スバルBEV戦略に大異変!「2025方針」を徹底解析。 [2025年12月12日更新]

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「SUBARU 2025方針」を徹底解析!
 
   2025年12月12日 BEV戦略に大異変!ラインナップはどうなる?

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

スバル、関税処置の影響は2100億円もの巨額に。

2025年前半のベストヒットワードは、間違いなく「トランプ関税」でしょう。従来の慣例を無視した一方的処置を前に、世界各国の首脳が一様に顔を真っ青にして交渉に右往左往する姿は、世にも珍しい光景として語り継がれることでしょう。このトランプ関税により、日本の対米関税は24%に急上昇。これに対し、日本政府は素早く対応。7月22日には、5500億ドルの対米投資と引き換えに、自動車関税を含む相互関税を15%まで引き下げることで合意に達します。

トランプ政権が問題にしたのは、自動車産業で「スタンダード」となっている、米国向けの自動車を製造コストが安いカナダ、メキシコで生産するというもの。これでは、カナダ、メキシコの雇用が増加するも、米国の雇用は減少してしまいます。簡単に言えば、アメリカ人がせっせと稼いだお金で、カナダ人とメキシコ人が得をする。これが許せない、というのです。そこで、トランプ政権は、カナダ、メキシコ両国に対して、自動車及び自動車部品の関税を25%と、日本及びEUよりも高めに設定しています。

一連の関税処置は、スバルにも大きな重しとなっています。スバルは、販売台数の7割を米国に依存するうえ、現地生産こそしているものの、その約半分は日本からの輸出。さらに、主要コンポーネントに至っては、全てが国内生産。結果的に、スバルの関税処置による影響は2,100億円にも達する巨額なものとなっています。これは、営業利益の約半分。スバルは米国のみに生産拠点を保有し、米国の雇用に貢献してきただけに、非常に辛いものがあります。

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トランプショック!米国のBEV、先行き不透明に。

第二次トランプ政権の影響は、関税処置だけに留まりません。BEV需要の減退にも、大きな影響を及ぼしています。地球温暖化を陰謀論と信じて疑わないトランプ大統領にとって、BEVは無用の長物。そこで、北米産BEVを購入した場合に受けられる7,500ドルの税額控除は終了。これにより、米国国内でBEVを購入するメリットは消失。前政権が目指した2030年のBEV普及率5割の目標は、もはや昔の話。2030年の普及率は25%にも満たない、との予測が示されるに至っています。

BEV需要の減退は、スバルの中期計画に甚大な影響を与えます。なぜなら、スバルは2030年のBEV販売比率50%達成を目標に、強気の先行投資を行ってきたからです。何しろ、スバルは販売台数の7割を米国に依存しているのですから、ここでの需要減退は一大事。もし、米国のEV需要が半分になるのなら、スバルのEV販売計画も半減させねばなりません。

スバルは2023年8月の時点で、2026年末までにSUVを4車種、2028年末までにさらに4車種の、合計8車種のBEVを市場投入。これにより、2030年の世界販売のうち、60万台をBEVとする計画を明らかにしていました。計画は順調に推移し、現在までにソルテラ後期型、トレイルシーカー、アンチャーテッドと、トヨタのアライアンスBEVモデル3車種を発表。さらに、自社開発のeAxleを搭載するオリジナルBEVを市場投入すべく、目下全力で開発を行っています。これにより、BEVラインナップは一気に拡充され、国内屈指のBEV・OEMへと変貌を遂げて、米国BEV販売で一気に躍進を図る、という計画でした。

ところが、事態の急変を受け、スバルは11月10日に「2025方針」を発表。計画の軌道修正を図っています。その最大のものは、1.5兆円に達する電動化投資の見直し。着手済みの3000億円を除いた1.2兆円を、次世代ICE車開発、効率的な混流生産の追求に転用するというもの。つまりは、計画の縮小・後退です。また、2000億円規模のコスト低減へ向けた「原価維新20-30」を発表。関税の影響を受けても、コスト改革、販売台数増加、バリューチェーン利益の拡大により、世界販売120万台の実現及び営業利益の上積みを目指すとしています。

