スバルショップ三河安城の最新情報。遂にベールを脱いだ、2代目BRZ/86。ピュアスポーツの新たな価値と、その未来とは?| 2021年4月9日更新
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自動車の未来に立ちはだかる、CAFE規制という壁。スポーツカーは、生き残ることが出来るか。
2代目となるBRZ/86の誕生により、2020年代後半まで私たちはピュアスポーツという貴重な選択肢を得ることができました。マツダ・ロードスターと並んで、古き良きスポーツカーという人馬一体の味わいを、今暫く私たちは愉しむことができます。ただ、その存在が既に風前の灯火であろうことは、周知の事実です。
時代の流れか、親不孝の報いか。SDGsという人類共通の課題に直面し、世界のOEMは「CAFE規制」に頭を悩ませています。CAFE規制とは、その年の販売全車両の平均燃費値に対し、一定の規制するもの。2030年には国内でも全面施行となり、その燃費値は25.4km/Lを越えねばなりません。
特に深刻なのが、コンパクトカーをラインナップしないOEM。例えば、スバルには燃費値が30km/Lに達するモデルは無く、10km/Lソコソコというモデルを多くラインナップしています。こういったOEMは、モデルラインナップを刷新しない限り、CAFE規制のクリアは不可能です。本格規制まであと9年。既に、スバルは喉元にナイフを突きつけられているも同然の状態です。
となれば、台数が稼げない悪燃費モデルから、ラインナップから外していくしかありません。そこで槍玉に挙げられるのが、スポーツカーです。多くのスポーツカーが、専用シャシーに専用エンジンを搭載しており、モデルチェンジには多額の開発コストを要します。そのため、多くのスポーツカーがその命脈を絶たれてきたのです。
しかし、スポーツカーをリストラする事は簡単でも、それなしでブランドの価値と個性を維持することは容易ではありません。そのブランドが何を希求し、どんな価値を望んでいるのか。その表現手段として、スポーツカーは適任なのです。これを失った途端、迷走を始めるブランドが多いのもそのためです。
自動車文化を象徴する、スポーツカーという無二の存在。そして、ピュアスポーツという前時代的様式。
より良きスポーツカーを駆ると、まるでクルマと自分が一体になったかのような、不思議な感覚が得られます。脳内でイメージした通りに、ワイディングをヒラヒラと駆け抜けていく時、ドライビングは至上の喜び=官能となって、全身を包み込むのです。こんな感覚はスポーツカーを置いて他には無いでしょう。
スポーツカーという存在は、自動車文化の象徴です。自動車の持つ面白み、世界観、文化的背景・・・スポーツカーにはそれらが渾然一体と成ってギュッと圧縮されて詰め込まれています。性能や経済性だけではない、感覚を越える官能的な世界。イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、日本。各々が生み出すスポーツカーは、それぞれに全く違う味わいを持っています。
それは、スポーツカーというものの評価軸を、官能、興奮といった感覚的世界に置いているからでしょう。何を喜びとし、何に興奮するのか。そこには、作り手の人間性と文化・文明的背景が色濃く反映されている。だからこそ、スポーツカーは面白いのです。そして、スポーツカーがあるからこそ、クルマは単なる「乗り物」ではなく、文化たりえるのです。
ピュアスポーツとは、その中でも輪をかけて貴重な存在です。往々にして、スペックは平凡で、実用性は最低限で、プレミア感もない。。。そう、走っていないピュアスポーツには、何の価値もないのです。フェラーリやポルシェのように、寝かせておくだけでも価値が出る。そういうものでは無いのです。だから、分かる人にしか分からない、通好みの存在。
逆に言えば、それは古き良き伝統であり、前時代的様式でもあります。ちっともエコではなく、電動化なぞ以ての外で、出来ればMTで味わいたい。CASEだの、MaaSだのと騒ぐ時代には、ピュアスポーツなぞ全く時代不適合な過去の遺物なのです。
スバルとトヨタは、なぜBRZ/86をフルモデルチェンジしたのか?2代目が担う、重責とは。
では、なぜスバルとトヨタは、このピュアスポーツカーの延命を決断したのでしょう。スバルにとってはCAFE規制対策にマイナスでしかなく、トヨタのモビリティカンパニー化には全く必要ない存在に思えます。
今、自動車産業は岐路に差し掛かっています。文化としての地位を守り抜くのか、家電同様のコモディティ化の道を歩むのか。それは、クルマがクルマであり続けるのか、それともインフラとしてのモビリティになるのか、という選択でもあります。
もし、後者ならば、自動車産業は全世界的な過当競争時代に突入し、収益はガタ落ちとなって、日本のGDPの10%近くが泡と消えるでしょう。しかし、今の若者たちの望みは、むしろ後者に向いているように見えます。
より安価で買えて、維持が楽で、誰でも乗れて、出来るなら自動で走ってほしい。そんな自動車なら、文化も伝統もあったものじゃありません。走るだけだから、どれでも一緒。安けりゃ、安いほうがイイ。何なら、シェアリングで充分。すなわち、それはモビリティです。
