新たなる令和の時代。スバルは、生き残れるのか。 [2019年04月08日更新]
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比較的順調だった、平成の時代。令和の時代、スバルはどうなる。
新たなる令和の時代。スバルに待ち受けるものは何か。
間もなく終わりを告げる、平成の時代。スバルにとっては、比較的順調な時代だったと総括できるでしょう。
初代レガシィの奇跡的なヒットにより、存続さえ危ぶまれた苦境からの脱出。技術的個性を武器にバブル崩壊後の厳しい時期を堅調に乗り切ると、平成後期は米国市場が右肩上がりの絶好調。一気に100万台体制へと、勇躍成長を遂げました。この頃のスバルは飛ぶ鳥を落とす勢い。アイサイトは世界に衝撃を与え、利益率は世界屈指と言われていました。
ところが、好事魔多し。安全性能を個性の1丁目1番地に据えていた処に、検査不正等のリコールを連発。これが、連日報道されると、国内販売は一気に退潮。
この逆境を脱出できぬまま、新たな時代を迎えようとしています。
自動車業界に様々な変革が想定される、新たな令和の時代。我らがスバルの運命は、如何なるものとなるでしょうか。マクロ的視点から予測してみましょう。
トヨタからの資本を受入れつつ、独立を貫くスバル。
東洋随一の規模を誇る巨大航空機メーカーであった中島飛行機を前身に持ちつつ、今は中規模自動車メーカーとして世界で広く親しまれているスバル。トヨタが16.82%の株式を保有するものの、依然として独立系自動車メーカーの立場を貫いています。
平成期に鉄道車両、産業機器、大型車ボデー架装の各事業を売却して、事業の選択と集中を図っており、現在では自動車部門と航空宇宙部門の2つを残すのみとなっています。航空宇宙部門は、回転翼機の完成機生産を行うと共に、ボーイングを中心とする固定翼機のサプライヤーとして確固たる地位を築いています。
自動車部門は、2012年に軽自動車生産から撤退した代わりに、トヨタと共同開発した86/BRZの生産を開始。一方、GM傘下にあった1987年にいすゞと合弁で設立したSIA(米国インディアナ州の生産拠点)は、2003年にはスバル単独出資へと転換。2007年からトヨタ・カムリの受託生産を行いつつ、スバルの米国販売が堅調になった2016年以降は、スバルの現地生産拠点としてレガシィ、インプレッサ、アセントの生産を開始しています。
また、絶好調の最中にあった2017年4月1日には、ブランド戦略上の観点から、会社名を富士「重工業」からSUBARUへと商号を変更。しかし、社名変更と共に運も逃げたのか、SUBARUになって以後は余り良いニュースがない、というのが偽らざるスバルの現状です。
技術的先進性が失われれば、中規模メーカーの存在意義が失われる。
中長期的視点で自動車産業の未来を想像するとき、もっとも存続が危ぶまれるのが、中規模メーカーです。この先控えるCASEの時代、自動車の個性は薄まることはあっても、濃くなることありません。
中規模メーカーは、時に個性的技術や先進性を話題にしてブランドイメージを創出してきました。スバル、BMW、マツダ、プジョー、シトロエン等々、いつの時代も中規模メーカーは技術的個性のカタマリでした。若手タレントが必死に番組で爪痕を残そうとするように、中規模メーカーは個性をバンバンに発揮して人々の琴線に触れるよう努力してきたのです。
ところが、次なるCASE時代では、先進技術の開発には数千億円単位の莫大な投資が必要となります。技術的先進性を維持しようとしても、そんな投資を中規模メーカー1社で賄うことはできません。すると、巨大メーカーやメガサプライヤーに協力を頼らざるを得ないのですが、そうして導入したシステムに個性は望むべくもありません。
運転支援システム、超希薄燃焼技術、駆動用モータ、駆動用バッテリ等々、主要コンポーネントがどんどん他社製に置き換わっていくとき、ブランドの個性は何処に見い出せばいいのでしょうか。
中規模メーカーがユーザーの選択肢として生き残るのであれば、誰にも負けない個性は必須です。ところが、業界標準のコンポーネントでクルマが出来上がる時代となったとき、差別化は相当に困難になるでしょう。
スバルが全力投球する2つのプロジェクトと、トヨタの新たな戦略。
スバルは、新たなる時代に於ける技術的独自性を維持するために、2つのプロジェクトを推進中です。
一つは、次世代アイサイト。日立オートモティブとの関係を絶ち、新たにスウェーデンのオートリブとの協業でアイサイトver.4を開発中です。2020年代前半を担うver.4は、レベル3に近いレベル2を実現すると思われます。初搭載は次期レヴォーグですが、当初計画の2019年には間に合わず、2020年頃の登場が予想されます。
もう一つが、2021年の市場投入を目標に開発中の次世代HVシステムです。モータ、バッテリ等の主要コンポーネントは外部調達とするものの外部への丸投げはせず、自社技術でアッセンブリー。スバル独自のHVを実現します。
スバルはこの2つの技術をコアに、新たなる時代を生き残るべく全力を投じてきました。ところが、事態は急変します。
2019年、トヨタはHVシステムと次世代自動運転システムについて、他社に積極的に公開する方針を示しました。求めがあれば積極的にカスタマイズと開発の支援まで行うとのことで、トヨタは巨額の投資の下、オールジャパン体制で世界に対抗する覚悟なのです。
先述のように、CASE時代の技術開発には莫大な費用が掛かり、中規模メーカー1社で賄うのは不可能。つまり、スバルとて、いずれは外部調達とせざるを得ないのです。となると、CASEに関連する次世代技術の開発を進めても、10年以内にスバル独自の技術は放棄せねばならない時が来る、という事です。
スバルは、如何にすれば生き残れるのか。
では、スバルは何を根拠に差別化、つまりブランドを維持していけば、良いのでしょうか。
これまで、スバルというメーカーは水平対向エンジン、四輪駆動システム、高度な安全性能、運転しやすい空間設計など、独創的な技術を旗印として自動車市場を生き残ってきました。すべてにこだわりを持ち、納得が行くまでとことん突き詰める。それが、スバルの技術哲学です。
ところが、来る時代。ユーザーは何を期待してスバルを選ぶのか、その理由が希薄になってしまいます。何しろ、中規模自動車メーカーはメガサプライヤーのカタログから、お好みのコンポーネントをアッセンブリーするだけの存在になってしまうのです。これは、スバルのブランド維持に対する、重大な危機と言えるでしょう。
でも、それは一流料理人とて同じこと。お寿司屋さんも、フランス料理も、懐石料理だって、用意された食材を調理して逸品に仕立てているのです。となれば、スバルは御仕着せのコンポーネントを組み合わせつつも、徹底的にこだわりって、逸品料理に仕上げるしかありません。スバルにしか出来ない料理を、スバルだからこそ出来る料理を。差別化を図るとしたら、そこに尽きるでしょう。
それには、今この時期が何よりも重要です。スバルというブランドを、より濃く演出するもの。それは、何か。一つだけ言えることは、その個性が心を揺さぶるものでなければならない、ということです。CASE時代は目前に迫っています。残された時間は、余り多くありません。