新型BRZ・北米仕様車、遂に世界初公開。そのフルモデルチェンジの詳細に迫る。 [2020年11月26日更新]

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BRZがフルモデルチェンジ。北米仕様車初公開。
 
2020年11月18日 ライトウェイトスポーツの金字塔が迎えるフルモデルチェンジとは。

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

ファンは、悲喜こもごも!?新型BRZが遂に世界初公開。その詳細や如何に?

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2020年11月18日、かねてより噂されていた新型BRZが、 遂に世界初公開されました。新たに2.4Lエンジンを搭載し、6ATにはアイサイトも新搭載。装いも新たに生まれ変わった「2代目」BRZ。迫力を増したスタイリングからは、スバルのコンパクトスポーツカーに対する、スバルの並々ならぬ意気込みが伝わってきます。

その一方で、ファンが期待した4WDやターボの設定もありませんし、シャシー・ボディは基本的には旧型からのキャリーオーバー。期待と不安が複雑に入り交じる、2代目BRZ。今回は、その詳細を見ていきましょう。

ご存知の通り、初代BRZはトヨタとの共同開発によって誕生した車両です。その誕生に至る経緯は、スバルの負の歴史の総決算と言えるでしょう。では、半世紀以上に及ぶその歴史から、まずは振り返っていきます。

 

86/BRZは、スバルの負の歴史の総決算。その誕生に至る、スバル流転の歴史。

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かつてのスバルは、極めて「日産色」の強いメーカーとして知られていました。その由来は、実に戦前にまで遡ります。GHQの財閥解体によって、12の新会社に分割された旧中島飛行機。そのうち、6つの新会社は再合同に向けて動き出します。ところが、ここに横槍が入ります。旧東京製作所を母体とする富士精密が、ブリジストン総帥石橋正二郎の策謀によって、再合同に加われなくなったのです。こうして、富士精密はたま自動車と合併してプリンス自動車となり、1965年には石橋自身によって日産自動車に売却されてしまいます。

1955年4月1日、5つの新会社の再合同によって、自衛隊向け航空機受注を目的とした新会社「富士重工業」が誕生します。ただ、旧中島以来の個人的関係は維持されていましたし、メインバンクも日本興業銀行で一緒だったために、日産との業務提携を行い、1968年からは日産車の受託生産なども行われていました。

ところが、バブル崩壊を機に経営危機に陥った日産自動車は、保有の富士重工株放出に動き出します。当時、スバルがいすゞとの共同出資によって設立したSIA(スバル・いすゞ・オートモーティブ)が経営危機にあり、いすゞの筆頭株主であったGMが、これを受け入れることで合意します。ところが、2005年には今度はGMが経営不振に。。。こうして、富士重工株20%の放出が再び議論されることとなります。

そこに現れたのが、トヨタ自動車でした。トヨタは放出された富士重工株のうち、8.7%を受け入れることで合意したのです。2019年には、トヨタの出資比率は20%まで拡大。現在では、トヨタの持分法適用会社となるに至っています。スバルにとって、トヨタはホワイトナイト。経営基盤を安定させると共に、CASE時代に向けた技術基盤を確保することに成功したのですから。

戦後以来、ずっと流転の日々を歩み続けてきた、富士重工。漸く、トヨタという「親会社」を得て、経営の安定を得ることに成功したのです。スバルにとって、待望の安定の日々。これを実現した資本提携によって誕生したのが、トヨタ・86/スバル・BRZという兄弟車でした。

 

スポーツカー暗黒の時代に誕生した、86/BRZという奇跡の子。

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86/BRZは、2007年1月にトヨタにて小型スポーツカー開発計画として始動します。当時の日本市場は、スポーツカー暗黒期。次々に歴史あるモデルが廃止され、開発計画さえも次々にキャンセルされる有様でした。

プロジェクトを主導する彼らの念頭にあったのは、AE86のリバイバルでした。すなわち、安価でコンパクトで、程よい性能。そして、痛快な愉しさ。こうして煮詰められていったのが、排気量2LのコンパクトFRスポーツカーでした。そこに偶然タイミングが重なったのが、スバルとの資本提携です。スバルの水平対向4気筒ならば、低重心のコンパクトスポーツが完成するはず、と彼らは目論んだのです。

2008年、トヨタとスバルは共同記者会見を実施。その席上で、小型スポーツカー開発計画の存在が公表されます。スバルの心臓を得た、トヨタの新生86。魅力的なスポーツカープロジェクトに、ファンの期待は鈴鳴に高まっていきます。ニュルブルクリンクには「Toyo-Baru」とあだ名される不格好なテストカーが現れ、2009年の東京モーターショーにはコンセプトモデル「FT-86」が出品されるなど、その期待は遂に最高潮に達します。

