ホンダ+日産=☓。画期的な提携交渉は破談に。 [2025年02月22日更新]

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良縁はウソ。2月13日正式破談に至った、ホンダと日産。
2024年末、自動車業界を駆け巡ったビッグカップル誕生の一報。それは窮地に陥った日産と、提携先を模索していたホンダが経営統合。持ち株会社を共同で設立し、両者がその傘下に入る、というもの。ホンダと日産は、双方ともに北関東を根城にする地の利に恵まれており、ケイレツ・下請け企業を巻き込む大掛かりなものとなる、はずでした。。。
しかし、1月下旬には合同が見込まれた三菱自動車が様子見を決め込むとの報道が流れると、良縁とは嘘だったのか、不穏な空気が漂い始めます。そして、2月初めには日産の子会社化をホンダ側が要求との報道に至ると、破談もかくや、との情勢に。そして遂に、2月13日に正式破談が発表されるに至ったのです。
一体全体、背後で何があったのか?破談の口火を切ったのは、どちから?気になることは満載ですが、小生には調べる術もありません。そこで今回は、破談に至った両者の今後と、日本の自動車産業の行方について考えてみましょう。
経営改革待ったなしの日産、深刻な現状。
直近の報道によれば、日産のリストラ策の甘さに不満を抱いたホンダが突き付けた子会社化の要求に対し、日産の自力再建派が一歩も引かず、交渉は破談になった、というのが真相のようです。しかし、これだけ厳しい状況にある日産に、自力再建の可能性は本当にあるのでしょうか。
自力再建の条件には、当面の課題解消と将来的リスクへの対処が挙げられます。当面の課題として挙げられているのは、生産体制の整理縮小とブランド力強化です。日産は12月末には、生産能力500万台の約2割に当たる100万台の削減を検討していました。それでも、ホンダがリストラ策が甘いという根拠は、2024年の販売台数314万台にあります。(実際には、ホンダ側も生産能力が過剰であるため、更なる削減を求めたというのが実情のようです。)つまり、400万台でも過剰という訳です。
ただ、リストラしても回復するのは帳簿上の数字だけ。日産を真の回復軌道に載せるには、販売台数の増加は不可欠。ところが、米国市場では過剰在庫解消のため、60万円近い(!!)多額のインセンティブを付けざるを得ず、極度に収益率が悪化しており、ブランド力低下は深刻な課題です。これを解決するには、まずはやはり売れるクルマを、売れる市場で売るしかありません。国内市場でも海外向け最新モデルを販売すべきですし、HV不在で米国市場で苦戦しているのなら、アウトランダーPHEVの日産版を造って販売すれば良い話です。やれる事があるのにやらずに放置している、というのは経営の怠慢以外あり得ません。
つまり、当面の課題解決は現在のリソースのみでも、十分可能なように思われます。ただ、船頭多くして船山に登るの言葉通り、危機に瀕してもなお派閥闘争を繰り広げているようでは、大胆な解決策の実行など到底不可能でしょう。
ホンダをフッた日産は、台湾の鴻海精密との提携を交渉中とのこと。しかし、これこそが茨の道。シャープ買収時と同様、ホンダを上回る厳しい要求が突き付けられるは必定。経営陣の総退陣は当然のこと、生産拠点の半減、現在の9,000人を上回る人員削減など、スクラップ・アンド・ビルド的な抜本的経営改善を要求されるでしょう。逆に言えば、ここまでせねば、日産の「当面の課題」解決は不可能、という意味でもあります。
将来的なリスクの排除には、大規模連合は必須。
一方、将来的リスクの対処は、極めて厳しい道程となることは間違いありません。ルノーと提携解消、ホンダとの提携破談となると、日産側に何らかの問題があると考えるのが自然でしょうから、国内外の大口投資家の警戒感は相当に強まるはずです。となれば、国内外問わず、日産との提携に躊躇うのは当然。つまり、新たに提携先を模索するのは、相当に困難でしょう。一転浮上した鴻海のように、財政支援を得る資本提携が現実的でしょうか。
しかし、資本提携による経営改善は、日産を巡る状況の抜本的解決にはなり得ません。なぜなら、激変期にある自動車産業に於いて今必要とされるのは、イチにもニにも大規模連合によるシナジー効果だからです。ここ10年で、自動車産業の研究開発費は1.5倍に増加。大規模な業務提携による巨額投資の分散が求められています。ホンダと日産は、一部の先進分野での業務提携は継続するとのことですが、一旦破談になった経営陣を尻目に、現場サイドで呉越同舟というのは無理があります。何れ、主導権争いや内紛、派閥闘争など、非生産的な状況から沙汰止みとなる可能性が高いと思われます。
また、先端半導体の供給枠確保は喫緊の課題で、それがために各国OEMは生産台数1,000万台数規模の巨大コンツェルン形成に躍起になっています。米仏独伊4カ国に渡る世界規模のステランティスは、その象徴的存在と言えるでしょう。その波はサプライヤにも押し寄せ、欧州では幾つかのメガサプライヤに集約されつつあります。
ところが、日産・ルノーの提携が解消となれば、残るは三菱自動車のみ。しかし、三菱のみでは大したシナジー効果は期待できません。加えて、日産は2000年代にケイレツを解体し、グループ内での優先的部品調達の道を自ら断ってしまいました。このため、ケイレツ内での共同投資が可能なトヨタ陣営とは異なり、先端分野では自費開発が必須。CASE周りでの部品争奪戦がさらに熾烈になれば、日産は生産数制限など、より厳しい状況に追い込まれる可能性があると思われます。
直近の「破談会見」で、日産は7車種の新型車の発表を明かしています。しかし、将来的なリスクへの対処が出来なければ、何れにしろ八方塞がりの状況へ自ら転がり落ちていくことでしょう。
ホワイトナイト?鴻海精密との提携はアリかナシか。
では、鴻海との提携について、もう少し考えてみましょう。ここで注意せねばならないのが、鴻海精密はそれ程強い野心を抱く企業ではないという点です。鴻海は、2016年にシャープを買収しましたが、鴻海カラーを前面に出すことはしていません。加えて、鴻海の誇る半導体技術を駆使した独自のスマホやデジタルデバイスを開発し、販売することもありません。なぜでしょう?
