マツダは、伝統のデイトナを制するのか? [2019年01月08日更新]
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マツダが、伝統のデイトナ24時間優勝最右翼に躍り出る。
筋金入りのモータースポーツファンならば、「1-2-3フィニッシュ」などと言わず、「デイトナフィニッシュ」と言うはず。ロレックス・デイトナ欲しい!と言う人を見かけらたら、その由来を3時間はたっぷり語ってやるはず。はたまた24時間レースと言えば、「ルマン・スパ・ニュルブルクリンクだよね」と言うスバルファンを、たっぷり5時間は説教するかも知れません。人によっては、デイル・アーンハートの伝説を1人語って、嗚咽が止まらなくなるかも知れません。
デイトナ・インターナショナル・スピードウェイは世界有数のモータースポーツの聖地であり、1959年に開設された米国でも歴史あるオーバルトラックです。ここで開催されるのが世界三大耐久レースの一つ、デイトナ24時間レースです。
2019年1月26〜27に開催される、この24時間レースの最右翼に挙げられているのが、何を隠そう、あのマツダなのです。今回は、伝統あるデイトナ24時間レースに迫ってみましょう。
フォードvsフェラーリ。互いのプライドを賭けた、全面衝突に始まるその歴史。
初開催は、1966年。世界スポーツカー選手権の開幕戦として開催されました。第1回の勝者は、フォード・GT40MkII。シェルビー製の7.0LV8を搭載するバケモノマシンが、栄光の第一歩を記しています。当時は、フェラーリvsフォードの全面対決の時代。エンツォ・フェラーリに買収話を蹴飛ばされ、頭に来たヘンリー・フォードII世が「フェラーリを叩き潰せ!!」と厳命したことに始まる、両者絶対に負けられない闘いを繰り広げていたのです。この年、フォードは遂にルマンでフェラーリ打倒を果たし、シリーズタイトルを獲得しています。(なお、このルマンでのフィニッシュに一騒動があったのですが、それはまた別の機会に。。。)
翌年の第2回、優勝はフェラーリ・330P4。世界でもっとも美しいとされる自動車です。フェラーリは、前年のルマンでの屈辱を晴らすべく、3台のマシンを並べてチェッカーを受ける派手なシーンを演出。フォードの鼻っ柱を折る屈辱のシーンを展開し、この姿を「デイトナ・フィニッシュ」と呼んだのです。この年のルマンでは、フォードが連勝。シリーズは、フェラーリが獲得しています。
1968年、FIAはスポーツカー選手権から3000cc以上のプロトタイプカーの除外を決定。これに激怒したエンツォは、直ちに撤退を厳命。以後、フェラーリは財政難もあり、F1に専念していくことになります。こうして、時代はフォードvsポルシェへと移っていきます。
1992年、デイトナを日産ワークスが完全制圧。
デイトナ24時間が、世界スポーツカー選手権であったのは1975年まで。この頃は、石油危機でそれどころではなく、1972年のみは6時間レースとして開催されたものの、1974年は中止となっています。以後、デイトナ24時間はIMSAという米国国内選手権の1戦として開催されるようになります。
デイトナ24時間が再び注目を集めたのは、1980年代のこと。グループCとほぼ共通規定のIMSA-GTP規定が用意されたことで、日米欧共通のマシンで覇を争うことが可能になったからでした。TWRジャガーは、いち早く参戦を開始。現地の手練のポルシェ・プライベータと激戦を繰り広げました。
そして、1992年2月1日。日本勢が唯一の勝利を挙げるのです。
1991年当時、日本国内のスポーツカー選手権JSPCで、トヨタ勢を完全に圧倒していた日産R91CPは、当時最強と呼ばれていたザウバーメルセデスC11に唯一勝負できるマシンと目されていました。ところが、彼らはバルブ崩壊による経営危機により、ルマン参戦を急遽中止してしまいます。(当時は、湾岸戦争による政情不安を理由としていた。)こうして、彼らは千載一遇のチャンスを逃すことになるのです。
そこで、日産ワークスは1992年冬の渡米を決断。日本から現れた「黒船」は、地元勢を完全に圧倒。星野一義/長谷見昌弘/鈴木利夫が駆るR91CPは、2位のジャガーに9周差を付ける圧勝を飾ったのです。
長らく、米国のスポーツカー選手権にチャレンジしてきたマツダ。
マツダは、長らくIMSAに参戦し続けてきました。1979年に、IMSA-GTUクラスにRX-7で参戦を開始。早くも、デイトナでクラス1-2フィニッシュを飾り、この年のシリーズタイトルも獲得。以後、7年連続でクラスタイトルを獲得しています。この後、1990年代前半までIMSAで活躍を続けます。
実は、1991年にルマンに優勝したときも、クラスはIMSA-GTPでした。この時、IMSA-GTPで参戦したのが、MAZDA SPEEDのみだったため、830kgという超優遇規定の獲得に成功。170kgのアドバンテージを利用して、メルセデスを下したのです。