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生産体制を全面刷新。最大キャパを120万台に増強。

スバル内部では、BEV時代の到来へ向けて、大掛かりな構造改革が進行中です。その最大のものは、国内生産拠点・群馬製作所の大規模再編です。群馬製作所は、スバルの自動車関連工場で構成される、国内唯一の生産拠点。これまで、本工場の1本、矢島工場の2本の生産ラインで、完成車生産を実施。大泉工場では国内及びSIA向けのエンジン、トランスミッションの生産を一手に担う一方、BEVはすべて外部委託。ソルテラの生産は、トヨタ元町工場へ委託してきました。

この生産体制を大刷新するのが、スバルの計画の骨子。ただ、小規模OEMであるスバルが、工場を全面新設するとなると、余りにもリスクが高過ぎます。かと言って、現状のトヨタ頼みでは自由度に欠けてしまいます。そこで、如何なるBEV需要の変化にも対応可能な柔軟性を有する生産体制の構築が求められました。そこで計画されたのが、北本工場の自動車生産拠点化、大泉工場への完成車ラインの新設、既存ラインのBEV混流生産への対応、以上3点でした。

北本工場は、産業機器事業の生産拠点であったものを全面改修。2024年1月には、THSを搭載するS:HEVユニットの生産を開始。現在18.6万台強の生産規模は、2027年には30万台規模へと拡張される計画です。また、同時並行で既設ラインの改修工事も実施しており、矢島工場の1本を停止した上で、BEV・ICEの混流生産を可能とする最新の設備へと改修が進められています。このライン停止に伴い、生産キャパシティは一時的に低下するものの、他ラインでの挽回生産等により、2025年度は最大で90万台の生産を確保する見通しです。改修を終えた生産ラインでは、2025年中にはトレイルシーカー及びトヨタ・bZ4Xツーリングの生産を開始。スバルで初めてとなる、本格的BEV生産が開始されることとなります。

さらに、大泉工場では完成車ラインの新設工事に着手。ただ、この大泉工場の新設ラインは、当初BEV専用であったものが、2024年秋の情報では一歩後退。ICE車との混流生産を前提に計画が進められています。この新設により、本工場1本、矢島工場2本、SIAの2本の完成車ラインに加え、大泉工場の1本の稼働が開始すると、全120万台+αというスバル史上空前絶後のMAXキャパシティが完成することとなります。

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SIA生産車種を変更。フォレスターは現地生産に。

一方、唯一の海外生産拠点であるSIAでは、2025年秋よりフォレスターの生産が開始されています。スバル随一の最量販車種であるフォレスターは、これまで国内で生産し、米国へ輸出してきました。ところが、今回のフォレスター及びアウトバックのほぼ同時フルモデルチェンジに際し、この生産拠点をスイッチすることとしたのです。

これにより、2025年秋以降の生産体制は次のようになります。

本工場:レヴォーグ/レイバック/WRX、クロストレック/インプレッサ、BRZ

矢島工場:アウトバック、フォレスター、クロストレック/インプレッサ

SIA:フォレスター、クロストレック、アセント

本工場と矢島工場で、クロストレック/インプレッサが併記されているのは、双方の工場で生産が可能なため。というのも、スバルのICE車のプラットフォームは、BRZ/GR86を除けば、1種類のみ。そのため、基本的には「すべて同じ車種」とみなせるため、各工場の稼働率に応じて柔軟に対応する、ブリッジ生産が可能になっているのです。

ところが、スバルが大再編に際し計画している「柔軟性」とは、このブリッジ生産をBEVにまで拡張するという、大胆なもの。BEV需要が少なければ、矢島工場の改修ラインのみでこれを担い、需要の拡大に応じて大泉工場の新設ラインへ拡大。さらに、米国での需要が高まるのであれば、将来的にSIAのラインも改修。BEVの現地生産も可能とする計画です。