しかし、自動車産業がこれからも安定した収益を確保するには、消費者が自ら望んで、より良いクルマを求めるような文化が必須です。それには、クルマはもっと魅力的な存在でなくてはなりません。人生の喜びと愉しさを与えてくれるような、購買意欲を痛烈に刺激する存在であり続けなければならないのです。
トヨタは時代の荒波を乗り越えるために、自らモビリティカンパニーへのリボーンを選択しました。しかし、クルマのモビリティ化は、コモディティ化という深刻なリスクを孕んでいます。それは、未来への一歩であると同時に、破滅への一歩でもあるのです。
だからこそ、トヨタはピュアスポーツを必要としたのです。クルマがもっと魅力的であるために、自動車が文化としての地位を守るために。2代目BRZ/86は、実は重大な責務を担っているのです。
登場は、2030年。果たして、3代目BRZ/86はどんな姿なのか?CAFE規制を生き残ることが出来るか。
さて、3代目BRZ/86は如何なる姿となるのでしょうか。恐らく、その誕生は2030年頃。CAFE規制が全面施行される、ちょうどその頃にBRZ/86はモデルチェンジのタイミングを迎えます。
今現在の方程式を当てはめれば、全個体電池を搭載したBEVとなるはずです。ADASはレベル4を実現し、殆どのシーンでドライバーエイドが作動可能になるでしょう。しかし、本当にそうなるのだとすれば、BRZ/86はその存在価値を失うことでしょう。そして、2030年はピュアスポーツが命脈を絶たれた年となり、すべての自動車ファンは悲嘆に暮れることになるります。
ただ、一概にそうとも言えません。なぜなら、OEMたちはモビリティ化=コモディティ化の流れに激しく逆らうはずだからです。逆に、自動車という機械製品が何らかのブレイクスルーを経て、全く新たな価値を得ていたとすれば、3代目BRZ/86が生き残る隙間も生まれる可能性があります。
なぜなら、未来のクルマが「面白い」とは、とても思えないからです。人類は、機械を操り、颯爽と駆け抜けたい、そんな欲望を忘れたことはありません。かつては、大海原を征く船であり、選りすぐりの自動車であり、大空を舞う飛行機であり、そして将来は宇宙へと足を伸ばすことを望むでしょう。
人類がSDGsを前に、修行僧の如く煩悩すべてを捨て去ることは不可能です。自動車という身近な存在を存分に駆り、スペクタクルを味わいたい。。。そんな願望を消し去るのは不可能です。しかし、2030年代に暴力的にエネルギーを浪費する存在が許されるとは、思えません。だからこそ、コンパクトでミニマムなピュアスポーツなのです。
恐らく、3代目BRZ/86は2030年代最新の技術の適用によって、重量は半分程度にまで削減され、エンジンも半分近くダウンサイジングされるでしょう。カタログ燃費は、30km/L程度にまで進化して、新たなる時代に自動車の愉しさを授けてくれるに違いありません。
スバルとトヨタの協業。その行き先に待ち受けるものとは?
2代目BRZ/86という、新たな結果を残したスバルとトヨタの協業。両者はこの先、どのように歩いていくのでしょう。
トヨタは、間違いなくモビリティカンパニーとしての歩みを着々と進めていくはずです。ウーヴンシティを実現し、新時代のモビリティの実証実験が始まります。そして、そこで得られた貴重な知見の数々が、未来の自動車のあり方を指し示すことになるでしょう。
一方、スバルはそのカウンターパートとしての存在を色濃くしていくはずです。クルマらしいクルマを、とことんこだわって作る。少し前時代的だけれど、昔ながらの変わらない良さがある。つまり、今のスバルのクルマ創りを堅持しつつ、トヨタグループの技術を活用して、時代に適合していくものと想像されます。また、ブランドイメージは、GRと近しい存在として位置付けられていくはずです。
ただ、トヨタはモビリティ化という未来の前に、強大な敵に打ち勝たねばなりません。それが、護送船団方式でBEV戦略を展開するEU勢です。このままでは、中国、米国という巨大市場の技術的主導権は、彼らに奪われてしまいます。しかしそれは、トヨタにとって、日本の自動車産業にとって、最悪のシナリオです。
トヨタは、最低でも米国市場での主導権を確保せねばなりません。この巨大な市場を失えば、日本の自動車産業は一気に縮退を余儀なくされます。ただ、EU勢は都市部を中心に、充電規格等で主導権を着々と奪っていくはずです。
トヨタにとって残された最後の選択は、決して多くありません。その一つが、新たな価値の獲得です。今は10代前半の世代が、魅力を感じる新たな価値。それが提示できた時、市場は再びトヨタに利を授けることになるでしょう。
ただ、その新たな価値を想像することは、決して容易ではありません。もしかすると、自動車という現物をベースにしか発想できない自動車エンジニアには、土台不可能なのかも知れません。
唯一考えられる選択が、アップルとの協業でしょう。ウーヴンシティにアップルを誘い、そこで新たな価値の創造を目指す。もし、その価値が時代を変えるようなものならば、自動車という産業は息を吹き返し、時代の最先端を再び歩み始めることが出来るかも知れません。