1992年を以て、深刻な経営危機に直面したマツダは日欧のスポーツカー選手権から撤退。北米のIMSAでは、1年だけ活動を継続したものの、これもワークス活動を終了。以後は、プライベータが参戦を継続します。
ロブ・ダイソンが1974年に設立したダイソンレーシングは、米国の名門レーシングチームです。彼らは、それまでセミワークスのポルシェRSスパイダーを走らせていたものの、2008年で終了。次に彼らがパートナーに選んだのが、マツダでした。ダイソンは、ローラのシャシーにマツダ製エンジンを搭載したマシンでアメリカン・ルマン・シリーズにチャレンジしますが、マツダが用意できたエンジンがたった2Lの直4ターボだったため、彼らは相当に苦労を強いられることになります。2009年以降、彼らは善戦するものの、その活躍には限界がありました。
2014年以降、マツダのジョイント先はスピードソースに移行します。そのカラーは、マツダ独自のソウルレッドに改められますが、苦戦は続いたのです。
世界最強のプライベータチームと、マツダがタッグを組む。
2017年、驚きのニュースが報じられます。マツダが新たに提携先に選んだのは、何と世界最強のプライベータであるチーム・ヨーストだったのです。このニュースが報じられると、直ちに2017年シーズン中盤に参戦を中止。2018年に向けて、早くもテストを開始したのです。
チーム・ヨーストは、1978年にラインホルト・ヨーストによって設立されたレーシングチームです。ポルシェのワークスドライバーであったヨーストは、何と打倒ワークスを果たすべく無謀とも思えるチャレンジを開始します。
1980年、ヨーストはポルシェ935でデイトナ24時間に優勝。そして、1984年にはワークス不在のルマンで初優勝。翌年、ヨーストはライバルのRLRと密約を結び、互いのスリップストリームを使って燃費を稼ぐアイデアを実行。最後には、これを振り切って、ワークス打倒を果たします。
以後、ヨーストはポルシェの隠れワークスの立場を確立。その契約が終了した1999年以降は、アウディスポーツのワークスチームとして活動。2回の4連勝を含む、ルマン合計13勝を挙げています。日本のチーム・ゴウが優勝した2004年も彼らをサポートしており、これを含めれば14勝となります。
しかも、その優勝回数13は、何とポルシェワークスの12勝を上回って、史上最多を誇っています。
アウディスポーツは、2016年を以て世界選手権から撤退。そのヨーストが、次のパートナーに選んだのがマツダでした。
DPiを頂点として争われる、ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ。
現在、デイトナ24時間を含むウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップは、4クラスで競われています。もっとも台数が多いのが、日本のSuperGTやニュルブルクリンク24時間でお馴染みのFIA-GT3。そして、GTクラスの頂点を競うのが、ルマンやWECと共通のLM-GTEです。こちらにはポルシェ、シボレー、フォード、BMWのワークスチームがエントリーしています。プロトタイプは、2クラス。WECと共通のLMP2クラスと、米国オリジナルのデイトナプロトタイプ・インターナショナル(DPi)が存在します。
DPiは、WEC等で使用されるLMP2のシャシーをベースに、メーカー開発のエンジンとカウルを組み合わせたものです。安価で高いポテンシャルを誇るのが、特徴です。もちろん、トヨタのTS050とは比べるべくもありませんが、LMP2よりも確実に高いポテンシャルを有しています。各レースの総合優勝は、基本的にDPiによって争われますが、荒れたレースではLMP2も侮ることはできません。
現時点でもっとも有力なのは、キャデラックDPi-V.R。ダラーラ製シャシーをベースに、6.2LV8エンジンを搭載。2018年シーズンを制しています。
マツダ・チーム・ヨーストは、ライリー&スコット製シャシーをベースにしたRT24-Pを用意。2018年は、最高位2位を得るなど、次第にポテンシャルを発揮しつつあります。
マツダ・チーム・ヨースト、遂に本領発揮。テストセッションを1−2フィニッシュ。
迎えた2019年。新年早々に開始されたデイトナ24時間のテストセッション。ここで、いち早くポテンシャルを見せたのが、マツダ・チーム・ヨーストでした。各セッションでトップタイムをマーク。最終セッションでは、1秒近い差を付けての1−2と、早くも優勝最右翼の前評判を獲得しています。
ただ、2018年優勝のキャデラック10号車は、フェルナンド・アロンソと小林可夢偉の最強コンビを助っ人起用。最強のドライバーラインナップで、こちらは虎視眈々と連勝を狙っています。
2019年、デイトナ24時間本戦まであと3週間。マツダは、ルマンに続いてデイトナ24時間を制することができるのでしょうか?その闘いぶりが注目されます。