ただ、BEVがトヨタアライアンスモデルだけなら簡単なのでしょうが、スバルは自社開発BEVもラインナップする計画。つまり、現状では「1車種」をブリッジ生産するだけなのに対し、将来的には「1車種」に、トヨタアライアンスBEVに加え、自社開発BEVを加えた上で、これらのブリッジ生産を可能にしようとしているのです。

そのため、新設の大泉工場完成車ラインでは、従来にない柔軟性を付与するとのこと。そして、このラインが順調であれば、ICE車の混流生産が不可能なままの古い完成車ラインも、随時改修されていくことになるはずです。

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サプライチェーンが大変動。西三河製が中心に。

スバルは前述の通り、2026年末までにSUVのBEVを4車種、2028年末までにさらに4車種を投入し、合計8車種のBEVを市場投入することを公表しています。これまでのところ、ソルテラ後期型(bZ4X)、トレイルシーカー(bZ4Xツーリング)、アンチャーテッド(CH-R+)と、トヨタとのアライアンスモデルのSUVを3車種を公表済み。恐らく、アライアンスモデルは残り1車種。あと4車種は、スバルの独自開発モデルになるものと思われます。

スバルは、2024年3月にアイシンとの協業を発表。次世代eAxleの開発を行うことを公表しています。現在までに、協業は相当程度に濃密に進められており、詳細は不明ながらも具体的な開発が行われている模様です。なお、この発表の直前には、アイシンが三菱電機との協業を発表。eAxle用インバータの供給を受けることで合意しています。この時系列から、スバル-アイシン-三菱電機の協業体制確立が見込まれたましたが、こちらは急転直下破談となったようです。というのも、ケイレツ外との合意に対してデンソーが態度を硬化したため、トヨタグループ内での「大騒動」に発展したからです。結果的には、従来通りオールトヨタ体制で製造・供給することに落ち着いたようです。

トヨタは2019年4月に、eAxleの他社供給を主体的に担う目的で、トヨタ、デンソー、アイシンの出資で新会社BluE Nexusを設立しています。BluEは、これまでにマツダ、スバル(S:HEV)、ダイハツ、スズキ、いすゞへの供給を公表しており、スバルの次世代BEVも、このBluEを通してeAxle等主要コンポーネントの供給を受けることとなります。

スバルは、北関東を中心にサプライチェーンを構築・維持してきました。しかし、トヨタのアライアンスモデルでは、補機類はすべて西三河製。同じく、独自開発のBEVでも、BluEからeAxleの供給を受けるため、主要な補機類が西三河製が採用されるはずです。実際に、S:HEVでも補機類の多くが西三河製に変更されています。そのため、スバル直属の系列サプライヤは、受託生産により維持されるものの、その他の独立系(旧日産系)サプライヤとの縁は徐々に薄まっていくものと思われます。

これに伴い、西三河-群馬間の物流体制も大幅に増強されています。ところが、鉄道貨物では距離が中途半端で、西三河は慢性的かつ深刻なドライバー不足。モノが流れなくては、クルマは作れませんから、この辺りは非常に深刻な課題となっていくことでしょう。

制御統合ECUとE/Eアーキテクチャの採用。

さて、今後登場する独自開発のBEVは、どのようなモデルになるのでしょうか。2025方針の中に、そのヒントがあります。

2025方針の中で、そのカギは「我々がこの2年間バッテリーEV開発の場を通じて進めてきた制御統合ECUの拡張」にあるとし、この「制御統合ECUは『内製AIを搭載した次世代アイサイト』と『AWD制御を含めた車両運動制御』を連携・連動し、統合運動制御を行う」としています。また、「制御統合ECUを中心としたE/EアーキテクチャをICE搭載車と共通化することで開発効率を大幅に高め」ていくとしています。

E/Eアーキテクチャとは、自動車の電装系を指します。自動車の電装系、いわゆるワイヤーハーネスは、未だにリレーを用いたアナログ12V回路のまま。この分野は、技術の進化から完全に取り残されていることを、皆さんご存知でしょうか。

