニット70m、150度の範囲で捜索を実施して接近する車両を探知します。2014年初頭に発表された「レガシィB4」「アウトバック」に初搭載された技術であり、次の3つの機能を実現します。
「死角車両検知」は、CピラーとDピラーに遮られて死角となるエリアに在する車両を探知、その状態でウィンカーを点灯させて車線変更を図った場合に、警告音とドアミラーのLEDインジケータでドライバーに警告を行うものです。12km/h以上で作動します。探知エリアは直近0.5mを除いた側方に3.8m・後方に4m+側後方1mの範囲です。
死角車両検知
「車線変更支援」は、後方から隣接車線上を高速で接近する車両をLEDインジケータで知らせ、車線変更すると衝突の危険性がある場合に、警報音で危険を知らせます。10km/h以上で作動し、車両後方約70mの範囲で接近車両を捜索します。警告対象は衝突予想時間まで4秒と算出された車両で、相対速度に応じて警告開始車間距離は変化します。
車線変更支援
「後退時支援」は、後退時に左右から接近する車両を探知して、衝突の危険性がある場合にドライバーに警告を行います。バックカメラがあったとしても、死角となってしまう後方左右を警戒してくれるので、特に往来の多い駐車場では非常に有効な機能となります。警戒範囲は、車両後端部を中心に半径7mの円内+側後方1m×側方左右7mのエリアで、衝突予想時間まで3.5秒の車両を対象とします。
後退時支援
これら側後方警戒支援システムは、前方のみに限られていたアイサイトの能力を大幅に拡張するもので、スバルが目指す全周囲予防安全の確立へ向けた第一歩となるものです。
・アダプティブドライビングビーム
ビッグマイナーに伴って、ヘッドランプは光源にLEDを用いる全く新しいユニットを採用しています。Lo&Hiの切り替えは、ロータリーシェードの回転によって行われます。ハイビームではシェードが全開となり、ロービームでは約半分を遮光します。また、アイサイトのステレオカメラで前方車両を確認した際は、その領域を遮光。常にハイビームの視認性を確保しつつ、他車の幻惑を防止します。
レヴォーグで採用されたものと異なり、ハイビームでもLED光源が採用されていますから、嬉しい改良と言えるでしょう。
シャシー性能の向上。そして、原点回帰へ。
ビッグマイナーチェンジということもあって、シャシー性能の向上も図られています。その改善は、驚くほどに手が込んでいて、これぞスバルと言うべきこだわりっぷりです。
スバルの足廻りには、一時期混迷の時代がありました。サスペンションの細かい動きをブッシュ類のたわみでごまかす、確信犯的なセッティングです。タイヤの位置決めが正確性が低下するため、ステアリングインフォメーションは希薄となり、直進安定性にもマイナスとなります。その分、ステアリングギヤ比を下げて、反応をダルくして辻褄を合わせていました。
スバルが原点回帰を図ったのが、2014年発表の現行「レガシィ」でした。
サスペンションの取付け剛性を向上して、タイヤの位置決めを正確にし、その上で「よく動く」サスペンションを組み合わせる。こうすることで、高速域でもビッタリ安定する高次元のスタビリティを確保しつつ、路面の凹凸を程よく「いなす」ようになります。結果、豊かなステアリングインフォメーションと滑らかな乗り心地が両立する「上質な足廻り」が完成したのです。この方向性の中で、驚くほど進化を遂げたのが「エクシーガ」のアップデート版である「CROSSOVER7」でした。
今回の「フォレスター」でも、フロントのクロスメンバーの剛性アップ、リヤトレーリングリンクのブッシュ最適化など、タイヤの位置決めを確実にさせる方向で、しっかり改善が図られています。また、リヤショックアブソーバーのレバー比の変更に始まり、前後ショックのフリクション最適化を図るなど、「よく動く」サスペンションへ向けても確実に改善が図られています。サスペンションセッティングが大幅に改善されたのに合わせ、ステアリングギヤ比がクイック化されています。
大掛かりに改良された前後サスペンション。
フロントサスペンションでは、クロスメンバーをWRX用の部品に変更しタイヤの位置決めを強化、ダンパーはより一貫性のあるフリクション特性を持つよう変更が加えられており、これに合わせてスプリングのばね定数も変更されています。2014年にインプレッサ系で実施されたように、フォレスターでもステアリングギアボックスが換装されており、ギア比が15.5:1から14:1へとよりクイックに変更されています。
リアサスペンションはダンパー、スプリングの特性変更だけに留まらず、さらに大きな変更が加えられています。
ダンパーの取付けポイントが外側に移設されレバー比が改善されています。ダブルウィッシュボーンもしくはこれに類するマルチリンク式の場合、ダンパーの取付けポイントが内側にあると、レバー比が小さくなります。タイヤの動きに対して、ダンパーの動きが小さくなるので、細かい動きに対する追従性が悪くなります。そこで、今回この取付けポイントを5mm外側に移設しました。
