スバルショップ三河安城の最新情報。新型インプレッサが、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。| 2016年12月10日更新
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新型インプレッサ、日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠に輝く。
スバル自身、初代レガシィ以来の「一大革新」だと公言し、鳴り物入りで登場した新型インプレッサ。ところが、登場したのはハイブリッドでもディーゼルでもスライドドアでもない、ごくフツーの乗用車でした。
そんな新型インプレッサが、2016−2017年日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠に輝いたことは、驚きと共にニュースで伝えられています。何しろ、豊田章男社長肝入りで開発された4代目プリウス、これを凌駕しての受賞なのですから。「番狂わせ」と言ってもいい結果でしょう。
受賞理由を細かく見ていくと、世界最高の安全性能と共に走りのレベルが欧州車に近づいたと、高評価しているのが分かります。やはり、自動車評論家たるもの全員が「クルマ好き」。たっぷり、クルマの愉しさが感じられる新型インプレッサの哲学が、評議員の心に強く響いたのかも知れません。
トヨタが後押しした、原点回帰への道。
しかし、トヨタに勝ったと喜ぶのは、存外に筋違いかもしれません。なぜなら、トヨタの支え無しでは、スバルは新型インプレッサの開発に全精力を投入することができなかったのです。
現在スバルが販売する軽乗用車は、トヨタの子会社であるダイハツ工業から供給を受けたアライアンス車です。軽乗用車メーカーとして自動車産業に進出したスバルですが、2012年を持って軽自動車生産から完全撤退。代わって生産を開始したのはトヨタとの共同開発車「86/BRZ」でした。苛烈な競争が始まりつつあった軽自動車市場を勝ち残れる体力は、当時のスバルにはありません。北米を主眼とする乗用車に集中するという「選択と集中」が果たせる、トヨタからの資本提携+86/BRZの開発・生産の提案は、スバルにとって正に渡りに船だったのです。
この際、トヨタ家側からスバルに対し「スバルはスバルらしくあって欲しい」との助言がなされたと言われています。当時、スバル党が案じていた、「スバルのトヨタ化」とは正反対の方向に歩み出すことができていたのです。
トヨタ化へ突き進み、再び迷走を始めたスバル。
2009年に登場した5代目レガシィの広報資料を読んでいくと、新型インプレッサと多分に趣きの異なる語句が並んでいることに驚かされます。リヤサスでは、「サブフレームと車体の間にも大型ブッシュを介する二重防振構造を採用。路面からの振動・騒音の入力を抑え、乗り心地と静粛性を高めています。」との記述。これは、ハンドリング精度の向上には、真っ向から逆行するものです。
この頃、スバルは再び迷走を始めていたのです。スバルが目指していたのは、明らかにトヨタでした。ゴムブッシュを積極的に活用してNVHを手近に向上させる手法は、トヨタの開発手法そのもの。
コストの掛かるDピラーのブラックアウトを廃し、ボンネットも鋼製に戻されました。これは、レガシィではない!そんなスバル党の悲痛な声は、もう届かなくなっていたのです。
皮肉なことに、ボディがアメリカンサイズに拡大された5代目レガシィは、商業的に大成功。北米市場でのスバル大躍進のキッカケは、この5代目レガシィだったのです。商業的な成功は時にメーカーのアイデンティティを破壊します。オデッセイとステップワゴンで経営を立て直したホンダは、その好例でしょう。
幸いにして、スバルはそこに陥ることはありませんでした。トヨタとの資本提携があったからです。
一般道試乗:安心感に包まれながら、ガンガンに踏んでいける。恐ろしい完成度の高さ。
トヨタとの資本提携によって開始された「2ドアスポーツカー」の開発は、スバルが「トヨタとの違い」を痛感し、スバルらしさを際立たせる、又とない機会ともなりました。
