令和〜新たな時代を迎える、自動車業界の展望。〜 [2019年04月04日更新]
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「愛」を付けて呼ぶ唯一の機械製品、自動車という存在。
自動車というものは、実に不思議な消費財です。豊田章男氏が言うように唯一「愛」を付けて呼ぶ機械製品なのでしょうし、手放す時にあれだけ心が痛むのも自動車だけでしょう。
機械製品は、元来無機質なものの象徴です。しかし、自動車は違います。かつての愛車を思い浮かべ、共に過ごした歳月を振り返るとき、その内外で起きた悲喜こもごもが、まるで走馬灯のように蘇ってきます。嬉しかったこと、楽しかったこと、辛かったこと、人知れず泣いたこと。それを包み込んでくれる自動車には、母性さえ感じることもあるかも知れません。この点に於いて、自動車はより密接に人生に関わり得るものなのでしょう。
ずっと、人々と深く関わり続けてきた自動車という存在。それは、令和という新たな時代にどんな変遷を遂げていくのでしょうか。
CASEは、すべてのメーカーにマストではない。
次なる自動車産業を牽引するキーワードとして、CASE(Connectivity:つながる化、Autonomous:自動運転、Shared:カーシェア、Electric:電動化)が掲げられています。万が一、このCASEに乗り遅れたなら、熾烈な競争からふるい落とされ、敗者となる可能性があります。しかし、CASEのすべてが全て、必須という訳でもありません。
例えば、フェラーリにはSharedはそもそも必要はありませんし、自動運転技術を導入しなかったとしても、業績に影響はないでしょう。そう、自動車メーカーは各々のブランド戦略に応じて、CASEに対する考え方が異なるはずなのです。
ですから、トヨタやVW、フォード、GMといった巨大メーカーと、スバルやBMW、PSAといった中規模メーカーでは、CASEに対する取り組み方は自ずと異なるはずです。巨大メーカーは都市インフラとしての次世代自動車システムの受注に必死になるでしょうが、中規模メーカーはそこに勝負を掛けるのは得策ではありません。中規模メーカーは、当面の生存こそが最大の課題であって、急成長を遂げて巨大メーカーに打ち勝つ必然性がないからです。
巨大メーカーはデファクトスタンダードを目指し、中規模メーカーは選択と集中を図らざるを得ない。
中規模メーカーにとって直近の課題は「選択と集中」です。自らのブランドをより濃厚に育て、差別化をより意識していくことになるでしょう。そのブランド戦略を軸に、CASEを選択的に導入していくことになるはずです。つまり、巨大メーカーとの包括的な提携が不可欠となるでしょう。
一方、巨大メーカーは幅広く中規模メーカーの賛同を募ることで、デファクトスタンダードとなることを目指すでしょう。中規模メーカーに対して太っ腹に門戸を開き、自社の特許や技術の使用を大いに促進するはずです。
トヨタが、トヨタ・ガーディアンと呼ばれる自動運転システムと、HVに関する技術と特許を公開したのも、この流れに合致しています。味方を増やすことで主導権を握るとともに、業界全体が疲弊するような過度の技術競争を緩め、自動車業界を安定的に成長するよう導く狙いがあると思われます。
勝者総取りとなる、自動車インフラシステム開発競争に潜む危険性。
CASEに関する技術的課題を解決するには、途方もない予算が必要です。巨大メーカー1社でも、安易に単独開発に踏み切るのは危険な賭けとなるでしょう。PC用OSがWindowsとMacのみに集約されたように、当初は4〜5あったシステムが何れは淘汰されて、莫大な投資が将来的に水泡に帰す可能性も相当にあるのです。敗者に待ち受ける逆境は、想像を絶するものとなるでしょう。
例えば、ロサンゼルスで都市規模のカーシェアリング+自動運転システムの競争入札があったとしましょう。巨大メーカーは勝利を目指して、巨大インフラの構築に向けた技術開発とこれに伴う投資を行うことになります。しかし、勝者はたった1社に過ぎません。敗者の投資は全てとはならずとも、その多くは無駄になるでしょう。
つまり、CASEのように全世界的な広がりを持つシステムに於いては、「勝者総取り」となる可能性が非常に高いのです。もちろん、誰が勝者となり、誰が敗北を喫するのか。それは、誰にもわかりません。何しろ、Windowsが誕生した当初、それがMacより優れていると思う人は誰もいなかったのですから。