そのヒントは、かつてのブリヂストンにあります。一代でブリヂストンを築き上げた石橋正二郎は、縁あってプリンス自動車を買収。ところが、この買収によって、図らずもブリヂストン自身が主要顧客のトヨタ、日産の競合相手となってしまい、本業を大きく圧迫する事態となります。これを嫌った石橋は、プリンスをとっとと日産に売却してしまうのです。
万が一、鴻海がシャープを通じてスマホ開発に乗り出せば、アップルは当然契約を打ち切るでしょう。ですから、鴻海は本業の都合上から、BtoCビジネスには進出できないのです。もし、鴻海が自動車向け半導体生産を重要なビジネスと捉えるのであれば、日産との提携は敢えて「薄めておく」必要が生じます。日産と提携しても、自身がOEMとなることに興味がない、と鴻海が正式コメントを出したのはそれが理由でしょう。
となると、日産が得られるのはやはり資本支援のみ。鴻海はあくまで大株主として、日産には短期的な経営効率化・利益追求による黒字化を求める立場となるでしょう。経営陣は総入れ替えとなり、大規模なリストラが断行され、商品ラインナップ、生産体制、企業規模も大きく縮小され、長期計画はすべて破棄。近視眼的な計画に全部差し替えられるはずです。思い出すのは、5チャンネル体制で大失敗した後のマツダ。あのような悲惨な状況に陥るのは悲しいですが、自らに策無くば致し方ありません。
体制縮小となれば、不採算の市場からの大胆な撤退策が採られるはずです。米国市場、中国市場は、その筆頭でしょう。どちらも、市場の特殊性が高いが故に専用車種が必要であるうえ、販売競争が熾烈なのが理由です。その後は、三菱と同じく、日本国内及び新興国市場での販売をメインに据えることになるはずです。
ただ、返す返すも経営の無策が招いた結果なのですから、リストラされる社員はたまったものではありません。
日産の生き残る道。企業価値は強みとなるか。
最悪の状況に陥った時、日産には如何なる道が残されているのでしょう。企業価値があれば、日産の生き残る道はあるはずです。
第一は、日本随一のヒストリーでしょう。日産には、モータースポーツ等を通じて、901活動までに育て上げたブランド価値があります。GT-R、スカイライン、シルビア、300ZX、240SX、180SXといったモデル名は、人々の記憶に鮮烈に刻み込まれています。RB、SRなど、エンジン名もまた同様です。日産の誇るブランドは唯一無二の存在価値を持つもので、これを手掛かりに日産ブランドを再構築するというプランは、投資家にとって魅力的なものとなるでしょう。
第二は、生産設備でしょう。日産は世界各地に生産拠点を有しており、ここに付随する人員、技術、設備、経験は、当然ながらそれ相応の価値を持つでしょう。中国や東南アジア、南米、南アフリカなどの拠点は、中国のOEMなどには非常に魅力的でしょう。ただ、国内生産拠点というものは想像以上に価値がないのか、日産やホンダ、いすゞなどが生産拠点を閉鎖していますが、買い手が付いたという話は聞いたことがありません。よって、資産化される可能性があるのは海外工場だけ。
直近の報道では、テスラが日産に興味を示しているとのことですが、彼らが欲しいのも海外の生産拠点のみ。ただ、テスラが生産拠点を米国外に確保すれば、米国国内生産率は低下するはず。となれば、トランプ大統領との衝突は避けられません。よって、イーロン・マスクは、米国内の生産拠点のみ手に入れ、後はファンド等に売却すると見るのが自然でしょう。
第三は、技術力でしょう。ただ、技術力とは無形のもので、人材が流出すれば、技術力もまた失われます。逆に言えば、厚木周辺で求人を掛ければ良いことで、わざわざ研究所丸ごと必要ということにはならないでしょう。特許を買収という手法もあるでしょうが、日産保有の特許に無二の価値があるか否かはわかりませんが、海外のOEMが興味を持つ可能性はあります。そもそも、企業ごとに研究開発の風土は異なるので、他社の設備・特許が丸々役立つことは多くないと思われます。これに興味を示すのも、中国やインドのOEMだけでしょう。
ただ、企業価値で考えるということは、残るのは価値のみになる。つまりは「切り売り」間違いなし。かつてのローバーの顛末と同じ状況です。しかし、日本の伝統ある企業・ブランドがこのような状況になるとは、決して考えたくないものです。
何れにしても、日産の辿る道は茨の道。先行き不安を原因に、人財流出も急速に広がることでしょう。企業の柱は、人財にあります。人は材料ではなくて、財産なのです。研究も、開発も、生産も、販売も、すべては人財あって始まるもの。自らのクビを切らず社員のクビを切る日産の経営陣にとって、人は財産ではなく、材料なのでしょうが、責任を執る覚悟のない役員ほどムダなものはありません。
ホンダの提携先探しに、黄色信号?
