スバルショップ三河安城の最新情報。空を飛べば、自動車は進化するのか?| 2023年11月12日更新

 
SUBARU JAPAN MOBILITY SHOW 2023
空を飛べば、自動車は進化するのか。
 
2023年11月11日 改めて、クルマが空を飛ぶ必要を考える。
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クルマが空を飛ぶことに、意味があるのか。

空飛ぶクルマ。それは「21世紀の夢のクルマ」と、ずっと持て囃されてきました。でも、それは本当に「最善」なのでしょうか?そもそも、何のために空を飛ぶのでしょうか?その目的は、何処にあるのでしょうか?

クルマが空を飛ぶ。それは、単なる手段の一つに過ぎません。最も大切なことは、動機と目的です。何のために空を飛ぶのか。なぜ、空を飛ばねばならないのか。空を飛ぶ本質は、何処にあるのか。そこから先に考えない限り、空飛ぶクルマに未来はありません。

渋滞を飛び越える。最短距離で移動する。離島の移動手段に。誰でも簡単に空を飛ぶ。もし、これらの目的が、すべてが全て実現不可能だったとしたら。どうでしょう?

クルマが空を飛ぶ意味は、本当にあるのでしょうか?

 

誰でも自由に空を飛ぶことができるのか。

空を自由に飛びたいな。そんなフレーズを口ずさんできた世代にとって、確かに空は憧れの場所です。空を飛び交う鳥を見て、大空を駆け回ることを夢見た事は、一度や二度ではないでしょう。

でも、空は自由に飛ぶことはできません。そこには、道路どころではない、厳しい規制があります。ある戦闘機パイロットが退役して民間に転じた時、こう言ったそうです。「私は、馬車馬の御者に成り下がった」と。同じ航路を決められた通りに、ひたすら真っ直ぐ飛ぶだけ。そこには、僅かの自由さえ認められません。なぜでしょう?それは、空には小型機から大型機まで数多の航空機が飛び交い、その直下には人口密集地が存在するからです。

つまりは、安全のためです。空中衝突事故は、当該機のみならず、地上に多大なリスクを生じます。でも、自由で広い大空で空中衝突など起こるはずがない。そう考える人もいるでしょう。でも、現実に多くの空中衝突事故が起きてきたのです。

では、空飛ぶクルマ数百台が都心上空を飛行する状況を考えてみましょう。もし、自由な飛行を許せば、不測の事態が生じるのは一度や二度ではないでしょう。そうなれば、重量1tの物体と高速回転のロータが、空から突如降ってくることになります。地上が如何なる事態に見舞われるか、誰しもが想像できるでしょう。

ですから、空飛ぶクルマが実現したとして、飛行ルート・飛行プランには厳しい制限が課さざるを得ません。ただ、ここに問題が生じます。厳しい管理下にある現代の航空機と異なる存在と定義した場合、空飛ぶクルマとその操縦者にそのルール遵守を徹底することは可能なのでしょうか?数年前、ポルシェ911GT3で他車に衝突し、人を死に至らしめた許し難い事故がありました。そうした思想背景を持つ人物が操縦する可能性を、確実に排除することができるのでしょうか?

安全を考慮する限り、それは徹底されねばならないでしょう。電動キックボードのような、愚かな管理はあり得ません。空飛ぶクルマの事故は、地上に途方もない犠牲を強いるからです。

しかし、安全を理由に飛行を厳しく規制するのであれば、空飛ぶクルマはヘリコプターと同様、高度に訓練されたパイロットにしか操縦を許されないものとなるでしょう。つまり、現代の航空機と全く同じです。

それでも、空飛ぶクルマを実現する必要があるのでしょうか?

 

都心上空を飛び交うことはできるのか。

今日は、朝から酷い雨。地上は、クルマひしめく大渋滞。でも、空を飛ぶ私は、都心上空を最短距離でひとっ飛び。そうした未来は、本当に訪れるのでしょうか?

