スバルショップ三河安城の最新情報。混迷の始まりか。躍進への一歩か。たった3ヶ月でBEV戦略を変更。| 2023年8月9日更新

 
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たった3ヶ月での方針大転換。
 
2023年8月2日 BEV全世界販売60万台を目指す。
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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

大崎新体制への移行から、2ヶ月。突然の方針大転換。

SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 
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2023年8月2日、株式会社SUBARUの新社長大崎篤氏は、新たに「新経営体制における方針」を発表しました。その内容は、まさに驚天動地。スバルが5月11日の決算発表時に発表した電動化戦略を、根幹から覆すものでした。たった3ヶ月での方針変更。その内容は電動化時代に先手を打つ、非情にアグレッシブな内容となっています。

経営方針の刷新に際し、その理由としてカーボンニュートラル、BEV、新興メーカー台頭の3つを挙げています。急速な時代の変化と自動車産業の大転換に直面し、スピード感を以て状況に対応していくために、「電動化計画のアップデート」と「2028年に向けた決意」を発表することとしたとしています。

 

2030年に、全世界120万台販売+60万台BEV販売。

SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 
SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 

新経営体制によって明らかにされた「電動化計画のアップデート」は、これまでのディフェンシブな経営方針を根本から覆す、恐ろしく攻撃的な内容となっています。

5月11日発表のプランは、2025年にTHS採用の次世代e-BOXERを生産開始すると共に、BEVの混流生産を矢島工場で開始。2026年までにBEV生産キャパを20万台規模に拡大。さらに2028年を目処にBEV専用の大泉工場を立ち上げ、20万台キャパを実現。これにより、全世界で40万台分のBEV生産キャパを準備し、全世界で110万台の生産体制と、如何なる市場動向の変化にも対応可能な生産体制の構築を目指すものでした。

しかし、アップデートされたプランは、さらに攻撃的なものです。国内40万台のBEV生産体制をそのままに、米国SIAでも次世代e-BOXER及びBEV自社生産を開始。これにより、2030年までにBEVの生産体制を60万台まで拡大。これにより、スバルの全世界生産台数は120万台+αレベルへ拡張。加えて、次世代e-BOXER+BEVで40%だった販売目標を変更。新たに、2030年の全販売台数の50%をBEV、残りを次世代e-BOXERとするとしたのです。

この方針変更は、実に野心的なもの。2030年の全世界販売台数を120万台+αは、2023年比で40%増。その上、旧方針では40万台を受託生産で満たすことも可能でしたが、新方針では「全世界で120万台を販売」としており、そのうち60万台をBEVの販売としたのです。このプランが実現すれば、スバルは水平対向エンジンを軸とする個性派メーカーから、BEV主体の先進的ブランドへと一気に躍進を遂げることになるでしょう。

 

2026年末までに3車種、20208年末までに4車種追加。

SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 

これに呼応し、BEVモデルの投入計画も一層野心的なプランへ強化されています。5月11日の発表のプランは、2026年末までにBEVのSUV3車種の新規投入を図るというもの。ところが、新方針ではさらに4車種を追加し、2028年末までにBEV全8車種が勢揃するとしたのです。あと5年で、8車種。それは、スバル史上前代未聞の新車投入ペースとなります。

前回記事で検証した通り、2026年末までに追加される3つのSUVモデルは、サブコンパクト、ミドル、背高SUVと新規モデルの可能性が濃厚です。これに対し、2028年末までに追加される4モデルは、既存モデルのBEV版の可能性が高いと思われます。インプレッサ/クロストレック、フォレスター、レヴォーグ/WRX、レガシィ/アウトバックで、4モデル。これら基幹車種にBEV版を追加することで、消費者に抵抗感なくBEVを選んでもらうのは、ごく真っ当な戦略だと言えるでしょう。

この場合、2つの戦略が考えられます。一つは、SGPの次を担うプラットフォームをBEVとICEモデルで共用する手法。BMWは7シリーズでこれを採用しており、ICEモデルでも上げ底はそのまま、床下に空洞を抱えた設計とされています。もう一方は、アッパーボディ(イメージのみの場合も有り)は共用するものの、BEVとICEモデルでプラットフォームを作り分ける手法。この場合、BEVはトヨタとプラットフォームを共用することとなるでしょう。

スバルは、自製e-Axleの開発を放棄しておらず、自力開発を継続しています。しかし、これら8車種にその成果が活かされるのか、はたまた全てをトヨタに依存するのか。その動向が大いに注目されるところです。

 

全面的に刷新される、車両開発体制とそのあり方。

SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 
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たった5年で8車種投入という、前代未聞のスケジュールを実現するには、車両開発の抜本的な改革が不可欠です。これまでは、長い時間を掛けて一つのモデルを育てていくのが、スバルの伝統的手法。新車のデビュー後も逐次改良を施し、エンジニアチームが付きっきりで、より良いモデルに育て上げていました。テストコースをたっぷり走り込むことで、高いレベルの仕上げを実現してきたのです。しかし、このような開発手法にいつまでも依存していては、BEV8車種の新規開発にはとても間に合いません。

そこで、新たな経営方針に於いては、新たに車両開発の抜本的な刷新を図り、「モノづくり」と「価値づくり」に於いて世界最先端を目指します。これに際し、企業方針をBEVに舵を切り、経営資源をBEVに集中するとしています。車両開発に於いては、伝統的な「小回りの利く職人集団」から完全に脱却し、現在の効率的な分業体制をさらに進化させ、開発・製造・サプライチェーンを高度に融合し、即応性に優れた組織の構築を目指すとしています。

