スバルショップ三河安城の最新情報。遂にベールを脱いだ、2代目BRZ/86。ピュアスポーツの新たな価値と、その未来とは?| 2021年4月9日更新
ニュース ピックアップ [ BRZ ]
2024年08月04日 スバル
2022年06月07日 スバル
2021年09月24日 スバル
2021年09月18日 スバル
2021年08月28日 スバル
2021年08月07日 スバル
2021年04月09日 スバル
2021年03月25日 スバル
初代の登場から、早9年。注目のトークセッションで、2代目BRZ/86が遂にベールを脱ぐ。
2021年4月5日、2代目SUBARU・BRZが、遂にその姿を現しました。2020年11月18日に、米国仕様車が公開されて約半年。漸く、国内仕様車が発表されたのです。
SUBARUとTOYOTA GAZOO Racingは、両者共同で「いっしょにいいクルマつくろう!トークセッション」を公開。その中で、ファン垂涎のピュアスポーツカー、2代目SUBARU・BRZ/GR・86を発表し、その発売時期としてBRZを今夏、GR・86を今秋と公表しました。初代BRZ/86の登場から早9年。その登場まで、、、あと僅かです。
トークセッションには、スバルの藤貫哲郎CTO(最高技術責任者)、TGRの佐藤恒治Company Presidentをはじめ、2代目86/BRZのプロジェクトに関わった多くのエンジニアが登壇。SUBARU社長中村知美氏の「仲良くけんかしな!」、トヨタ社長豊田章男氏の「いっしょにいいクルマつくろう!」という2人の意思を受け、様々に議論を戦わせつつプロジェクトを推進した苦労が語られています。
そして、GR・86の発表が遅れた"理由"も初公開。"世界一の86ファン"氏が、開発最終盤の「モリゾーチェック」でGRが目指すものを実現できていない!と、ダメ出しをしていたのです。結果的に、開発陣はスプリングレートの変更を決断。最終段階での仕様変更に佐藤氏が奔走した顛末が明らかにされています。
モリゾーチェックは、開発最終段階で行われるマスタードライバーによる最終評価。ここで"ダメ出し"を喰らったモデルは、仕様変更や更なる熟成を行い、再度評価を受けねばなりません。開発の"手戻り"は、コスト優先主義では絶対悪。それでも差し戻しを命じるのは、「もっといいクルマづくり」をより深度化していくための、豊田章男社長としての不退転の決意でもあります。
新型BRZと86は、今回も味付けを変えて仕上げてあります。より鋭利で機敏なハンドリングを実現したGR・86。これに対し、より素直でコントローラブルなハンドリングを目指したBRZ。両者のコンセプトの違いの詳細については、是非トークセッションを御覧ください。
初代BRZ/86が遺した功績。そして、2代目開発チームに立ちはだかる、初代BRZ/86という高い壁。
初代BRZ/86は登場するや否や、猛烈な逆風下にあったスポーツカーに輝かしい陽光を授け、世界の人々に親しまれる貴重な存在へと成長を遂げていきました。特に、国内モータースポーツに於ける恩恵は絶大で、86/BRZレースは空前の大盛況となった他、「モリゾー」なる新キャラクターが誕生するキッカケともなりました。
輝かしい歴史を紡ぐ2代目の開発に際しては、トヨタが企画とデザインを担い、スバルが開発設計と評価を担当。ただ、それぞれが丸投げ式にすべてを仕切るのではなく、両者入り乱れて喧々諤々「仲良くケンカ」しつつ、「もっといいクルマづくり」をすべく、プロジェクトは前進していきました。
開発要件として定められたのは、現行シャシーの流用とエンジン出力の向上。ただ、開発目標として車両重量と価格を維持しつつ、究極のピュアスポーツを目指すことと定められました。エンジンとシャシーが絶妙なハーモニーを奏でる究極のバランスを実現し、それでいて手に届くスポーツカー。それはつまり、究極のピュアスポーツであると共に、BRZ/86の存在と伝統そのものでしたが、同時にそれは無理難題でもありました。
初代BRZ/86は、幾度もの年次改良を積み重ねて、着々と熟成度を高めており、これを越えることは容易では無かったのです。2代目BRZ/86が究極のピュアスポーツを標榜するならば、エンジンの出力向上に呼応して、シャシーを強化することは絶対条件。ただ、シャシーは現行流用。。。単純に性能強化だけに固執すれば、絶妙なバランスは無残に崩れ果て、BRZ/86の存在は昔話へと変わってしまうことでしょう。
つまり、目標性能値に達すれば、開発終了。そうはならないのが、ピュアスポーツの難しさなのです。でも、それが実現できなければ、モリゾーチェックの突破は不可能。現行シャシーを維持しつつ、2.4L搭載の究極のピュアスポーツを実現する。そのハードルは、開発陣にとって遥か雲上にそびえて見えたことでしょう。
