新型インプレッサの素晴らしさを改めて考えてみた。 [2017年07月20日更新]
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登場から4ヶ月。新型インプレッサに乗って、あれこれ感じたこと。
今年3月に登場した和泉店の試乗車、インプレッサ SPORT 2.0i-S EyeSight。スバル渾身の力作である「スバル・グローバル・プラットフォーム(以下、SGP)」の威力は絶大で、秀逸な乗り心地と鮮烈なハンドリングを両立したそのパフォーマンスには驚かされっぱなしの毎日です。
今回は、使用開始から4ヶ月経過するにあたっての、新たなレポートをお届けします。
2.0i-Sは、A型では唯一「アクティブトルクベクタリング」を搭載するグレードであり、レヴォーグにも劣らないターンインの鮮やかさは、アクティブトルクベクタリングの威力です。特に、コーナーの立ち上がりでアクセルを深く踏み込んでいった時、ラインを外さずにキープしていく様は圧巻。正に、オンザレール。その気持ちよさは、「ファミリーカー」のレベルにはありません。
カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するキッカケとなった、気持ちいい走り。そのヒミツは、何処にあるのでしょうか。
新型インプレッサで、ドライブに出てみよう。
コクっと、しっかりとした手応えのドアノブを引いて、中に乗り込む。シートに身を沈めて、ドアを閉める。その瞬間から始まる、オドロキ。それは、引き締まった印象のドアの開閉音です。パンッと乾いた音が、実に頼もしく感じられす。
ドアの開閉音で、分かることがあります。それは、ボディの引き締まり具合(ボディ剛性)と室内の密閉性(静粛性)。ドンッとかボンッなど、こもった音はクルマ全体が共振しているので、ボディ剛性不足。ガチャっという音は剛性は良くても、密閉性が悪いので静粛性に欠けるかも知れません。バーンッなど、物凄い音がするのは建て付けが悪いので、もう論外。
新型インプレッサの乾いた音は、ボディ剛性と密閉性に優れている証です。ドアを閉めると、一気に訪れる静寂。コイツはデキが違う、そんな予感でウズウズしてきます。
乗った瞬間からはじまる、上質感とオドロキ。
室内を見回してみると、広がり感のあるダッシュボードが印象的です。センターコンソールから、両脇へ駆け上がるステッチ。そのラインはドアへ廻り込んでいきます。手が触れるトリムの殆どは、ソフトタイプ。爪で叩くと、コツコツ音がするような安物感は皆無。細部まで行き届いた仕立ての良さが、期待感を高めます。
ハンドル右手奥のイグニッションボタンをプッシュ、メータの指針がMAXまで振り切ると、エンジンが軽い音を立てて目覚めます。2.0L自然吸気のボクサーエンジンは、今回からヘッドが直噴化。室内ではまったくの静寂ですが、車外に出れば微かながら野太いサウンドが愉しめます。一時期、スバルは自らのサウンドを毛嫌いしていたのか、音は軽く、小さくなるばかり。コレくらいの方が、スバルらしくて好印象。
電動化されたパーキングを解除すると、ブレーキペダルに感触の変化が感じられます。いよいよ、セレクトレバーをDレンジに。振動はまったく感じられません。硬いフィールのブレーキペダルを緩めると、いよいよ新型インプレッサは歩みを始めます。
カチッとしたブレーキフィール。シームレスな加速感。
まず始めに印象深いのが、硬質なブレーキのフィーリング。遊びがなく、ストロークも小さい。慣れるまでは、カックンブレーキになってしまうかも知れません。でも、馴染んでくれば、指の繊細な動きで制動力が自在に制御可能。繊細で正確、かつ緻密で明瞭。ズブズブと奥にペダルが入るようなブレーキばかりの現在、精度の高いフィーリングは希少です。
通りに出て、スーッっと加速していきます。CVTらしく、その加速は実にスムーズ。シームレスな加速感で、キレイに速度に乗っていきます。自然吸気らしく、パワーは必要にして充分。驚くようなものではありません。トルクの出方は滑らかでスゴく扱いやすい、そんな印象です。でも、レヴォーグのように、エンジンに惚れて買うようなクルマでは無いのは確かです。
とにかく秀逸な乗り心地。クルマ好きなら一度乗る価値あり。
新型インプレッサを走らせて驚かされるのは、その乗り心地。道路工事跡やアンジュレーションなど、路面のありとあらゆる凹凸を軽やかにいなしていきます。ガツンッ、ドンッ、ガンッ、ドタンッ。上質さのカケラもない競合車が多い中、新型インプレッサは違います。スタスタと軽やかに、トタンッタタンッとリズミカルに乗り越えていきます。これこそが、新型インプレッサの魅力です。
