スバルが怒涛の追い上げを開始。巻き返しは成るか?2018年BTCC。 [2018年08月18日更新]
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序盤戦以降、不振に喘ぐスバル勢。浮上のキッカケを掴めるか。
第1ラウンドのブランズ・ハッチ、第2ラウンドのドニントンと、表彰台獲得はゼロ。前年度チャンピオンのアシュリー・サットンには厳しい序盤戦となりました。それでも、第3戦で4位、第6戦で6位とサットンは試合巧者ぶりを発揮。厳しい戦況ながらも、チャンピオンらしい戦いを繰り広げてきています。
ところが、第3ラウンドのスラクストン、第4ラウンドのオウルトンパークは、更に厳しい戦いを強いられたのです。
第3ラウンド「スラクストン」:英国随一の高速サーキットで大苦戦。
大戦中の1942年に飛行場として、建設されたスラクストン。「ノルマンディー上陸作戦(D-Day)」では、グライダーの発進基地として利用された歴史を持っています。戦後、飛行場は閉鎖。敷地を周回する道路が残され、サーキットとして利用されています。
ツイスティでアップダウンに富んだサーキットが多い、イギリス。その中にあって、スラクストンは300km/hに達する高速サーキットです。
BTCCは、ホンダやフォード、メルセデス等のFF勢と、スバル、BMWのFR勢が覇権を競っています。FR勢が特に有利なのは、低速コーナーからの脱出加速。となると、FR勢は高速サーキットは不得手なのは、自明。
予選ではFR勢で唯一、ターキントンのBMWが気を吐きます。ターキントンはレースでも絶好調。第7戦、第8戦で、2位。第9戦でも、5位を獲得。悲願のタイトル獲得を目指します。終始好調だったのは、やはりFF勢。マット・ニールのシビック、ジョシュ・クックのアストラ、モーガンのAクラスがそれぞれ優勝を飾っています。
サットンは、厳しい戦い。第7戦は、15位。第8戦は11位となるも、第9戦は何と20位。ランキングでも下位に低迷します。
第4ラウンド「オウルトンパーク」:更なる苦戦。ほとんどポイントも獲得出来ず。
起伏に富んだレイアウトが特徴の、オウルトンパーク。同じFRのBMW勢は、絶好調。にも関わらず、スバル勢は更なる苦戦を強いられます。
予選ではサットンが15位、プラトは何と29位!と、下位に沈みます。迎えた、第10戦。サットンは21位と、またしてもポイントさえ獲得出来ず。第11戦はプラトが20位で、サットンは23位。第12戦は、サットンが13位で貴重なポイントを獲得。ところが、プラトはリタイヤに終わります。
このラウンド、上位争いはBMW、ホンダ、フォードで展開されました。第10戦は、プライベータのシビックを駆るマット・シンプソンが優勝、チルトンのフォーカスが2位、ジョーダンのBMWが3位。ターキントンはしぶとく6位を獲得しています。
第11戦は、好調のワークスBMWを駆るターキントンが優勝。マット・ニールが2位を獲得しています。第12戦は、何とBMWが表彰台を独占。コラードが優勝、ジョーダンが2位、ターキントンは3位に終わります。
ターキントンとニールは、安定した上位入賞でランキング上位をキープ。追いかけるサットンには、厳しい中盤戦となります。
第5ラウンド「クロフト」:サットンが遂に覚醒!2連勝を飾る。
狭く回り込んだタイトコーナーとシケインが特徴のクロフトサーキット。ここで、サットンは一気に覚醒を果たします。予選で、サットンがPPを獲得。チームメイトのプラトも2位。スバル勢は、一気呵成にクロフトを制圧するのでした。
第13戦、スタートダッシュに勝るサットンはトップをキープして、1コーナー。ハイペースで、後続を引き離しに掛かります。一方のプラトは、BMWのジョーダンに先を越されますが、11周目にこれをパス。1-2フォーメーションをキープしたスバル勢は、そのままフィニッシュ。見事に1-2フィニッシュを飾ります。ジョーダンは、その後コースアウト・スピンを喫して後退。3位を獲得したのは、トヨタ・アヴェンシスのトム・イングラムでした。