空を飛ぶクルマの飛行プロセスは、恐らくは次のようなものとなるでしょう。離陸前に地上で目的地を設定。気象条件が離陸可能かつ目的地まで到達可能と判断すると、機体は周囲の安全を判定。浮上可能と判断すると、自動で浮上を開始し、空中回廊に到達。回廊上を自動で飛行し、目的地に達すると、地上付近の風向・風速、接近する飛行物体の有無、着陸地点の安全を判定。下降可能と判断した場合にのみ、ゆっくりと下降を開始。慎重を期して、自動着陸を行うものと想像されます。

もし、上空に接近する飛行物体があれば、離陸は中断し、地上で待機。また、その時点での気象条件が悪い場合、もしくは目的地に至る過程での気象条件が悪い場合には、機体側が自動的に離陸不可能と判断することとなるでしょう。また、着陸地点の安全が確保されない場合、着陸はキャンセルされることになります。

なぜ、そこまでシビアなのでしょうか。それは、飛行する物体は気象条件に強く影響されるからです。その影響は、飛行速度が遅いほど顕著になります。そのため、ホバリングからの着陸プロセスは特に不安定で、僅かな風の変化でも機体は恐ろしく不安定になります。固定翼機のように、滑走距離を取って着陸進入できれば、その影響を軽減できるのですが、垂直離着陸ができない空飛ぶクルマなど全く意味がありません。

通勤で使用する際に、最も危険だと思われるのが、地上付近で強烈に吹き荒れる「ビル風」です。秋・冬に強く顕著なビル風は、風速・風向ともに不安定。このような状況下では離着陸はできませんし、建築物への接触事故も懸念されます。つまり、冬季や悪天候時の運用は全く不可能となるでしょう。

また、着陸侵入は全く緩慢なものとなるはずです。航空機は対地速度ではなく、常に対気速度に依存します。地面に対して速度がゼロでも、北風10m/sなら南に向かって10m/sで飛行せねばなりません。そのうえ、機体は着陸した瞬間に対気速度から対地速度に切り替わります。そのため、着陸時は機体制御が難しいのです。上空では美しいヘリコプターも、着陸は不格好。ビル風が吹き荒ぶような状況では、地面に着陸するのは到底不可能なのが理解できるでしょう。ならば、ビル屋上のヘリパッドを使うのでしょうか?それでは、ヘリコプターと変わりありません。

実際には、都市部では運用不可能な空飛ぶクルマ。一体、誰がそれを購入するのでしょう?

 

最短距離を飛ぶことはできるのか。

巷が、空飛ぶクルマを持て囃す理由。それは、道路が僅かのコストで3次元化できることにもあるでしょう。地上交通を立体化するには、莫大な時間・費用を要します。加えて、土地収用や日照権など住民に大きな苦痛をもたらします。しかし、空飛ぶクルマなら違います。高度で通行帯を分け、踵を接して飛行させれば、キャパシティを無尽蔵に増やすことができるはずです。

しかし、本当にそうでしょうか。回転翼機は揚力を生み出すため、巨大なロータを回転させて、強力な吹き下ろし風(ダウンウォッシュ)を発生させています。回転翼機で最も危険なのは、このダウンウォッシュにロータ回転面が入ってしまうことです。その途端、機体はすっぽり揚力が抜けたように急降下。機体強度の制限を超えれば、致命的な事故へ至ります。

ヘリコプターが急降下できないのは、その危険を回避するためです。ヘリコプターのダウンウォッシュの影響の範囲は、凡そ20m程度。安全を考慮すれば、その倍程度の距離を取る必要があるでしょう。複数のロータを備える機体形式では、多少なりともダウンウォッシュの影響は緩和されるでしょうが、その影響は決して無視できません。

もし、空飛ぶクルマの直上を別の車両が飛行すれば、下側の車両は突如揚力を失って不安定となり、危険な揺れに見舞われることでしょう。実際には、それを見越して接近警報アラームが鳴動し、自動衝突回避システムが作動するでしょう。当然にして、そのような事態に陥らないシステムが実現の前提であるのは、間違いありません。

つまり、空飛ぶクルマが踵を接して、空を飛び交う。そういう状況は夢物語でしかない、ということです。実際には、上下に10m以上の安全距離を取って「空中回廊」を設定し、交通管制システムの管理下で自動運転で運用され、十分な安全距離をとって飛行することになるでしょう。つまり、空にも道路が必要ということです。

ただ、ここで問題が生じます。別の回廊へ遷移するには、上昇・下降が必要です。これに際しては、専用の上下移動専用の回廊の設定が必要でしょう。そして、車両が上下遷移中は、他の車両は待機して空間を確保せねばなりません。つまり、空にも交差点が必要になるのです。

もちろん、有機的に車両ごとの相互距離や相対速度を制御可能な管制システムが実現できれば、交差点は一切不要です。しかし、先述の通り、気流は一定ではありません。ビル風を伴う不安定な風向・風速は予測不能です。加えて、航空機は急には止まれません。となると、道路と交差点の導入は必須と思われます。この時点で、最短距離で飛行するのは既に望み薄でしょう。