乗り心地だけを考えれば、アチコチにゴムを挟み込んで、振動を遮断すればOK。でも、それは邪道というもの。ハンドリングが、クチャクチャになるかです。悲しいことに、そんなクルマばかりというのが今の自動車事情。
新型インプレッサは、振動を遮断するのはなく、しっかり足を動かしていきます。これは、並大抵の芸当ではありません。これだけ秀逸な乗り心地でありながら、ハンドリングは実にシャープ。新型インプレッサに最も驚かされるのは、その二面性です。
ボディ剛性とサスペンション剛性向上の効果。
新型インプレッサの走りのヒミツは、ボディ剛性とサスペンション剛性にあります。では、ボディ剛性とサスペンション剛性を高くすると、どんなメリットがあるのか見ていきましょう。
1.フロア共振
まず、ボディが強靭だと固有振動数は高くなります。共振点が高いと、フロア共振が減少します。段差を乗り越えた時、ボンッとかドタンッという音が足元からしますが、これがフロア共振です。路面からの突き上げに共振して、フロア自体がベコンと変形している時の音です。静粛性を損ねる上、上質感を著しく阻害します。
2.キシミ音
ボディ剛性が低いとボディ自体の歪みも大きくなりますから、ミシミシ、キシキシといった音が目立ちます。キシミ音はドライバーにボディを頼りなく思わせるので、不安感が大きくなるのです。ボディ剛性が高いとキシミ音が殆どないので、クルマを信頼して安心できますから、長距離ドライブでも疲れにくくなります。
3.高い接地感
カーブに高速で進入すると、ボディは微かでも確実にねじれます。アウト側前輪に荷重が集中するため、反力でボディがねじれるのです。そのねじれ変形が落ち着くまでタイヤの接地感が失われますから、左右の切り返しでは特に接地感が乏しくなります。ボディ剛性が高いと接地感が常にあるので、強い人馬一体感が生まれ、先をイメージして走れるようになります。運転が上手くなったように感じることもあります。
4.正確なタイヤ接地
突き上げのたびに、サスペンションを支えるボディが負けて歪んでいては、サスペンションがうまく動きません。もちろん、その取付点もグラついていけません。サスペンションがストロークする前に、サスペンション自体が歪んでしまうからです。ボディ剛性、サスペンション剛性が共に高ければ、タイヤを狙い通りに常に接地させられますので、精度の高いハンドリングを実現できます。微小舵角が遊びで死なずに正確にタイヤまで届くのも、大事なメリットです。
5.乗り心地
ボディ剛性とサスペンション剛性が低いと入力に対するボディの反応速度が遅くなります。高レベルのステアリング応答を目指すなら、剛性が低いほどサスペンションを硬く締め上げねばなりません。もちろん、タイヤやエンジンの性能が高いほど、要求されるボディ剛性も高くなります。逆に、ボディ剛性とサスペンション剛性が高ければサスペンションをさほど硬くしなくても良いのです。これは、乗り心地に大いにプラスです。
6.静粛性と上質感
剛性が高ければ、フロア共振や突き上げ、キシミ音も少ないので、静粛性は高くなります。ノイズの発生源も少ないので、音振対策も容易です。ハンドリングの正確性も高く安心感もあるので、上質なクルマに乗っている印象が強くなるのです。ゴムを挟んだだけのゴマカシ音振対策では、上質感までは作れません。
国産車の枠を超えて、徹底的にこだわったボディ剛性。
何よりも大切な、ボディ剛性ですが、向上させるにも常に制約が付きまといます。軽量化(=燃費向上)とコストダウン(=利益)とは、真っ向から逆行するからです。高級な高張力鋼板を拡大採用し、連続溶接と接着の部位を増やせば、軽量かつ高剛性に仕上がりますが、そう簡単にはいきません。特に、連続溶接は既存生産設備が使えなくなるため、制約が大きいのです。プレミアムブランドならまだしも、スバルではまだ導入障壁が大きいのが現状です。
そこで、SGPでは頑強なフレーム設計によってシャシー剛性を向上させるとともに、接着を多用することで、剛性を高く仕立てることにしました。フレームは前後に2本のフレームを通貫させて剛性の切れ目を解消した他、これを補助する4本のフレームを前後に配しています。サスペンションマウントも強化し、サスペンション剛性も大幅に向上させています。
また、サブフレームやサスペンション取付点への効果的な補強によって、サスペンションを含めた車体全体での剛性を高く確保しています。Aピラー根本とバルクヘッド頂点、ストラットタワーを結ぶパネルは、特に重点的に強化しています。コーナリングの精度を高めるだけでなく、衝突安全性の向上に極めて効果的だからです。