スバリズムレポート第3弾「ステルス技術の全貌。」完全版:U-2からF-22まで。 [2019年02月06日更新]

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

スカンクワークスの仕事は、誰も知らない。知られちゃいけない。

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スカンクワークスの仕事は、米国最高水準の国家機密であり、公開されることは殆ど無い。
出典:Wikimedia Commons

彼らの仕事の内容は、ロッキードのCEOであっても触れることさえ許されません。なぜなら、プロジェクトの殆どはブラックプロジェクトと呼ばれる極秘プロジェクトであり、米国の最重要国家機密でもあります。そのため、彼らの責任の一切は経営陣ではなく、すべて彼らのボスに一任されます。つまり、彼らは「やりたい放題」です。

スカンクワークスの名は、コミックに因むもの。発足当時、彼らの急増の事務所(と言っても、テント)が匂いの酷いプラスチック加工工場の隣にあり、社員の一人がふざけて電話口で、「スコンクワークス」と名乗ったのが発端です。

瞬間湯沸かし器のケリー・ジョンソンは、「クビだ!」と激怒。ところが彼は帰宅を拒否した上、翌日平然と出社。そんな彼を見て何も言わないケリー・ジョンソンを見た面々は、以後「スコンクワークス」と名乗るようになります。

ところが、当のコミック側からストップが掛かったため、スカンクワークスに変更。そのまま定着したのです。

 

天才技術者にして、最強のネゴシエーター。ボスの名は、ケリー・ジョンソン。

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スカンクワークスの初代ボス、クレランス・"ケリー"・ジョンソン。
出典:Wikimedia Commons

短期でキレやすいものの、男気に溢れたこの天才技術者は、同時に優秀なネゴシエーターでもありました。CIAやホワイトハウス、上下院、空軍等々、ありとあらゆる場所でその威力を発揮しました。

彼を鼻持ちならない男と、嫌う者もいましたが、彼のチームの飛行機を疑う者は誰もいなかったのです。スカンクワークスは、ケリー・ジョンソンに率いられ、この後数々の奇跡的な航空機を生み出していくのです。

 

たった1週間で設計した米国初のジェット機は、半世紀飛び続けた傑作機となった。

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スカンクワークスの処女作、P-80。たった1週間で設計を終え、180日目には初飛行した。
出典:Wikimedia Commons

スカンクワークス最初の仕事は、XP-80。1943年6月23日に発注された米国初のジェット戦闘機の開発でした。彼らは何とたった1週間で設計を終え、183日後には初飛行させてしまいます。

P-80シューティングスターの現役期間は短かったものの、発展型のT-33複座型練習機は半世紀以上に渡って使われる傑作機となります。スカンクワークスの能力の偉大さは、処女作だけでも充分窺い知ることができるでしょう。

 

ベルに内定していたはずのCIAの高高度偵察機計画。これに、強引に捻じ込む荒業。

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[左]哀れ、日の目を見ずにボツとなったベルX-16のモックアップ。[右]高高度偵察機のベースとなった超音速戦闘機、XF-104。西側諸国で広く運用された。出典:Wikimedia Commons

 

次なる作として、ケリー・ジョンソンが強力に推進したのが、高翼面荷重の超音速戦闘機でした。鉛筆のように細い胴体と、ロケットように小さな主翼。XF-90は性能未達で失敗に終わったものの、1954年に初飛行したF-104は海外カスタマーには好評で2,578機が生産されました。

ケリー・ジョンソンは、CIAが進める高高度偵察機のプロジェクトを聞きつけると、早速ロビー活動を開始。このコンペ、実はベル社のX-16で既に内定済みでした。ところが、ケリーが強引に捻じ込んで、コンペに参加を果たすと、ゴリ押しで仕事を勝ち取ってしまうのです。

スカンクワークスが提案したのは、F-104をベースに強力なエンジンと長大な主翼を装備するというもので、彼らの計算では相当安価に収まるはずでした。

 

まるで、グライダー。32mもの、長大な主翼を持つジェット機。

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32mに及ぶ長大な主翼を持つ、U-2。主翼下のオレンジ色の車輪が、補助輪。機体が地面を離れると脱落する構造になっており、後方に見える支援車両がこれを回収する。出典:US AirForce

 

U-2と名付けられたこの機体は、不気味なほど長大な主翼と強力なエンジンを備えた前代未聞の航空機でした。主翼は誘導抵抗を減らすため、グライダーのような極端なアスペクト比を採用。31.39mもの長大な主翼のお陰で、20:1以上の揚抗比を実現しています。

降着装置は、極端な軽量化のため胴体前後にしかなく、着脱可能な補助輪を使用して離着陸を行います。離陸時は、地上に補助輪を置き去りにし、支援車両がこれを回収。着陸時は、甚だしく視界が限られるうえ、グライダーのような飛行特性ゆえに接地が難しく、地上を走行する支援車両の指示の下で60cmの高度から慎重に落下。充分減速した後、翼端を地面に擦り付けて停止し、ここで補助輪を装着します。

薄い導体に収まる軽量な降着装置を考えるくらいなら、取り外し式で充分。実に、スカンクワークスらしい割り切りです。

 

たった、13km/h。失速と空中分解の瀬戸際で飛行する、U-2。

U-2が飛ぶ70,000ftの高空では空気も薄く、空力学的効果も遥かに弱まります。そのため、宇宙服を装備したパイロットには慎重かつ冷静な判断が求められました。速度を上げれば、バフェットに見舞われ空中分解に。速度を下げれば、失速して防空網の餌食に。その差は、たった13km/h。

上空遥か70,000ft(21,000m)まで駆け上がり、ソ連国境を突破。対空ミサイルと迎撃機を眼下に認めつつ、ソ連の軍事施設や軍備、そして核開発施設をくまなく撮影する。それがU-2のミッションです。

パイロットは、敵地上空を防空網の凄まじいプレッシャーの中、バフェットと失速の狭間で最大10時間に及ミッションを遂行するのです。

 

自称:ロッキード社員。実態は、CIAへ出向した空軍パイロット。

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ホワイトハウスが、U-2が気象観測機であることをでっち上げるために、わざわざ撮影された写真。出典:NASA

万が一、撃墜の際にパイロットが身柄を拘束されると、米国政府に累が及びます。

そのため、U-2のパイロットは軍を退官し、給料はロッキードが支払いました。胸ポケットにはコインが入れてあり、中の青酸カリで自らを「始末」できるよう備えてもいました。

ただ、気象観測機のパイロットが「始末」用の装備を持ち歩くはずありません。生死に関わらず、検分すれば自ずと「怪しい人物」が「キナ臭いミッション」の実行中であったことは露見したはずです。

なお、運用は空軍施設は使うものの、オペレーションの多くはロッキード社員が実施していました。

ソ連領空を飛ぶU-2の存在は、公式には一切秘匿されました。米国にとってそれは明らかな国際条約違反でしたし、防空軍の無能ぶりを晒すことになるため、ソ連にとっても不都合だったのです。

 

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