ただ、開発現場では問題が山積していました。最大の問題は、言葉の壁。スバルとトヨタで日本語が通じないのです。互いに異なるクルマ哲学を育んてきた両者。コストを念頭に、いち早く結論を急ぐトヨタ。結果を急がず、とことんこだわりを持つスバル。何から何まで異なるが故に、互いの言葉が理解できなかったのです。

結果的に、86/BRZは違う走りのコンセプトを与えられて誕生します。86は新生AE86らしく、テールハッピーな仕立て。対する、BRZはスバルらしいスタビリティ第一の仕立て。加えて、内外装、ボディカラー、グレード構成なども違えることで、両者は明確にキャラクター分けが成されていました。共同開発車のお手本の如く、各々が実に「それらしい」個性を以て、スバル・BRZとトヨタ・86は誕生したのです。

 

FR専用シャシーという特殊性が、フルモデルチェンジを阻む。

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正式発表は、2012年2月2日「トヨタ・86」発表。続いて、2012年3月28日「スバル・BRZ」が発売。当初の熱気は尋常ならざるものあり、店頭にはカタログの要望が殺到。用意したカタログが、あっという間に無くなる程でした。まだ、スポーツカーにだって、まだまだ可能性はある。そう思わせるインパクトがありました。

出足好調、快進撃を開始した86/BRZ。空前のブームにいち早く反応したのが、チューナー達でした。各社から、続々と様々なアフターパーツが発売。チューニング業界は、一気に活況を呈します。ただ、実用性という点では、何ら優れる処のない2ドアクーペ。ブームが落ち着いて来ると、販売台数も下降し始めます。発売から6年を経過する頃には、次期型の存在がファンの間で議論されるようになります。

一般に、自動車のフルモデルチェンジには、数百億円もの莫大なコストを要します。これに要するコストは、フルモデルチェンジの効果によって、すべて回収せねばなりません。幸い、86/BRZは世界で広く販売されていたため、フルモデルチェンジの計画が具体化されていくことになります。ところが、事は容易には進みません。86/BRZは、そう安々とフルモデルチェンジができるモデルではないのです。

スバルのプラットフォームは、4WDを前提にしています。そのため、フロントデフの位置に制約があり、エンジンはフロントオーバーハングに搭載せざるを得ません。このパッケージングでは、ヨー慣性モーメントが大となり、トヨタが目指す痛快なハンドリングは実現できません。そのため、86/BRZではFR専用シャシーを全く新規に開発していたのです。

つまり、86/BRZをフルモデルチェンジするには、まずは専用シャシーに手を付けねばなりません。ただ、初代デビューから9年を経てフルモデルチェンジとするからには、相当の技術的飛躍が無くては、ユーザは納得しないことでしょう。今回のフルモデルチェンジは、延命処置ではなく、真のフルモデルチェンジでなければならないのです。

 

そもそも、ライトウェイトスポーツはフルモデルチェンジサイクルが異様に長い。

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2代目86/BRZでは、シャシーに加え、各所に改善を加えつつもボディも基本的に流用されています。よって、2代目というよりは、1.5代目と言ったほうが適切かも知れません。

巧妙にデザインがなされているものの、Cピラー周辺等に初代の面影を見ることができます。ただ、ライトウェイトスポーツは価格帯が低めとあって、利益率はラグジュアリィGTの比ではなく、元来より息の長いモデルが多いジャンル。ロータス・エリーゼやマツダ・ロードスターなど、事例には事欠きません。911に至っては993まで流用だったのですし、ケータハム・セブンなどは言うに及びません。あれもこれもと存分に新設計が奢られた結果、価格が倍になってしまっては、誰も喜びやしないのです。そういう意味では、歓迎すべきモデルチェンジプランと言えます。

果てさて、スバル/トヨタの技術者たちは、延命を目的に「スキンチェンジ」で軽々に仕事を終えた訳ではありません。シャシー・ボディには、SGPで培われた最新のシャシー技術の数々が投入されています。その一つが、インナーフレーム構造の導入です。インナーフレーム構造は、欧州で先行して導入されたモノコック製造手法。生産性向上をはかるために、側ごとに組み立てたパネルを最後にアッセンブリーするのが従来工法。これに対し、主要フレーム部材を先行して接合していき、最後に外板パネルを貼り付けていくのが、インナーフレーム構造です。

従来工法に比して、より重点的にフレーム部材の接合を行えるために、同一設計であっても遥かに高いボディ剛性を実現可能です。86/BRZでは、接合に構造用接着剤を積極導入することで、更なる剛性向上を実現。その結果、フロント横曲げ剛性が約60%、ねじり剛性では約50%の向上を果たしています。加えて、ルーフ、ボンネットフード、フロントフェンダーをアルミパネル化。低重心化と、マスの集中化による重量配分の適正化及び慣性モーメント低減を図っています。