一方のホンダは、どうなるのでしょう。ホンダも、日産同様に生産能力の過剰が指摘されています。今暫く単独での生き残りを強いられるのであれば、生産能力の適正化は不可避でしょう。米国市場の行方はトランプ2.0次第でしょうが、カナダ・メキシコ製車両に法外な関税が掛けられるのであれば、この2カ国での体制縮小と米国国内への移転は妥当でしょう。
マツダとスバルは、可能な限り車種を減らし、対応できない市場は「諦める」という戦略で、高い利益率を確保しています。これに比して、ホンダの状況は深刻です。四輪の利益率が余りにも低いことに経営陣が業を煮やし、「利益は二輪で稼いでいる」と社員の奮起を促す社内報を展開したのが、ほんの数年前。その最大の弱点は、マツダ・スバルとは真逆で、各市場向けに各々別車種を展開しているため、採算が良くないことにあります。この問題を解決するには、フルラインナップ体制の放棄を含め、車種の整理統合や不振の市場からの撤退等を検討する必要があるでしょう。
将来的なリスクへの対処はどうでしょう。日産との破談が確定した今、ホンダは全力で新たな提携先を探しているはずです。ホンダにとって魅力的なのは、米国ビッグ3でしょう。米国で高い信頼を得てきたホンダであれば、米国側の抵抗は少なくて済むでしょう。ただ、GMとは既に一度失敗しているので、現ステランティスのクライスラーは除外すると、残るはフォードのみ。しかし、GMと破談になったからと言ってフォードというのも、どうにも節操がありません。となると、あるのはGMとの復縁でしょうか。
他国はどうでしょう。中国は問題外として、欧州だとVWグループ、BMW、ルノー、メルセデス。VWは、経営主導権を握りたる傾向があるため、ホンダとは馴染まないでしょう。メルセデス、つまりダイムラーは、四輪+商用車の構成。となると、ホンダ側のメリットは殆どありません。ルノーは政府主導でアクが強く、BMWは一族経営で難解。
では日本に帰って、スズキはどうでしょうか。浜松を総本山とする両者は四輪+二輪との構成も同じで、メリットは大きいと考えられます。ただ、鈴木修氏は生前、自らの死後はトヨタを頼るべしとの旨を公言しており、これを裏切ってホンダに走るというのはあり得ないでしょう。二輪+四輪のシナジー効果で考えれば、創業家の意向次第では、BMWも一考の余地があると言えます。
ホンダは日産と違って、自らの顧客価値をよく理解しているOEMです。また、強力なブランド価値も維持しています。逆に言えば、現状は妥協する必要はない訳で、これが逆に提携先を模索する際に弊害となる可能性はあります。何れにしても、自動車産業に於いては国際結婚は簡単ではないのかも知れません。
激動の時代、本当に大は小を兼ねるのか。
生き残り合戦の如く、提携先を模索するOEM。今後来るであろう波を乗り越えるには、「幹は太い方が良い」というのは一つの考え方でしょう。ただ、太い幹ほど波が強く当たるのは自然の理。海藻が波に揉まれても大丈夫なのは、細くしなやかに受け止めるから。ならば、単独での生存だって、きっとメリットはあるはずです。そう、何も巨大コンツェルンだけが正義ではないはずです。
寧ろ、経営判断の迅速化が求められる時代には、逆に弊害とさえなり得ます。巨大コンツェルンとなれば、グループ内での利害調整は必須。近年、トヨタを筆頭にOEMが役員を減らしているのも、迅速な判断と責任の明確化を図るためです。となると、巨大コンツェルンの形成は「時代に逆行している」とも言えるのです。じゃぁ、経営統合ではなく、業務提携だけならイイじゃないか、と言っても、これもまた同じ話。新規開発に際しても、各OEMの要求のすり合わせは必須です。つまり、ここに大きなムダが生じます。1+1が2になるとは限らない。船頭が多いのですから致し方ないことでしょうが、単独OEMとしての歴史を断ってでも巨大コンツェルンの形成に奔走するメリットは本当にあるのでしょうか。
次回は、OEMが今成すべきことは何か。今やるべきは、技術革命ではなく、価値革命であることを精一杯書いてみたいと思います。
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