スバルショップ三河安城の最新情報。ポルシェ、本当にルマン撤退。行き先は、Formula E。| 2017年8月11日更新
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新時代のモータースポーツ、Formula Eとは。
世界で初めての本格的EVレースであるFEは、F1同様のスタイルを持った完全EVマシンがスプリントレースで競います。騒音や排ガスの懸念がないため、全てのレースが都市の特設市街地コースで開催されるという、斬新なレースシリーズです。
参戦コストを抑制するため、現在は開発範囲が限定されていますが、規制は徐々に緩められていく予定です。欧州メーカーは、将来技術の推進とEV時代の技術的プレゼンスを示すため、FEに強い関心を持っているのです。
2020年以降、FEでは激しいコンペティションが繰り広げられる事でしょう。参戦費用が指数関数的に高騰し、技術は加速度的に高度化。次々に高価な新技術が実用に供されていくことでしょう。問題はFEにそれに見合うだけの価値があるかどうか、です。その価値が無ければ、節操もなくワークスは次々に表舞台から去っていきます。彼らを永続的に繋ぎ止めるには、先進性だけでは不十分です。FEが、F1やルマンを凌駕する価値を持たねばならないのです。
しかし、FEがF1やルマンの価値を上回ることはありません。現在のFEには、スターも歴史も無いからです。いつしか、FEの価値は莫大な予算に見合わなくなる日が来ることでしょう。
内燃機関のリミットまであと10年?今、急速に進化するエンジン技術。
既にやり尽くした感のある内燃機関ですが、ここ数年で急速に発展を遂げています。10年前まではパワーと燃費は相容れないものでしたが、今やその両立が可能になっています。そのカギは、圧縮比の向上にあります。
単純に、シリンダーにより多くの酸素と燃料を詰め込めば、より大きな出力が得られます。当然ながら、その分燃費は悪化する・・・。
これが、今までの常識でした。カタログ燃費が良くても、実走行では興ざめの燃費にしかならないのは、加速時には出力を得るために大量の燃料を詰め込まざるを得ないからです。
熱力学で熱機関について学べば、圧縮比がキモであるというのは基礎中の基礎です。ガスタービンの熱効率が遥かに優れているのは、圧縮比が30:1に達するからです。ところが、ガソリンエンジンで高い熱効率を期待して圧縮比を上げようにも、ノッキングのような異常燃焼が起こるため限界がありました。それ故、数十年来に渡ってNAでは12:1程度、ターボでは10:1程度に留まってきたのです。
驚愕の圧縮比、18:1!!
ところが、最新のレーシングエンジンの圧縮比は、18:1以上とも言われます。圧縮比が2倍になれば、熱効率は相当程度に向上するでしょうし、パワーと燃費の両立が可能になります。
圧縮比向上の第一のカギは、直噴です。ガソリンを含む混合気ではなく、空気のみを圧縮するため、ノッキングのリスクが少ないのです。加えて、圧縮行程中に微量の燃料を噴射することで、気化潜熱によってシリンダー内温度を下げて、充填効率をさらに高めることが可能です。
しかし、直噴だけでは熱効率に限界があります。さらなる熱効率の向上のためには、極端な希薄燃焼を目指さねばなりません。ガソリン噴射量を減らしつつも、高い熱効率でさらなる高出力を引き出す。それが、現代のレーシングエンジンです。
実現のカギとなったのは、TJI(タービュランスジェットインジェクション)というマーレ社の技術です。TJIは、燃焼室頂点に副燃焼室があるのが最大の特徴です。非常に小さな副燃焼室内には、専用の直噴インジェクションとスパークプラグがあり、着火によって生じる火炎が主燃焼室に火炎放射器のように噴出します。主燃焼室の混合気は、直接火炎で着火を促されるため、より薄い混合気でも素早い燃焼が可能となります。
さらに、排気からはターボによって、減速時には回生ブレーキでエネルギーを回収。システム全体での熱効率は、今や発電所並の50%に到達したと言われています。
今年のルマンでは、300km/hオーバーに5回も達する超高速サーキットにも関わらず、予選での平均速度は250km/hに到達する一方で、燃費も3.16km/Lに達しました。チョット前のレガシィが、街乗りで5km/Lだったことを考えると恐ろしい限りです。
