オレたちのスバルが向かう道。 [2017年09月04日更新]

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photo by SUBARU
オレたちのスバルの向かう道。
 
2017年9月4日 スバルは変わっていってしまうのか。

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

「オレたちのスバル」は何処に向かうのか?

スバルは、憧れのブランドでした。濃紺に彩られた、インプレッサが世界のラリーを席巻。ボクサー特有の低温で響く、独特のエキゾーストサウンド。刺激的なドライビングで、インプレッサを限界まで導くコリン・マクレーの天才的ドライビング。すべてが、生ける伝説でした。

WRCには、トヨタも三菱もいました。けれど、小生を夢中にさせたのはスバルでした。それは恐らく、巨大メーカーと巨大財閥に勇敢に立ち向かう、小さな勇者のように思えたからでしょう。でも、理由はそれだけではありません。ファンを惹き付ける「メカ」が、スバルにはありました。

スバルだけは、直4じゃないんだ。水平対向だから、低重心なんだ!!水平対向だから、低回転からトルクが太いんだ!!!そんなメカニカルな「ヒミツ」は、少年にはたまらないワクワクポイントでした。

 

伝説のエンジンを誰でも手にできる。それが、スバルの魅力だった。

スバルという個性を際だたせるのは「伝説のボクサーエンジン」を誰でも買えるという有り難さです。フェラーリV12やポルシェのフラット6に憧れたところで、庶民はどうにも手が届きません。でもスバルのボクサーターボは、誰でも買えたんです。スバルの伝説を、WRCの伝説を手にできる。憧れの車に、誰でも乗れる。だからこそ、スバルは貴重な存在でした。

トドのつまり、スバルの価値は最高のコストパフォーマンスにあります。

だからこそ、スバルは特別だったのです。いつの日か、ボクサーを手にしたユーザーは、いつの間にかスバルのサポーターとなり、そのうちファンとなっていきます。そして、こう思うのです。「一生、スバルします。」と。

スバルは、幾度も存続の危機を経験してきました。ディーラーで閑古鳥が鳴いた時もありました。そうした時も、熱いファンたちが支えてくれたらかこそ、今があるのです。

プレミアムブランドならまだしも、量販ブランドにも関わらず、スバルはずっと熱いファンに支えられ続けてきました。そういう意味で、スバルというメーカーは国内では稀有な存在です。

 

ブランドの価値を決めるのは、ファンの存在。

自動車は、原価だけでは価格が決まらない不思議な工業製品です。価格次第で、クルマの価値を自由に決められます。しかし、200万円の原価のクルマを400万円で販売するには、上乗せされる200万円分の「付加価値」の根拠と裏付けが必要です。それを保証するのが、ファンの存在です。

一般に、クルマの原価は分かりようがありません。でも、ファンならば、多少なりとも高くても買ってくれます。それは、ファンの付加価値に対する承諾です。

プレミアムブランドほど、その傾向は強くなります。価格競争を追わず、付加価値を追加して販売するプレミアムブランドは、それを認めてくれるファンの存在は必須なのです。しかし、オールドファン達は続々と「引退」していきます。ブランド価値を維持するには、常に新たなファンを増やし続けねばなりません。

手っ取り早いのが、モーターレーシングです。プレミアムブランドが、モーターレーシングに巨額を投じてきたのは、ファンを獲得するためです。ライバルメーカーに勝てば勝つだけ、ブランド価値を高めていけるのです。フェラーリも、ポルシェもそうしてブランド価値を築き上げてきました。

 

WRC活動の財産は技術ではなく、世界中に広がったファンの輪。

スバルは、自身の技術的特徴が持つ優位性を証明するために、WRCに挑みました。しかし、そこで得た一番大切なものは、技術的優位性の証明ではなく、世界中に広がった新しいファン層でした。WRCでファンになった人々の存在があったからこそ、スバルが2000年代の販売不調を乗り越えられたのは間違いありません。

ファンたちは決して浮気をせずに、スバルを乗り続けてきました。そして、次もまた必ずスバルを購入する。

それは、スバルという小規模メーカーにとって、何よりも素晴らしいことです。「付加価値」を理解して下さるファンがいれば、値引き競争に巻き込まれずに、高い利益率を維持できます。結果、強い経営体質を維持できるので、より大きな研究開発と設備投資が可能になり、企業価値が高まります。

近い将来訪れる、自動車技術の革新と少子化という時代の激流を乗り切るには、強い経営体質を生みだす確立されたブランド価値、つまりファンの存在が不可欠なのです。

 