これら徹底した改善によりボディ剛性を大幅改善する一方、衝突安全対策及びエンジン出力向上に伴う重量増を最小限に抑制。ライトウェイトスポーツの魅力を失うことなく、新たな次元へと進化を果たしています。

 

外板はすべて全面刷新。まったく新たなイメージを得て、次なる5年へ。

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ボディは、基本的に流用とされているものの、外板はすべて刷新されているようです。一見流用と思えるドアパネルも、フロントフェンダー後方のエアアウトレットの造形が食い込んでおり、これも新設計。Aピラー付近も下端位置が変更されています。この他、ルーフ、ボンネットフード、フロントフェンダーがアルミパネル化されているのは、前述の通り。また、ドアミラーもラウンド形状へ変更されています。但し、グラスエリアは形状を維持。各ガラスパネルは流用と思われます。

これら大胆な外板全面刷新によって、デザイナーにはデザイン上の大きな裁量を手にしたようです。これまで無機質感の強かった印象は、爬虫類系のマッシブな印象へと、大胆チェンジ。フロントエンドはエッジの効いた各部の処理が実に小気味よく、折返し面が強いハイライトを返すことで、見る者に逞しく、力強い印象を与えます。一方、リヤエンドは初代の面影を全く残していません。リヤコンビランプはフェンダーに強く食い込む、逆三角形を形成。その上端は、ブラックのガーニッシュで左右が繋がれ、リヤ後端を引き締めています。また、トランク上面はダックテール状の造形とすることで、リヤエンドをより複雑かつ美しい、流れるような面構成としています。

特に、大きな進化と創意工夫が感じられるのが、ボディサイドです。ここは、初代の弱点でした。張りに欠け、抑揚もなく、のっぺりとした印象があったのです。2代目BRZでは、フェンダー上部の加飾を廃止し、大掛かりなエアダクトのモチーフを追加。さらに、エアダクトの下端の折返しをずっと後方まで貫きつつ、リヤフェンダーの抑揚へ繋げることで、ボディサイドにメリハリと抑揚感を与えています。

これだけ印象をガラリと変えつつも、スペック上は大きな変更はありません。特に不思議に思えるのが、全幅にまったく変化が無いことです。フェンダーに力感を与え、デザイン全体に躍動感を生み出すには、全幅を拡大するのがセオリー。ところが、グラスエリアをまったく継承しつつ、全幅を維持しながら、これだけの躍動感を生み出したデザイナーの仕事ぶりは、間違いなく称賛に値するでしょう。

 

エンジンは2.4L化。車重は、1200kg台を死守。ライトウェイトスポーツの魅力に磨きを掛ける。

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ファンが最も気になるのが、スペック。エンジンの2.4L化でしょう。ストロークこそ初代同様の86mmを維持しつつも、ボアを94mmまで8mm拡大。これにより、出力面で大きな強化が図られています。最大出力は207ps/7000rpmから231ps/7000rpmへ、11%の増強。最大トルクは212Nm/6400〜6800rpmから249Nm/3700rpmへ17%の増強と同時に、トルクピークの回転数低下を図っています。ただ、100ps/L・100Nm/Lを若干割り込む、キャラクターからすればおとなしい数値。

その狙いは、北米市場でしょう。広大な北米大陸には、直線路と交差点は数多あれど、痛快なワイディングは多くないのです。こういう環境では、クロスレシオでピークを繋いでいくドライビングよりも、ビッグトルクでのイージードライブがセオリー。そんな環境下で刺激を求めて辿り着くのが、絶対的な加速力。彼の地で「峠」よりも、「ゼロヨン」に人気があるのは、そうした環境に依るものなのです。そういう観点から、先代86/BRZは刺激に欠けた存在だったのでしょう。新型86/BRZが発売された暁には、ターボキットやスーパーチャージャー等で武装したチューンで、400ps級を絞り出した個体がSEMAに溢れることでしょう。

ただ、ポテンシャルはノーマルのままでも、ライトウェイトスポーツとしては充分なもの。衝突安全対策、装備充実等の厳しい要求に晒されつつも、車重は1300kg以下を死守。これに、249Nmものビックトルクが加われば、愛馬のスリップアングルは充分自在にコントロールできるはず。元来、ライトウェイトスポーツに求められるのは、絶対的なピークパワーではありません。何よりも大切なのは、リニアリティとレスポンス、そして予測性です。如何に右足に忠実に反応するか、常に予測通りのトルクをデリバリーできるのか。性能より愉しさ、ポテンシャルよりも人馬一体感。それが、ライトウェイトスポーツなのですから。

新型86/BRZは、ボディ剛性向上と変わらない車重、一気に増した低速トルクにより、よりイージーにワイディングを愉しめる頼もしいライトウェイトスポーツに進化していることでしょう。

 

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