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新世代アイサイト:2020年〜
2020年12月に新型レヴォーグとともに登場した、新世代アイサイト。ハードウェアをヴィオニア製に変更し、ソフトウェアも完全新規開発とすることで、2020年代を担うに相応しい画期的能力が付与された、次世代のアイサイトです。ハードウェアの供給元を日立オートモティブ(現日立アステモ)からヴィオニアに切り替えているため、従来の延長線上で開発された正常進化版ではなく、全く新たなADASと考えた方が適切でしょう。ver.4と呼称されないのは、そのためと思われます。
すべてを統括するヴィオニア製アイサイトユニットは、視野角と画素数を2倍に向上したステレオカメラと、高速大容量処理を可能にするザイリンクス製「Zynq UltraScale+ MPSoC」の構成。これに加え、各コーナーにミリ波レーダー計4個を追加することで、360度センシングを実現。新たに斜め方向及び出合い頭のシチュエーションに対応しています。
新世代アイサイトには、アイサイトX仕様とレス仕様の2種が用意されています。
レス仕様は、ステレオカメラユニットと4個のミリ波レーダーのみの構成。360度センシングにより、AEBの作動シチュエーションが追加され、右左折時の対向車・対向歩行者、直進時の横断自転車、直交する車両への対応が可能になりました。また、追突が不可避な場合に車線内で回避運動を行う緊急時プリクラッシュステアリングが追加されています。一方、運転支援システムはver3.5と同等であるものの、視野角と画素数の倍増を活かした改良がなされています。標準装備は、スバルリヤビークルディテクション、アレイ式アダプティブドライビングビーム、後退時自動ブレーキシステム。オプションで、デジタルマルチビューモニター(フロント、サイド、リヤ)、スマートリヤビューミラーが選択可能です。
もう一方が、巷で話題のアイサイトX仕様です。ドライバーモニタリングシステム、GNSSアンテナを含むロケータと3D高精度地図ユニット、フル液晶メータ+センターインフォメーションディスプレイ、テレマティクスユニットを追加。これにより、道路状況を先読みした車両制御を実現した他、テレマティクスサービスが新たにスタートしています。具体的には、先進運転支援システムには、渋滞時ハンズオフ、渋滞時の再発進、自動レーンチェンジ、カーブ手前減速、料金所手前減速を追加。また、ACC作動中に一定時間以上操作が確認されない場合に自動で車両を停止させる機能も追加されています。テレマティクスサービス・SUBARU STAR LINKは、事故等の異常発生時に於ける救命率向上を目的としており、オペレーションセンターに接続して救援要請を行ったり、リモートで車両状況を把握することが可能になっています。この仕様では、デジタルマルチビューモニターも標準装備であり、スマートリヤビューミラーのみが選択可能オプションとなっています。
新世代アイサイトは、今後も各車種に導入が進んでいくものと思われます。ただ、BRZの米国仕様のように依然としてver3系を搭載してデビューする車種もあることから、原価を見つつ適宜導入を進めていくものと思われます。アイサイトXは、追加コンポーネントが多岐に渡るため、暫くは上級車種に限って搭載されることになるでしょう。
EyeSight オプション一覧
アイサイトの追加オプションは、アイサイトセイフティプラス[運転支援]とアイサイトセイフティプラス[視界拡張]の2つです。2017年に初設定されたオプション群で、運転支援のみと、これに視界拡張を加えたメーカーオプションパックとして選択出来るようになっています。
各モデルごとにオプション設定が異なるために、それぞれの内容も異なります。まずは、アイサイトのオプションについて、コアユニット以外に追加される安全装備を含め、詳しく見ていきましょう。
スバルリヤビークルディテクション:レヴォーグに標準装備、フォレスター、インプレッサ/XVにオプション設定
リヤバンパーの左右コーナー部にミリ波レーダーを内蔵。最大70m後方から接近する車両を探知、ドアミラーのLEDインジケータでドライバーに危険を伝えるものです。死角に潜むリスクを軽減できるため、非常に有効性の高いオプションだと言えるでしょう。
但し、アイサイトのように対象物体との相対位置を予測するような、高度なシステムではありません。例えば、駐車場構内でバック中にも関わらず、表の道路を走るクルマの接近を警告してしまう場合もあります。それでも、リスクを犯して先を必要は無いわけで、警告が遭った場合は一旦停止し、周囲を良く確認した上で再度バックすることをオススメします。
その機能は、大きく3つに分類されます。
死角車両検知
前進走行中、自車側方の死角に入った車両を探知。その存在をLEDインジケータで知らせます。探知範囲はコーナー部を基点に、前方1m・左右4m・後方4mと限られているため、接近車両ではなく、並走する車両を探知するものです。但し、すぐ横を並走する小型車両(2輪等)は探知範囲外となりますので、注意が必要です。