最短距離では飛べない、空飛ぶクルマ。いちいち、交差点で待たねばならない空飛ぶクルマ。それなら、富裕層はヘリコプターを選ぶでしょう。空飛ぶクルマは、本当に必要なのでしょうか。

 

自動管制システムは実現できるのか。

空飛ぶクルマ、そもそも誰が管制するのでしょうか。航空機の安全は、緻密かつ正確な航空管制と、徹底的に訓練されたパイロットによって確保されています。空飛ぶクルマに対し、それを要求することは可能なのでしょうか。

航空管制を司る側にとっては、空飛ぶクルマなど安全を脅かす脅威でしかありません。もし、空港への着陸進入経路上に、迷走車が現れたとしたら。。。数百名の乗員乗客と地上の数千人の生命が、突然危険に晒されることになるからです。

現状では、こうした事態を回避するため、空には空域が設定されています。各空域ごとに管制が徹底され、相互に危険な状態に陥ることを抑止しているのです。ただ、対象となるのは計器飛行の機体のみで、有視界飛行となるヘリコプターや小型のセスナ機は対象外です。それ故に、有視界飛行の機体は視界が確保できない条件下では飛行できません。

万が一、管制に一切応答しない、指示に全く従わない、飛行経路が一般のものと異なる、そうした機体が現れた際は、直ちに当該空域は封鎖され、安全確保のために撃墜が検討されることになります。すべては、空および地上の安全を確保するためです。

空飛ぶクルマについて、今一度考えてみましょう。既存の空の往来への影響を考慮すれば、空飛ぶクルマの飛行高度を低く制限する必要があるのは間違いありません。ヘリコプターは警察・消防・緊急の患者輸送の他、報道などに使用されており、これを阻害する飛行を許可することは、公共の利益に反するからです。ビル屋上のヘリパッドの使用を考慮すれば、高度100m程度まではヘリコプターに優先的に割り当てられることになるでしょう。

すると、空飛ぶクルマに許されるのは、高度100m以下。つまり、空飛ぶクルマはビルを飛び越えて飛行することはできません。地上の安全と離着陸を考慮すれば、高度20m以上に飛行回廊が設定されるでしょうから、空飛ぶクルマは恐ろしく狭い領域に押し込められることになります。

もちろん、空飛ぶクルマとて航空管制に従って飛行することが可能ならば、つまりそうした能力を保持するパイロットのみが運用するならば、もっと広い空域を自由に飛行することができるでしょう。空域の制限が緩い地域であれば、大空を堪能することも可能なはずです。ただ、何度も繰り返すように、それではヘリコプターと変わりありません。空飛ぶクルマを手軽な飛行手段と定義し、その手軽さを存在意義とするなら、飛行範囲・飛行経路(空中回廊と交差点を含む)を厳密に制限可能な自動管制・自動運転システムは実現の最低条件です。

ただ、そのシステムを実現するには、重大な責任と莫大なコストを要します。一体誰が、それを負担するのでしょうか?

 

操縦の自由を与えることはできるのか。

航空機のパイロットには、常に最大限の対処能力を保持するとともに、自身の命よりも乗員乗客、さらには地上の安全を確保する責務があります。致命的な事態に至ったならば、地上管制へ緊急事態を宣言した上で、状況を的確に報告し、至近の飛行場へ降ろす。それが不可能ならば、安全な水面への不時着水。それさえも絶望的ならば、最後の制御を以て人の居ない山間部へ向かう。。。つまり、航空機のパイロットには、自らの命を顧みず、被害を最小限に抑止する社会的責務があるのです。

空へ巨大な質量を持ち上げれば、それは莫大な位置エネルギーを持ちます。位置エネルギーは運動エネルギーへ転換可能であり、地上へ甚大な影響を及ぼすことが可能です。だからこそ、航空機のパイロットには重大な社会的責務が課されているのです。

人類が空を悪意を以て使用することは、9.11の同時多発テロまで経験していませんでした。しかし、あの悲劇を経験したのならば、その危険を考慮しない訳にはいきません。それ以外にも、自殺志願者が意図的に航空事故を起こした事例も複数存在しています。そのような事態が空飛ぶクルマで発生することは、十分に予測できることです。