自動車はステイタスだった。憧れだった。

「いつかはクラウン」に象徴されるように、かつて自動車は憧れの存在でした。そうした時代を生きてきた世代にとって、自動車そのものがステイタスでした。百貨店の外商の如く営業マンは応接間に通され、店頭には足を運ばずにハンコを押す。届いた新車は丁重に扱われ、土禁は当然で、毎週念入りに洗車をするのが当たり前でした。

こうした時代、各メーカーは絶対的な自動車哲学を持ってクルマ創りを行っていました。消費者動向に迎合するような事は決してなかったのです。

それが変わり始めたキッカケが「RVブーム」です。この時初めて、自動車が用途で選ばれるようになります。以後、メーカーは消費者動向を徹底的に分析し、需要を先取りしたモデルを乱発するようになります。メーカーはヒット作を求めて、我先にと自らの自動車哲学を放棄していきました。知らず知らずのうちに、メーカーは自らのブランド価値を下げていったのです。

メーカーは、創りたいクルマではなく、売れるクルマを作る。消費者は、憧れのクルマを無理して買うのではなく、用途を満たすクルマを安く買う。そんな時代に育った子供たちが、クルマに憧れることはないでしょう。「若者の車離れ」は当然の結末なのかも知れません。メーカーは、自らファンを失ったのです。

 

少子化社会で求められる、ファンの存在。

日本が少子化社会に突入するとなれば、企業経営をソフトランディングさせるためにファンは何よりも大切です。

アイドルに握手会をさせるという、AKBのビジネスモデルはその象徴でしょう。ファンとの結びつきを最大限に強化することで、ファンを魅了。固定ファンになってもらう戦略です。例えブームが去っても、固定ファンがいる限り、最低限の収益は確実に維持されます。

かつては、ファンを忌み嫌っていた鉄道業界も、手のひらを返すように昨今はファンイベントを積極利用しています。これも、利用者減少が間違いない鉄道業界のソフトランディング戦略の一環と見るべきでしょう。

対して、日本の自動車業界はどうでしょうか?ファンを魅了できているでしょうか。クルマを売るためのプロモーションは目に付きますが、ファンを魅了するための活動は不十分なように思えます。もし、メーカーがファンを失えば、利便性・経済性で売っていくより他ありません。平均購買価格は低くなり、収益性は悪化します。

このまままでは、日本の自動車は「付加価値」の根拠を失ってしまいます。便利なら安ければ、安いほうがイイ。価格破壊が始まり、終いにはカーシェアリング社会になってしまうでしょう。メーカーの利益率は極端に悪化。家電やスマホと同様に日本の自動車産業は縮退し、数多の人々が職を失うことでしょう。日本という国家からGDPの2割以上が消し飛ぶことになります。

スバルに限らず、すべての自動車メーカーが強力な経営を維持するには、憧れられる存在であるとともに、常にファンを魅了し続けねばならないのです。

 

常に技術最優先。それこそが、スバルの真の姿。

スバルというメーカーの歴史を一見すると、その哲学がコロコロ変わっている様に見えます。

中島飛行機を前身に持つスバルは、自動車産業進出にあたって「理想の自動車」を徹底的に追求しました。抜群の走行性、快適な利便性、家計に嬉しい経済性、そして、命を守る安全性。最初の答えは、軽自動車でした。昭和30年代前半、マイカーを所有するのは夢のまた夢でしたから、まず優先すべきは経済性だったのです。百瀬晋六が開発を主導した「大人4人が乗れる軽自動車」スバル360は商業的に大成功を納め、日本に一躍マイカー時代の到来を告げます。

以後、360時代のシンプル至上主義から、レオーネ時代の4WD志向へ転じ、WRC期の4WDターボ全盛期へ進んでいきます。そして、現在は世界最高の安全性の実現に取り組んでいます。スバルは、こうもコロコロと哲学が変わるメーカーなのでしょうか。

いいえ、違います。フルモノコック構造も、超軽量設計も、水平対向エンジンも、4WD技術も、ターボも、アイサイトも、すべては理想の自動車を目指す過程での通過点に過ぎません。スバルが徹頭徹尾一貫しているのは、常に「技術最優先」で徹底的に「こだわりのクルマ創り」をしてきたことです。時代が変わっても、その一点だけはずっと変わっていないのです。それこそが、スバルの真の姿です。

 

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