第14戦、フロントローからスタートのスバル勢。ダッシュに失敗したサットンは、イングラムとプラトに挟まれる厳しい1コーナー。ここで、何とか2位をキープ。すると、2周目の最終コーナーで、早くも先行するイングラムをパス。サットンは、そのままチェッカーまで駆け抜けます。対するプラトは、フライングの判定が下り、14位でのチェッカー。2位を獲得したのは、ターキントンの猛追を凌いだイングラム。3位は、ターキントンが獲得します。
リバースグリッドとなる、第15戦。スタートからダニエル・ロイドのシビックが好調。後続を引き離して、危なげなく優勝を飾ります。2位と3位は、接近戦。途中、チルトンがプロクターを引き離すものの、終盤はこれに追いすがりますが、逃げ切ったのはチルトン。表彰台は、以上3台が獲得します。3位以降は混戦。ニール、ターキントン、サットン、ジョーダンと4台が異常な接近戦。4位を死守するニールに対し、8周目の最終コーナーでインにねじ込んだサットンがパス!しかし、続く1コーナーでニールが鋭くインを刺すと、ヒット!敢え無くダートに飛び出したサットンが、戻ったのはジョーダンの後ろ。激しい攻防の末、何とかジョーダンをパスするも、それで精一杯。
第6ラウンド「スネッタートン」:第2レースで優勝するも、第3レースは20位に終わる。
コンパクトに曲がりこんだインフィールドセクションを有する、スネッタートン。レイアウトからして、FRが優勢と予想されます。このレースは、BTCC60周年を記念した「ダイヤモンド・ダブル」として、第3レースが独立した予選を行う、ロングディスタンスレースとして開催されます。サットンのレヴォーグは、異様なモノトーンのスペシャルカラーリングが施されています。
第16戦は、ヘッドライトが鮮やかに輝くヘビーウェットコンディション。サットンは、9番手グリットからFRのトラクションを生かして、猛然とダッシュ。1コーナーでは4番手にジャンプアップ。さらに、クックのアストラと、カミッシュのシビックを次々にパス。1周もせずに、何と2番手へと浮上します!トップを走るのは、今年からシビックをドライブするジャック・ゴフ。一旦は水を開けられたサットンですが、終盤にはピッタリと肉薄。ファイナルラップは、バンパーtoバンパーの激しいトップ争いとなります。猛然とプッシュするサットンは、終盤タイヤが厳しくなったゴフをアウトから並びかけて、一旦はパス。しかし、ゴフも食い下がり、最終コーナーの立ち上がり並ぶようにコントロールラインに駆け込む、2台。辛うじて先にチェッカーを受けたのは、残念がらゴフの方。サットンは2位、カミッシュが3位を獲得しています。
第17戦、ゴフは何とピットスタート。サットンは難なくトップをキープして、レースはスタート。8周目に2番手カミッシュがコースオフすると、リードは盤石。途中、セーフティカーが入り、リードが帳消しに!残り2周で、レース再開。カミッシュをパスしたクックは、勢いを駆って猛然とサットンに迫ります。サットンは、これを退け優勝。シーズン3勝目を挙げます。2位は、クック。3位にはイングラムが入りました。
この日の最終第18戦は、20周の長丁場。15位からのスタートとなったサットンは、猛烈な中盤争いに巻き込まれてしまいます。しかも、サットンには30秒のストップアンドゴーペナルティ!3周目のクラッシュでセーフティカー導入となったタイミングで、ペナルティを消化します。しかし、トップは遥か彼方。優勝は、マット・ニール。2位にゴフ、3位はイングラム。サットンは最後方20位に終わりました。
第7ラウンド「ロッキンガム」:第2レースでシーズン4勝目を挙げるも、第3レースで再び奮わず。