意図的な事故の発生を完全に排除する最もシンプルな方法は、操縦の一切を完全に自動化し、自由な操縦を一切許可しないことです。ただ、突風の発生や故障など、不測の事態への対象ため、パイロットに「選択の余地」を与えることも考慮すべきでしょう。では、緊急事態を宣言すれば、操縦が許可されるのか。もしそうなら、テロリストが全員非常事態を宣言するだけのことです。

やはり、安全を最大限に考慮すれば、パイロットに操縦の自由を与えないことが最善だと考えられます。2020年代の戦争で戦力の中枢を担いつつあるドローンでは、既に信頼性の高い自動操縦が実現しています。今後の技術開発を考慮すれば、完全自動操縦による安全な運行の実現は不可能ではないと考えられます。

ただ、悪意のない致命的事態も考えられます。それは、不意の機体トラブルです。あれだけ徹底した整備を行っているエアラインでも、機材トラブルによる遅れ・欠航は発生し得るもの。それならば、個人運用される空飛ぶクルマはどうなるでしょう?点検・整備の不徹底は、乗員はおろか、地上にも甚大な被害を引き起こします。しかし、莫大な整備コストに窮して、不心得者が現れる可能性はゼロではありません。

この点を考慮すれば、空飛ぶクルマは全て個人所有ではなく、リースで運用・管理され、機材管理の一切は所有者が行うことになるでしょう。利用者はスマホで利用予約し、機体に搭乗すれば、あとは自動で目的地まで飛んでくれる。つまり、空飛ぶクルマというより、実際には空飛ぶタクシーという表現が適切という訳です。

ただ、現在でもヘリコプターのチャーターは不可能ではありません。そうしたサービスは、現に存在しています。しかし、需要が逼迫し、順番待ちが生じている、という話は一切聞きません。

空飛ぶタクシー、本当に必要なのでしょうか?

 

離島の渡航手段問題を解決できるのか。

質量のある物体を宙に浮かせるには、莫大なエネルギーを必要とします。固定翼機は対気速度を資源に翼で揚力を生み出しますが、回転翼機は主動力によって揚力を作らねば浮上を維持できません。一般に、小型ヘリコプターの燃費は、セスナ機の60%程度と言われます。つまり、空飛ぶクルマは、恐ろしく燃費が悪いのです。この事実は、僅か1%の燃費改善に血眼になっているOEMの努力と、真っ向から逆行します。

空を飛ぶことは、容易なことではありません。その最大の要因は、大気が圧縮性流体であることにあります。地上や水上と違って、大気中では常に「暖簾に腕押し状態」なのです。離昇するのにも、前進するのにも、常に暖簾に腕押し状態。これでは、燃費が悪くて当然でしょう。

ヘリコプターが恐ろしく高価なのは、この燃費の問題に加えて、輸送キャパシティの問題があります。伊豆諸島で運行されている定期航路では、座席数9席のみ。たった9人で運行コストを賄うのですから、運賃が高価なのは当然でしょう。この状況は、より機体が小型の空飛ぶクルマでは致命的になるはずです。

今、離島の連絡手段として、空飛ぶクルマを活用したエアタクシーが提唱されています。過疎化が深刻な離島では、旅客・物流及び人材の確保が不可能なため、民間航路の維持が課題となっています。そこで、エアタクシーが待ち望まれているのです。

ただ、先述のように、航空機にはコスト面で多大なデメリットが存在します。運行コストだけでなく、莫大な整備費が必要となるのです。安全を最大限確保するため、航空機には自動車や船舶より遥かに短い間隔で、非常に厳しい定期点検及び部品交換を課しています。機体メーカはビス1本に至るまで、すべての部品に交換期限を定めており、運行者はこれを確実に厳守せねばなりません。ところが、航空機では軽量化が必須のため、多くの部品が高価な軽量素材であり、部品単価も自動車とは比較にならないほど高価です。そのため、航空機の機体維持には莫大な費用を要するのです。

エアタクシーを国営で運行するなら、話は別です。しかし、その運行コストのすべてを利用者及び自治体が賄うというのは、全く非現実的でしょう。1回利用するのに4桁も費用が掛かるなら、わざわざ利用しようという住民はいないでしょう。

そもそも、離島の住民にとって、移動手段は民間航路だけではないのです。知り合いの漁師に電話すれば、一升瓶一本で迎えに来てくれるのですから。ならば、漁師に特認で営業許可を出した上で、自治体が補助金を払った方が、より現実的ではないでしょうか。

何れにしても、莫大なコストを要するエアタクシーが、すべての問題を解決するとは思えません。空飛ぶクルマは、本当に実現する価値があるのでしょうか?

 

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