夢の技術、HCCIエンジンは実用間近。
マツダが発表したSPCCIエンジンは、大きなニュースとして話題となっています。これも、新時代の内燃機関のひとつです。マツダが目指したのは、(HCCI)予混合圧縮着火と呼ばれる燃焼方式のエンジンの実用化です。
純粋なHCCIは、ガソリンエンジンをディーゼルサイクルで運用しようというものです。そのため、HCCI領域ではプラグは停止し、火花着火はしません。シリンダー内の極めて均一かつ極めて薄い混合気を高圧縮すると、高温高圧下で同時多発的に自己着火、全体が均一かつ高速で燃焼します。燃焼完了が速いため、上死点近くで最大燃焼圧を得られるため、実質的圧縮比も高くなります。空燃比が低いため火炎温度は低く、燃料の過濃部分もないため、大気汚染物質の生成も極めて少なくなります。熱効率が高く、高出力でクリーン。それがHCCIです。
制御されたノッキング、そんな表現が的確かも知れません。ノッキング退治にあれだけ苦労してきたのに、それを制御するというのですから、HCCIの難しさが分かろうというものです。
HCCIエンジン実用化に際しての課題は、HCCI領域と通常燃焼領域の境をどう埋めていくか、どれだけ広い領域でHCCIを実現するか、にあります。HCCIとはいうものの、HCCI燃焼する領域が殆どないのでは、まったく意味がないのです。
マツダがSPCCIと名付けたのは、HCCI領域を広げるために、火花着火で圧縮着火を制御しようという新たな手法を用いてるためです。実用化は2019年に予定されています。
来年以降のIMSAで、この技術が使われることはないのでしょうか。メカニズムは、通常のエンジンと変わりませんから、実戦投入も可能と思われますが如何でしょう。
2019年投入の新設計ダウンサイジングターボに投入される、AICEの成果。
スバルも、2019年投入に向けて新設計ダウンサイジングターボエンジンを開発中です。熱効率のさらなる向上には、超高圧縮化と超希薄燃焼、充填効率向上はマストです。それには、より進化した直噴インジェクターと緻密な燃焼制御、次世代ターボチャージャ等々が必要です。個々の部品となると、それはメーカーの技術領域ではありません。最早、現代のエンジン技術は自動車メーカー単独では実現不可能な領域に到達してしまっているのです。
現時点ではスバルの次世代エンジンにどんな技術が投入されるかは未だ不明ですが、産学協同の研究機構であるAICE(自動車用内燃機関技術研究組合)での研究成果が投入されるのは間違いないようです。
産学協同で、欧州メーカーに立ち向かえ!
AICEは国内9メーカーとメガサプライヤー、産総研や日本自動車研究所、さらには大学とも連携しつつ、国家プロジェクトとして次世代エンジンの技術の習得・獲得することを目的にした研究機関です。賛助会員はAICEでの成果を持ち帰って、次世代エンジン及びその周辺部品の革新を図ることができます。
日本でなぜ、AICEが必要とされたのでしょうか。それには、国内メーカーに根強く存在した「系列」が関係しています。親玉には自動車メーカーがおり、サプライヤーはあくまで子分。技術も人材も、系列以外には門外不出。近年の系列崩壊にによって、サプライヤー同士の競争は激化したものの、主従関係には変化はありません。言われた通りのモノを納品するのが、サプライヤー。それが、日本国内の自動車産業の構図です。技術交流がないので、メーカーの垣根を超えて技術が共有されることはありません。
一方、欧州では、自動車メーカーとサプライヤーはあくまで対等。欧州のサプライヤーはM&Aによって巨大化が進行、自動車メーカーを上回る規模へと成長しています。メガサプライヤーは、自身で巨大な研究施設を保有し、メーカーに対し新技術の採用を逆提案しています。逆に言えば、メーカーはお金さえ払えば、最新技術をいつでも入手可能。技術も人材も交流が豊富なため、最新技術がすぐに普及します。これが、現在の欧州メーカーの強さの源となっています。
日本はAICEにおける産学共同研究によって、欧州メーカーに立ち向かおうとしているのです。世界有数のメーカーにすれば明らかに規模の小さいスバルですが、その恩恵を受けるのは間違いないようです。