これに合わせて、スタビライザーリンクの取付点も変更されていて、作動効率の改善が図られています。トレーリングリンクのブッシュが強化され、アライメントはトーインをほぼゼロに変更しています。 もちろん、効果はあるでしょう。しかし、変更が及ぶ部品点数はかなりの数になります。マイナーチェンジでここまでコストを掛けるのは、異例中の異例です。
サスペンションは、エンジンやミッションと違って劇的に進化することはありません。地道な改良を続けることが肝要です。スバルは、コストを度外視しても自らに課した目標(際立った魅力を持ったブランドへの進化)を達すべく、ここまで大規模なマイナーチェンジに踏み切ったのです。
駆動系の改善で燃費改善。
NA2Lの「FB20」にはいくつか改善が施され、燃費性能の向上が図られています。CVT車では16.0km/L(JC08モード)へと向上し、4月から厳しくなったエコカー減税に対応しています。
2LNAの「FB20」搭載モデルでは、EGRクーラーを新たに採用してガス導入率を向上、燃焼効率を向上させています。また、ベルトレイアウトの変更や摺動部の表面処理の変更など細かな改良が行われた他、リニアトロニックにも細かな改良が施されており、ドライバビリティと燃費の向上を図っています。
「FA20DIT」を搭載するターボモデルでは、「アクティブ・トルク・ベクタリング」が新たに採用されています。イン側へ配分されるトルクを、イン側の前後輪にブレーキを掛けることでアウト側よりも相対的に小さくして、ヨーモーメントをプラスします。リニアトロニックも改良されていて、先に「フォレスター tS」で採用された、クロスレシオ化された8段ステップ変速とする制御(「S#」モードのみ)に変更されています。
静粛性の向上のため、フロントガラス、フロントドアガラスを3.5mmから4.0mmへ、リヤドアガラスでは3.1mmから3.5mmへと板厚がアップされており、静粛性の向上を図っています。これに伴って、パワーウィンドウモーターやモール、シールなどが変更となり、ガラスからの透過音が大幅に削減されています。
アンダーカバーの変更によって空気抵抗の低減を図っている他、リヤホイールエプロンの板厚変更によって静粛性の向上も図っています。
走ると分かる、ビッグマイナーの意義。
前期型フォレスターは強いフラットライド感が特徴で、懐深い優しい乗り味が魅力でした。一方で、接地感は少々不足気味でした。もちろん、前期型でも充分に優れていたのですが、スバルのエンジニア達は数多くの要改良箇所を見出していたのです。
後期型にドライブしてまず驚くのは、格段にレベルアップした高い静粛性です。これだけでも、ワンクラスステップアップした様に感じられるほど。ただ静かになっただけでは外界と間隔が隔絶されてしまいますが、そんなことは杞憂に終わりました。足廻りの精度が増したお陰で、路面からのインフォメーションがありありと感じられるようになったのです。ノイズはカット、サウンドとインフォメーションはしっかり伝える、という基本に根ざした改良が施されています。
ここで、一般的なSUVのコーナリングを思い浮かべてみましょう。ブレーキングでは、前にツンのめるような不安定なピッチング。ここでブレーキを抜くと、ポンっと荷重が抜けてしまいます。ターンインするとよろめくように深くロール、アクセルを踏むとダラーっとアウトに流れていく・・・。コーナリングのリズムが掴めません。大袈裟な・・と思われがちですが、実際にはこんな走りのSUVが多いのも事実です。
後期型フォレスターでは、ブレーキングしてフロントに荷重を掛けターンイン、クリッピングでアクセルオン。アウト側にグッと荷重を掛けながら、キレイに立ち上がっていく・・・この一連の流れが非常にスムーズに繋がるようになりました。ピッチングにしろ、ロールにしろ、荷重が掛かるとスクワットするように力強く沈み込んでいくので、その間の挙動が安定します。その先の挙動が予想できるので、不安感がないのです。これなら、安心してコーナリングをすることが可能。
動的質感のキーワードを掲げて以来、「乗り心地」が明らかな進化を遂げていることはここで繰り返し記事にして参りました。このフォレスターでも、同じような劇的な進化が感じられます。高速道路の継ぎ目をスタッスタッと軽快にいなしていきますし、大きめのアンジュレーションでも丁寧にタイヤが路面に追従するので、挙動は常に落ち着いています。それでいて、インフォメーションは充分。
後期型フォレスター、その走りはツーランクアップくらいの実力に進化したといっても過言ではありません。動的質感の追求から生まれた後期型フォレスター。その進化には、驚くばかりです。