今日現在一般的なのは、ECUを分散配置する分散型アーキテクチャ。中央制御ECUは存在せず、エンジンECU、トランスミッションECU、コックピットECU、ADAS用ECU等々、各コンポーネントにECUを配し、各々独立して制御を行っています。相互に連携が必要な場合は、各ECU及びセンサから別途アナログ回線を出力し、この出力値を元に制御を行います。

ナビ取り付けの経験があればご存知でしょうが、ナビ裏には常時電源、ACC電源、速度、サイドブレーキ、バックなど、各信号ごとに配線があって、これをナビに接続することで機能させます。スマホならUSB1本で済むはずが、ナビだけでも何十本もの配線を接続せねばならないのです。さらに深刻なのは、技術の進化によってECUの数が増え続けていることで、一部高級車では100個にも達しようとしています。これらECUを相互接続するのですから、ワイヤーハーネスが蛇のように車内を這いずり回っているのも納得です。余りにも全時代的なのは、誰が見ても明らかでしょう。

これに対し、PCやスマホでは、CPUが中央集権的に全ての処理を行い、周辺機器がこれを補助します。例えば、PCのUSBにメモリスティックを接続した場合、メモリ側は指示を受けるのみ。メモリ側が独立して機能することはありません。そのため、周辺機器側は非常にシンプルに設計することが可能です。ただ、複雑な処理が必要な場合、プリンタのように独立したECUをもたせることも可能です。さらに、PC側に新たなソフトウェアやドライバを追加すれば、機能を果てしなく拡張することも可能です。自由度と柔軟性が非常に高い設計だと言えるでしょう。

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ゾーン型アーキテクチャによる技術革新。

分散型アーキテクチャが、これ程長く維持されてきたのには、理由があります。まず、車両全体での統合がラクなこと。様々なサプライヤ製コンポーネントでも、各々勝手に作動しているので、高度な連携を考慮する必要がないのです。また、アナログ回路ですから、多少のデータ欠損でも何となく作動するのも、メリットの一つと言えるでしょう。もちろん、デメリットも存在します。特に顕著なのが、故障診断です。まず、複数のECUを順次診断するため、時間が掛かります。また、故障が複数のコンポーネントに波及した場合、中央制御ECUが存在しないため、単独の原因を特定することも不可能です。

近年では、さらに問題は深刻化しています。最大の理由は、ADASの高度化です。ADASが、自動車全体を高度に統合制御するに際し、分散型アーキテクチャがその弊害になっているのです。

そこで、新たに提案されたのが、ドメイン型アーキテクチャです。複数の関連機能を、パワートレイン系、ボディ系、シャシー系、インフォテイメント系など、機能別に一つのドメイン制御ユニット(DCU)に統合。また、複数のDCU間の通信を最適化することで、高度な連携・制御を可能にします。ただ、ADASのように、複数のDCUを統合制御する場合、データ処理が複雑になるため、更なる進化が求められています。

そこで提案されているのが、ゾーン型アーキテクチャです。全ての機能の処理を中央制御ユニットに集中させ、これと高速・大容量バスで接続されたゾーン制御ユニット(ZCU)が、各コンポーネントを制御します。例えば、左前のZCUが左前のヘッドランプやパワートレインECUを制御。右前のZCUがメータ表示やステアリング系を、と言ったように、ZCUは機能に関係なく配置・機能します。

制御統合ECUの採用により、すべての処理が中央集権化されます。各コンポーネントは、現在のようなアナログ12V回路ではなく、デジタルシリアルバスで接続されるため、より高速・高度な制御が可能になります。これにより、配線がシンプル化・軽量化されるだけでなく、中央制御ユニットに車両全体を高度かつ統合的に制御することが可能になるのです。また、機能の追加・削除も容易になるため、異なるモデルでも同じアーキテクチャを共有することが可能になります。

ただ、言うは易く行うは難し。E/Eアーキテクチャへの転換は、簡単なものではありません。なぜなら、全てのコンポーネントがこれに対応する必要があるからです。スバルは、その革命的進化にチャレンジしようとしているのです。

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