当初は、開発手法の違いによって「言葉が通じない」ことに苦労したと言われています。
トヨタは、開発プロセスを細分化して専業化しています。例えば、サスペンションの煮詰めに際して車両実験を実施すると、試験計画を立案する人、試験を実施する人、試験結果をまとめる人、試験結果を解析する人、それらはすべて別の人物が担当します。子会社を含め、これらを横断的にトヨタ自動車のプロジェクトリーダーが強力な権限のもと管理しています。
一方のスバルでは、熟練のエンジニアが自らテストコースを走り込んで、バラしては組み直し、セッティングを少しずつ煮詰めていきます。数値よりも「シリ感」という感性を重要視し、こだわりを重ねて開発していきます。到底21世紀で行われるとは思えない、古典的手法です。
スバルでは当然の「数値に現れない部分に対するこだわり」は、トヨタには皆無。そんな所にこだわっていては、矢継ぎ早に全世界に新型車を投入するトヨタの開発ペースに間に合わないのです。トヨタは、開発過程も生産工程にならって流れ作業として、開発過程を大幅に効率化しているのです。
企業として目指す所が違うのですから、開発手法が異なるのは無理からぬこと。そこで、スバルは「スバルらしさ」を追求すために、開発手法をトヨタ式に改変することなく、維持・強化することを決めます。スバルらしさの原点は、独特の開発手法と「こだわり」にあることに気が付いたのです。スバルが、迷いを脱した瞬間でもありました。
徹底的に鍛え上げられたシャシーを持つ、新型インプレッサ。
5代目レガシィが採用したSIシャシーは、その2年前に登場した3代目インプレッサで初採用したプラットフォームでした。プラットフォームは、少なくとも2世代は継続しないとペイができません。そこで、6代目の現行レガシィがSIシャシーを採用する最終モデルとして、新設計プラットフォームの開発に着手します。
これと並行して、スバルは「動的質感」という言葉を全車種の開発コンセプトの中心に据えて、「スバルらしさ」を取り戻すべく、改良を施していきます。6代目レガシィとレヴォーグ/WRXでは、プラットフォームに大幅補強を実施。走りの根幹たる、シャシー性能の向上を目指します。マイナーチェンジを含め、可能な限り「動的質感」の改善を進めていきます。ただ、抜本的な改善には、プラットフォームの全面刷新は不可欠。そんな限界も痛感することになります。
クルマの魅力がたっぷり詰まったインプレッサは、クルマの未来を変えられるか。
新型インプレッサが初採用したスバルグローバルプラットフォーム(SGP)は、「スバルらしさ」を存分に発揮するために全精力を投じて開発が行われました。スバルが主眼に置いたのは、あくまで安全と走り。これを世界最高レベルに引き上げることにありました。SGPは、前後に7本ものフレームが通貫する、見るからに強靭な骨格を有しています。この強靭な骨格が、新型インプレッサの正確無比なハンドリングを生み出しているのです。
自動車産業は、確実に電動化と自動運転の実現へ向けて進んでいきます。次第に人々はクルマに所有の喜びを感じることは無くなり、単なる移動体としてその存在を認識するようになるでしょう。そんな時代に、スバルがスバルである必要は、既に失われているはずです。しかし、それは自動車工業界にとって最悪の結末でもあります。
かつて、若者たちは争って「夢のクルマ」を買い求めました。ユーザーのクオリティ・パフォーマンスに対する高い要求が、日本の自動車技術レベルを急速に向上させていったのです。クルマが単なる移動体に成り下がれば、家電業界同様に価格競争で販売する以外に道は無くなり、自動車産業は衰退し、縮小していくでしょう。
新型インプレッサは、クルマの魅力をたっぷり持った本当に素晴らしいクルマです。運転する喜びを感じ、時に遠出をしたくなる、そんなクルマに仕上がっています。果たして、そんな新型インプレッサが自動車評論家だけでなく、大衆の広い支持を集められるのでしょうか。新型インプレッサに、熱い注目が集まっています。