自動車メーカーはIT系企業に頼らざるを得ず、弱みを握られる。
一方で、自動車メーカーがもっとも恐れるのが、他業種からの参入による秩序の破壊です。Google、Microsoft、Apple、Intel、NVIDIA、Uber、百度など、IT系企業が自動車産業の安定的利権の奪取を虎視眈々と狙っています。もしかすると、近うちにこれら企業に買収されて、その切っ先となるメーカーが現れるかも知れません。
ただ、AI分野やネットワークセキュリティといった分野を、自動車メーカー単独で開拓するのは絵空事。IT系企業との提携は不可欠です。場合によっては、IT系企業が次々に自動車システムから脆弱性を明らかにしては、揺さぶりを掛けるようなこともあり得ます。
そうなると、自動車メーカーは表面上は熾烈な競争を演じつつも、その背後で連携を強めていき、新興勢力に対しての抵抗を始めるはずです。ある段階に至ると、自動車メーカー全体が強く連帯し、IT系企業からの支援を断つことを望むはずです。ただ、これは世界全体にとっても歓迎すべきことです。
IT系企業の利益還元は極めて狭くなりがちで、自動車産業のように数百万人単位の雇用を生み出したりはしません。IT系企業のCEOは数兆円の利益を我が物としますが、自動車メーカーではそれは広く労働者に配分され数千万の家族を支えるでしょう。
IT系企業が自動車業界への殴り込みを止めたのは、なぜか。
アメリカの大統領選やイギリスのEU脱退を見ても分かるように、自動車産業は国家経済にとって極めて重要な産業です。これが失われれば数十万の人々が職を失い、時の政権は途端に支持を失うことでしょう。そのため、自動車産業の裾野が急に狭くなるような、急速な変化は許されないはずです。
自動車産業が、これだけ広大な裾野を有しているのは、各技術に於ける専門性が極めて高いからです。一時的に、自動車業界への参入を目指したIT系企業が、一気に沙汰止みとなったのは、参入に際してのハードルが高過ぎるからです。
自動車というものは、開発すれば終わりではなく、それを大量に生産し、輸出して各国の認証を受け、その上で広く販売を行い、さらに生涯に渡ってメンテナンスする体制を構築せねばなりません。そして、その全てで顧客の満足を得なければ、途端に売り飛ばされて、評判はガタ落ちとなります。
自動車産業では、その全ての過程にスペシャリストが必要です。だからこそ、自動車産業は巨大な裾野を持つ産業として維持されてきたのです。
自分たちは開発だけとして、生産も、販売も、アフターサービスも全てを外注に丸投げできる業種とは、そもそも異なるのです。だからこそ、AppleやGoogleは自社ブランド自動車の開発を停止し、ソフトウェア供給へと舵を切ったのでしょう。巨大な権益を手にできなくとも、一定の収入を安定して得られるならばそれで良し、ということです。
メガサプライヤーをバックに、欧米で技術の寡占化を狙う周到なドイツの国家戦略。
2000年代、自動車産業は急速にグローバル化が進みました。その流れは、欧州に於いては特に顕著でした。サプライヤーは国境を越えて合併を繰り返し、巨大メーカーに匹敵するメガサプライヤーに成長。最早、作らないのは車体だけ。そんな、メガサプライヤーが業界を占拠しています。
開発の外注化も進んでいます。未だに、新型車の開発は社内で行っていると考える方は多いと思いますが、それは四半世紀も前の話。今や、新車開発のほとんどは外部の受託開発会社に丸投げで、社内開発は基幹車種のみ。薄味のクルマが増えるのも、当然かも知れません。
ドイツは、この流れを逆手に取った国家戦略を展開しています。ボッシュ、コンチネンタル、ZFなど在独のメガサプライヤーが統一的な戦略で技術開発と技術展開を進めることで、EVの高圧充電規格や、48Vマイルドハイブリッドシステム、自動運転分野など、それぞれの領域でデファクトスタンダードの座を手にしようとしているのです。
イタリアやフランス、アメリカの他、中国、韓国等の自動車メーカーは、CASE時代に対応するにはメガサプライヤーを頼らざるを得ないのですから、ドイツの国家戦略は見事と言う他ありません。これは、ある意味でグローバル化に逆行する流れだと言えるでしょう。
逆に言えば、イタリアやフランス、アメリカのメーカーの立場は相当に厳しいものとなるでしょう。強いグローバル化と外注化の流れに乗ってしまったばっかりに、ドイツの国家戦略に協力せざるを得なくなっているのです。