現行シャシー流用という悲しい呪縛。それを打破して劇的進化を果たした、2代目シャシー。
開発要件に定められた、現行シャシーの流用。そう、2代目86/BRZは骨格流用の「1.5世代」なのです。その事実に"萎える"方もいるはず。。。確かに、ベルトラインから上はほぼそのままで、初代の面影を色濃く感じられます。ただ、心配は全くの杞憂。そのままなのは外見だけで、中身には徹底的に手が入っており、9年の歳月を補って余りある劇的な進化を遂げているのです。
エンジンは、新たに2.4L直噴NAに換装。これに伴って、トルクは+18%と大幅強化。これを受けて立つには、ボディ剛性の劇的改善は欠かせません。そこで新たに導入されたのが、インナーフレーム構造と構造用接着剤でした。
インナーフレーム構造とは、主要骨格を先行してアッセンブリし、フル骨格を形成。その後、アウターパネルを接合していく工法。骨格間の接合を緻密に行えるため、同一の設計のままでも、ボディ剛性の大幅向上が実現可能です。これに加えて、構造用接着剤(塗布長16m)を導入することで、ボディ剛性の更なる改善を実現。これにより、フロント横曲げ剛性で+60%、ねじり剛性で+50%と、劇的なボディ剛性向上を実現しています。
ただ、これでは開発目標には達しません。何と、重量増が75kgにも及んだからです。そこで、鋼板の変更や薄板化を敢行。これでは全く足らず、ルーフ、ボンネットフード、フロントフェンダーをアルミパネル化。ただ、これでも目標には30kg足りず、彼方此方に削り代を探し、漸く重量目標を達したのです。
その恩恵は目を見張るものがあり、車両重量1,270kgを維持しつつ、86らしいピュアスポーツのキレッキレの走りと、BRZらしい懐深くなめらかな走り、その双方を同一設計で実現。それに留まらず、スモールオーバーラップ衝突実験に対応する衝突安全性能まで実現しています。
初代BRZ/86の熟成極まった走りを更に上回る。それは、容易なことではありません。ただ、75kgもの贅肉を削り取る決意からは、開発陣のその覚悟と決意を垣間見ることができます。
大排気量直噴NAエンジンという、一見古めかしい選択。実は、それこそがピュアスポーツの真髄。
エンジンは、非力感が否めないFA20に代わって、新開発のFA24を採用。1270kgという車両重量に対して、207ps(MT車)という出力は、確かに"充分"ではあったものの、ドラマチックで興奮を誘う・・・というには力足らずでした。交差点と直線しかない北米大陸では、特にイマイチだったのは確かでしょう。
そこで決断されたのが、+400ccの排気量拡大でした。勿論、ターボという選択肢もあるでしょう。それこそ、FA20DITならば、容易く300psを得ることができます。車重1350kgに300ps。。。スペックだけ見れば、興奮間違いありません。しかし、今回選択されたのは、大排気量NAという選択でした。
この選択は、間違いなく正しいと言えるでしょう。なぜなら、BRZ/86はピュアスポーツであって、ハイパフォーマンスモデルではありません。その目的は、ラップタイムの短縮ではないのです。ですから、レスポンスに優れ、リニアリティに富み、それでいて構成がシンプルで、軽量。NAエンジンこそ、ピュアスポーツの心臓に相応しいのです。
このFA24は、アセント、レガシィ系に搭載されているFA24DITのNA版であり、ボア・ストロークは共通の94.0mm×86.0mm。従来のFA20型に比べて8mmボアが拡大されており、+43ps・+23Nmと一気に出力向上。これまで弱点であった3,500~4,500rpmのトルクの落ち込みを解消し、高回転まで伸びのあるフィーリングを実現しています。また、最大トルクの発生回転も大幅に低められており、ドライバビリティを大幅に改善しています。
つまり、カリッカリに極めたチューニングではなく、あくまでドライバビリティを優先した仕立て、ということです。実は、コレこそがピュアスポーツ用ユニットのセオリー。低回転域からフラットなトルクを得ることで、ドライバーはより確かなトラクションを得ることができるのです。
右足を踏み込むたびに、常に予測した通りのトルクとトラクションが生み出される。それは、ピュアスポーツで必須の、ドライバーとクルマの融合性。FA24は、それに相応しいスポーツユニットに仕上がっていることでしょう。
初のアイサイト搭載のトヨタ車。レーンキープアシストをレスした専用仕様は、何とVer.3系。
今回注目を集めているのが、GR・86に搭載されるトヨタ車初のアイサイト。スズキ・ソリオに搭載された事例こそあったものの、アイサイトの名のまま他メーカ車に搭載されるのは初の珍事。ただ、操作系がトヨタ伝統の「レバー式」とされたのは、"力関係"の問題でしょうか。。。