ロッキンガムサーキットは、2001年にアメリカンモータースポーツを英国で開催すべく建設された、オーバルサーキットです。ただ、日本のもてぎ同様に、オーバルコースは今や使用されておらず、ロードコースのみでレースイベントを開催しています。
ロードコースは、FRに有利なストップアンドゴーサーキット。ただ、長いストレートではハンデに勝るFFが優勢となるレイアウトです。
予選PPは、メルセデスAクラスのアダム・モーガン。はっきりとFF勢が優勢で、上位8位までを占拠。FR勢のスバル・レヴォーグは9位、10位、BMWは11位、12位となっています。
第19戦、スタート直後の1コーナーでトルドフのフォーカスが、カミッシュに突付かれハーフスピン!殺到するマシンで、多重クラッシュが発生。早くもセーフティカーが導入されます。スタードダッシュを決めたサットンは、この混乱に乗じて、早くも3番手に浮上。一方のプラトは降り始めた雨でコースアウト。大きく順位を落とします。トップ独走は、モーガンのメルセデス。2番手のチルトンを追っていくサットンは、13周目にやっとパスして、2位を獲得。チルトンは、辛くも3位を守りきります。
第20戦、ダッシュを決めた2番手スタートのサットンは、早くもモーガンの前に出てトップをダッシュ。セーフティカー導入にもめげず、サットンとモーガンは後続を引き離していきます。驚きは、第1レースでリタイヤしたトム・イングラム。最後尾スタートながら混乱をくぐり抜け、1台ずつパスを重ね、残り5周の時点では、何と5番手に進出!16週目には、4番手。更に先行するプロクターに迫ります。プロクターはタイヤが厳しく、18周目の最終コーナーでミス!イングラムは、安々と3番手を奪取。サットンは、シーズン4勝目。モーガンが続き、イングラムが奇跡的な3位表彰台を獲得します。
第21戦、PPからスタートのチルトンは蹴り出し良くトップで2コーナーのヘアピンに進入。しかし、気を焦ったのか、ここで大迷惑なハーフスピン!2番手で侵入したシンプソンのシビックは、スピンさせて辛くもクラッシュを免れるも、後続は大混乱。イングラムに追突しかけたサットンは、自らコースアウト。一気に最後方に転落します。ここで強さを見せたのが、ターキントン。この処、上位にコンスタントに入賞し、ランキングでイングラムを追うターキントンは、ここでも2位を獲得。一気にランキングトップに躍り出ます。イングラムは、踏みとどまっての5位。このレース、優勝はプライベータのシビックを駆るスマイリー。サットンは、17位がやっとでした。
2018年、シーズン残り3ラウンドの展望。
サットンは、昨年同様に中盤戦に本領発揮。一気に、シーズン最多勝の4勝を挙げて、ランキングでも3番手に急浮上。序盤戦には、トップ10圏外だったことを考えれば、サットンの強さは恐ろしいほどです。
トップのターキントンとは32pt、2位のイングラムとは28ptの差。1位のポイントが20ptですから、まだまだ逆転は不可能ではないでしょう。ただ、ターキントンとイングラムは、とにかく手堅いドライバー。余程のことが無い限り、下位に沈むことはありません。第3レースに滅法弱いサットンには、厳しい相手でしょう。
サットンと4位以降は接近していますが、浮き沈みの激しいドライバーが多く、タイトル争いは実質的に3名に絞られたと言えるでしょう。
この先3ラウンドは、FF勢に有利なサーキットが続きます。となると、イングラムに分がありますが、予選が最大の弱点。これが響いて、第1レースでは苦戦を強いられています。これに対し、ターキントンはどのサーキットでも、どのレースでも、いつでも満遍なく速いのが、持ち味。となると、ターキントンがチャンピオン最右翼でしょう。
サットンは、これから一つもレースを落とすことは出来ません。少なくとも、2人の前でゴールし続けねばならないのです。厳しい戦いですが、残り3ラウンドに期待しましょう!