車線変更支援
高速で後方から接近する車両を、最大70mまで探知。4秒以内に接触の危険性がある場合に、LEDインジケータ点灯で知らせます。衝突の危険があるにも関わらず、車線変更を試みた場合には警報で注意を促します。但し、探知には一定の時間を要するので、合流直後の続け様の車線変更では、探知は間に合いませんので、注意が必要です。
新世代アイサイトを搭載するレヴォーグでは、車線変更そのものを抑止するエマージェンシーレーンキープアシストが作動します。
後退時支援
駐車場や狭い路地でバックする際、3.5秒以内に衝突の危険性がある場合に、接近車両や歩行者等の存在を警報音で知らせます。探知範囲は、後方約7m、左右約30m。目視及びバックカメラの視界外の物体を探知してくれるため、極めて有効性の高い装備だと言えるでしょう。
後退時自動ブレーキシステム(RAB):全モデルに標準装備
後退時自動ブレーキシステムは、リヤバンパーに内蔵された4つのソナーセンサーで障害物を探知。障害物との距離を測定しつつ、衝突が懸念される場合は自動ブレーキが作動します。
ディーラーナビであれば、ガイド線がバックカメラ映像に重ね合わせて表示されますから、MFDに表示されるRABの接近情報と合わせて、バック時のリスクを判断することができます。
実際には、自動ブレーキが作動するより前に、警告音で危険に気付いて、自らブレーキを掛けるパターンのほうが多いように思います。なお、探知に超音波を用いる故に、草やポール、布団などの反射が弱い物体には対応しませんので、注意が必要です。
RABの標準装備化に伴って、オプションのディスプレイコーナーセンサーはフロントのみの設定となっています。
アダプティブドライビングビーム:レヴォーグに標準装備、フォレスター、インプレッサ/XVにオプション設定
LEDプロジェクター内部に、ロータリーシェードを内蔵。このシェードを回転させることで、ハイビームの照射領域に影を作り、ハイ/ローの制御のほか、対向車の幻惑を防止します。なお、制御にはステレオカメラ情報が用いられています。現行モデルは全てライトスイッチから「OFF」が廃止され、常時「AUTO」の設定となっています。アダプティブドライビングビームを作動させる場合、ライトスイッチを前倒ししハイビーム位置にしておくことで、適宜ハイビームが作動します。
なお、新型レヴォーグでは、シェード式ではなく、新たにアレイ式を採用しています。アレイ式とは、ヘッドランプ内に配列された12個のLEDチップを、チップごとに明るさを調整することでハイビームの配光を制御するもので、シェード駆動部が存在しないため機構はシェード式よりシンプルになります。
また、LEDヘッドランプにはスイブル&レベリングアクチュエータが内蔵されており、コーナリング時の配光制御及びレベリング制御を行います。
追加モニター類:全モデルにオプション設定
スバルの誇る、広々とした視界。これをアシストするのが、各種モニター類です。アイサイトセイフティプラス[視界拡張]では、各モデルごとにフロント/サイドのモニターがパッケージされていますが、レヴォーグのみはサイド/フロントにリヤを加えた3点パックをデジタルマルチビューモニターとして設定しています。
サイドビューモニターは、助手席側ドアミラーに内蔵されたカメラの画像をMFDに表示し、斜め下方の視界を得るものです。インプレッサ/XV、レヴォーグでは、アイサイトセイフティプラス[視界拡張]として、メーカーオプションの設定になっています。これに対し、フォレスターは斜め下方のミラーを廃止する代わりに、全車標準装備となっています。
フロントビューモニターは、フロントグリルに装着されたカメラの画像をMFDに表示し、車両直前の視界を得るものです。死角の多い交差点での飛び出し事故防止、幼児の巻き込み防止を狙った装備です。アイサイトセイフティプラス[視界拡張]として、レヴォーグ、フォレスター、インプレッサ/XVで装着可能です。
リヤビューモニターは、インプレッサ/XV、フォレスターではディーラーオプションの設定です。新車とセット購入であれば、ナビパックとしてお得な価格で装着が可能です。これに対し、レヴォーグではアイサイトセイフティプラス[視界拡張]に組み込まれたため、メーカーオプションでの設定となっています。
スマートリヤビューミラー:フォレスター、レヴォーグにオプション設定
ハッチゲート上部にカメラを内蔵し、カメラ画像をリヤビューミラーに表示するものです。常時はミラーとして機能しますが、防眩レバーを動かすことでモニターとして機能させることができます。夜間でも明るく表示されるため、後方視界を得るには最適です。リヤの中央席を利用する場合などに、多いに活躍することでしょう。
ただ、ミラーで虚像を見るのと違って、モニターと目の距離が非常に近いがために、遠視の方には少し辛いかも知れません。長時間使用すると、ガツンと目に疲れが来ます。