2代目BRZ/86に搭載されるアイサイトは、ステアリングアシストを敢えてレスとしたver3系の専用設計。後退時ブレーキアシストと後側方警戒支援システムを加え、これまでにない予防安全性能を実現します。ただ、搭載されるのはAT車のみ。MT車は依然、レス仕様となっています。
今回注目したいのが、アイサイトがVer.3系だったこと。このタイミングでBRZ/86にVer.3系を搭載するとなると、最長で2026年頃までVer.3系を引っ張ることになるからです。この2021年には、主力モデルの新世代アイサイト化が急速に進むはずですから、この判断は意外なものでした。
そこで気になるのは、自動ブレーキの搭載義務化。国土交通省は、2021年11月以降、新型車の自動ブレーキ搭載を義務化。既存モデルも、2025年12月以降は搭載が義務化されます。ただ、モリゾー氏の存在がある以上、これを理由にMT車をカタログ落ちとする暴挙は絶対に許されません。つまり、スバルは少なくとも2025年中にMT車用アイサイトを開発する必要があるのです。
ただ、スバルは来年中にも新型車である「WRX STI」を発表するはずです。となると、BRZ/86より先にこちらにアイサイトを搭載する必要があります。これらを総合的に考慮すれば、恐らく2022年中にはMT車用アイサイトが登場。そこから間髪を入れず、BRZ/86にも搭載が始まるはずです。
スバルが第一に追求するのは、安心と安全。BRZたりとも、特別扱いは許されないのです。
許されたのは、薄皮一枚のみ。それでも、魅力的なデザインに刷新したデザインチームの努力。
実質的に、第1.5世代であるBRZ/86。ただ、シルエットはそのままながら、アウターパネルは一つ残らず刷新されており、制約の中でも全く新たなデザインに刷新させようという、デザインチームの強い意思が見て取れます。
初代が「静」の印象なのに対し、2代目は「動」の印象。恐らく、デザインチームに与えられた自由は、「薄皮一枚」のみ。その中でも、低く逞しさを感じるフロントエンドから、力感のあるリヤフェンダへー繋がり、そのままダックテールに収束していく、美しいラインを実現。全体に強いカタマリ感があり、ライトウェイトFRスポーツクーペらしい軽快さと力強さが感じられます。
インテリアは、より明確に進化を遂げています。まず目に付くのが、全面液晶化されたメータパネル。オープニングアニメーションも非常に手が込んでおり、2020年代に相応しい演出を怠っていません。ナビの画面サイズも大型化されており、非常にグラフィカル要素の強いデザインに刷新されています。
また、デザインチームが強く心掛けたというのが、強い「水平感」です。ダッシュボード上面をフラットに仕上げることで、ドライバーの視界を安定化。これにより、スポーツドライビング時の違和感を軽減し、挙動の把握を容易にしています。初代よりもシンプルな印象ですが、かつての911に似てシンプルかつ質実剛健なスポーツカーらしいインテリアに仕上がっています。
エクステリアの違いは、フロントエンドのみ。メリハリのGR・86と、大人びたBRZ。
今回、エクステリアに於ける、BRZ/86のデザイン差は僅かに留まっています。リヤエンドはエンブレム以外は共通で、その違いはすべてフロントエンドに集中しています。
まず、印象に残るのが、LEDヘッドランプユニット。GR・86がL字型モチーフのアイライン、BRZがC字型シェイプのアイラインを採用。これにより、夜間にバックミラーに映った両者を識別可能です。
GR・86はセンターに大きな開口部を配し、両サイドに下端まで繋がる縦長のエアインテークを配する、シンプルな構成。ホイール、ミラーは、シンプルなブラック。全体的にごくシンプルな造形とすることで、見る者にピュアスポーツらしい、メリハリの効いた明確な印象を与えます。
これに対し、BRZは左右に大きなヘキサゴングリルをセンターに、左右に縦長のエアインテークを配置。全体的に折り目が多く、複雑かつ緻密な造形としています。また、下端をブラックアウトすることで、上下に薄く軽快な印象を与えています。ホイールは上質感を感じさせる、グレーメタリック。全体的にハイライトとシャドーが複雑に入り組む複雑な造形とすることで、大人のスポーツクーペらしい緻密な印象が感じられます。
両者は、薄皮一枚という厳しい制約の中でも、上手くキャラクター分けを実現できているように見えます。ただ、長いモデルライフを考えれば、「古さ」を痛感する時も来るでしょう。
ただ、911はその登場から993に至るまで、そのシルエットは維持されました。長い歴史の中で、そのシルエットこそ911のアイコンへと変わっていったのです。BRZ/86も同様の存在になれるのでしょうか。古さを「味」に変えられるかどうかは、この2代目BRZ/86の華々しい活躍に掛かっていると言えます。