空を飛べば、自動車は進化するのか? [2023年11月12日更新]
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デカい・エライ・速いの他に、価値はないのか。
ここまで考えるに、クルマが空を飛ばねばならない必然性があるようには、どうしても思えません。それに、空飛ぶクルマが実現したとして、世の中が激変する予感もありません。その理由は、単純です。自動車が現状抱えている問題は、空を飛ぶことでは解決できないからです。交通渋滞、交通事故、大気汚染、燃料確保、廃棄物、そして大量の二酸化炭素排出。寧ろ、空飛ぶクルマはそれを加速させる存在になるでしょう。
真剣に空飛ぶクルマの開発を検討しているOEMが存在するとすれば、その良識を疑わざるを得ません。OEMがまず成すべきは、地球と人類が直面している「持続不可能性」を解決することでしょう。それには、より環境負荷の小さい製品を実現する努力を継続しつつ、廃棄物を極減させることです。
その実現するには、OEMがユーザーの意識を転換する努力が不可欠です。「デカい方がエライ」「重厚長大が高級」「速い方がスペシャル」「3年で新車に代替え」から「小さい方が先進的」「軽量コンパクトが正義」「速いことに意味がない」「20年以上長く使える」へと、ユーザーを導いていかねばなりません。自動車産業は、持続可能な社会の実現のために、価値の転換が急務なのです。
では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか?自動車産業が追求してきた、徹底的な合理化を維持・発展させつつ、軽量・コンパクトな車両にシフトしていく。そして、デカい・エライ・速いから完全に決別し、環境負荷の小ささに新たに価値を見出すべきです。例えば、上級グレードに、燃費向上と航続距離延伸を目的に、ルーフ部分に再生可能な樹脂パネルを採用する。上位モデルでは、より高価な素材を使用することで、より小さなボディで高い快適性と同等以上の安全性能を確保する。価値づくりの発想を転換することで、持続可能な社会に相応しい新たな魅力を創造するのです。
他の産業では、そうした価値観の転換は既に実現しています。コンビニにフードバンクを開設したり、フェアトレードを考慮した製品が登場したり、製品のパッケージを簡略化したり、詰替え製品をメインに据える、電気自動車を配送に使用する等々、こうした努力の中には利益率確保と逆行しているものも存在します。でも、社会的責任の中で先進的な企業は、発想を転換しつつあるのです。
そうした努力が全く立ち遅れているだけでなく、デカい・エライ・速いに固執して利益を生み出し続ける自動車産業は、社会的責任の下で猛省をすべきです。空飛ぶクルマなど、全く笑止千万。やるべきこと、やらねばならないことは、他に幾らでもあるはずです。