これら体制の刷新により実現を目指すのは、世界最先端のモノづくり。その目標は、開発工程・部品点数・生産工程の50%減。分業体制に於いてはリレー式に進めている車両開発の各工程を、同時多発的に並進させることで、車両開発に要するあらゆる工程の半減を目指す、としています。

スバルは、車両開発に要する時間・コストを半減することで、現状から倍増するラインナップに対応し、商品投入の即応性を高めることで、より効率の高いモデルラインナップの構築を目指すこととしたのです。

SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド SUBARU OTUBACK D型 リヤエンド
 
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懸念1:無理が伴う拡大路線と、開発方針の大転換。

と、ここまで大崎新体制に於ける、新経営方針について見てきました。その内容を見る時、そこに見えるのは将来への希望ではなく、明確な懸念と不安です。目標が余りに過大であり、些か拙速に過ぎると思うのは小生だけでしょうか。

もし、BEV8車種の新規開発が、これら経営方針の具現化を前提とするのならば、その懸念は手痛いしっぺ返しとなって、スバルを窮地に追い込むことになるでしょう。

先ごろ会長に退いた、豊田家三代目御曹司・豊田章男氏。彼が最初に取り組んだ仕事は、品質改善と信頼回復でした。トヨタは無理に1,000万台+世界一という目標達成を急いだがために、品質や作り込みが疎かになり、消費者の信用を害しただけでなく、これに端を発する大規模リコールを連発し、市場の信用を失ってしまったのです。

同じ頃、メルセデスは欧州で不買運動に見舞われていました。そのキッカケは品質問題でしたが、それを加速させたのが経営陣による開発コスト削減というNGワード。プレミアムブランドがコスト半減を目指すのに、価格は半減しない。それは、消費者を欺く行為と大きな批判を浴びたのです。

無理な拡大路線と開発方針の大転換が、ブランドに深刻な影響を及ぼすのは、過去の事例を見ても明らかです。スバルの「安心と愉しさ」は、スバルの伝統的なクルマづくりによって培われたもの。スープの仕込み時間を半減したと自慢するラーメン屋に、誰が有難がって行くのでしょうか?まぁ、価格が半減するなら、話は別ですが。

 

懸念2:消費者不在、ファン不在の強気な販売計画。

そもそも、この新たな経営方針には、根本的な議論が抜け落ちている気がしてなりません。それは、消費者の存在です。

クルマという耐久消費財は、店頭に並べたからと言って売れるものではありません。未だストロングハイブリッドさえなく、BEVを他社からのOEMで賄っているスバルが、500万円級のBEVを大量に市場に供給したとして、果たして受け入れられるでしょうか?消費者は、何よりも安心を求めます。であるなら、消費者が選ぶのは、長くBEVに取り組んできた日産かテスラでしょう。まぁ、百歩譲ってトヨタ。。。それは、日本でも米国でも同じはずです。

なぜ、わざわざスバル製BEVを買わねばならないのか。現時点では、消費者には妥当な理由は見当たりません。BEVに於ける強力なブランドイメージや、性能面の圧倒的優位性、抜群のコストパフォーマンスなど、明確な理由がない限り、わざわざ新参者のスバル製BEVを選ぶ必然性がないのです。悲しいことに、それを覆すだけの技術をスバルが有しているとは、とても思えません。

現時点で唯一のBEV・ソルテラは、トヨタに基幹技術を依存して初めて具現化したもの。スバルは共同開発と言い張るでしょうが、bZ4Xと瓜二つの見た目、トヨタ元町での生産。これでは、どう見てもOME車両。そのマイナスイメージは、長くスバル製BEVに付きまとうことでしょう。

さらに状況を厳しくするのが。既存ユーザーの趣向です。燃費を第一に考慮すれば、スバルは当然候補外。それを受け入れてまで購入して頂いたのが、今のスバルユーザー。あと7年で、彼らの半数が本当にBEVに興味を抱くようになるのでしょうか。

 

懸念3:目標先行で、実態の伴わない販売計画。

そもそも、スバルは一体何処で60万台ものBEVを販売するつもりなのでしょう。BEV化が最も早く進行するのは、欧州と中国。何れも、スバルが長年放置してきた市場です。欧州は別としても、中国では無名のブランド。ここでの量販は、ほぼ絶望的でしょう。もちろん、欧州とてBEVでは無名。たった7年で躍進するのは、望み薄でしょう。

スバルが、世界販売の75%を依存しているのが北米。しかし、肝心の米国国内での2022年のBEV販売比率はたった6.7%・93万台。様々な規制によって米国のBEV販売は500万台規模まで、急増するでしょう。でも、如何せん限界があります。あの広大な大地では、BEVは最適解ではないからです。州を跨ぐ長距離移動、1週間に及ぶ本格アウトドアなど、彼らの趣向を鑑みる限り、BEVの普及は大都市圏に限られるはず。経済アナリストが主張するBEV1,000万台は、絵に描いた餅に終わるでしょう。

現状、米国のBEV市場では、テスラがシェアの約半分を占有。ここにスバルが食い込んでも、現状のシェア5%が限界。現実的には3%以下でしょう。となると、米国でのBEV販売台数は15万台程度。頑張っても、20万台が限界でしょう。

なお、国内販売は平均価格帯の急激な上昇によって、大苦戦中。2023年は10万台規模ですが、ここにBEV化によるさらなる価格上昇を折り込めば、さらなる縮小は間違いなし。国内販売の半分をBEVとしても、4万台が精一杯でしょう。

つまり、合算しても30万台には達しません。やはり、40万台の生産キャパとして、残りをトヨタからの委託生産で満たすのが、最善策と考えられます。

 

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