スバルショップ三河安城の最新情報。EV戦略第2弾:インバータって何?e-TNGAの技術の真相に迫る。| 2019年6月26日更新
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全個体電池の実用化はいつ?まだまだ進化を続ける、リチウムイオンバッテリ。
EVのゲームチェンジャーとして世界の期待が集まる全個体電池の開発には、依然として時間を要するようです。寺師氏は、2020年の東京オリンピックでのデモを約束したものの、市販化・量産は2025年をターゲットに開発を進めている模様です。2025年をタイムリミットとする、EV・FCVの100万台生産体制構築には間に合わないものの、2030年代には確実にその主役となっていることでしょう。
ただ、鉄道と異なり、EVはほぼ確実に事故に遭遇します。また、その運用は所有者にすべて委ねられます。-50℃から50℃まで温度環境も、湿度も砂塵も、使用環境は様々です。あらゆる環境下に於いても、一定の信頼性と安定性、そして絶対の安全性を確保せねばなりません。つまり、鉄道車両よりもEVの方が、バッテリに対する要求は圧倒的に厳しい、という事です。
テスラと違って、トヨタは全個体電池を見切り発車させることはありません。確実にその性能が担保されるまで、その実用化は待たされることになるでしょう。
ただ、バッテリの進化は、何も全個体電池に限ったことではありません。既存のリチウムイオンバッテリでも、その進化は続いています。6月15~16日のルマン24時間で優勝した、トヨタTS-050は現代のHVの究極です。24時間に渡って、3分間に8MJもの電力を充放電し続ける、世界で最も先進的かつ信頼性に優れたハイブリッドシステムです。そのコアたるリチウムイオンバッテリも格段の進歩を遂げており、たった数年で、レース終盤でもほぼ変わらないペースを発揮できるほどに、劣化の問題は改善されています。
日産・リーフの苦戦の原因の一つに、リセールバリューが極めて悪いことが挙げられます。その原因は、バッテリの劣化です。充放電を繰り返すと、電池容量が低下していく問題は、大容量バッテリにとって深刻な課題です。トヨタは、決して同じ轍を踏むことは無いよう、10年単位で信頼性と安定性を担保するバッテリの開発を最優先に、EVの開発を進めることでしょう。
あらゆる環境下でも、如何なる事故でも、バッテリの安全性を確保せよ。
EVでは、搭載電池の重量と航続距離は比例すると考えがちです。しかし、現実は異なります。バッテリ重量を増やす→パフォーマンスと航続距離が低下→バッテリをさらに増やす→さらに航続距離が短くなる。。。バッテリ重量と航続距離の「おいかけっこ」の始まりです。
そう、EVの航続距離を伸ばすのは、想像以上に難しいことなのです。
これは航空機と似ています。搭載燃料を増やす→自重と抵抗が増える→航続距離が低下→搭載燃料を増やす。。。という負のスパイラルです。航空機と同じく、バッテリ駆動のEVに於いても、軽量化が何よりも重要ということです。
その軽量化を推し進める際に、一番の弊害になるのが衝突安全性能です。その基準は、年々厳しくなっていく一方です。ガソリン車の場合、その燃料容積は最大でも60L、重量は45kg程度です。しかし、300km程度の実質航続距離を実現するEVとなると、その電池の重量は500kg程度に達する可能性があります。
この超重量物を床下に保護しつつ、如何なる状況に於いてもその安全性を担保するとなると、その技術的ハードルは並大抵のものではないでしょう。しかも、バッテリは膨大なエネルギーを蓄えているのです。床下に抱え込んだバッテリの漏電や発火は、即人命に関わります。
ボーイング787では就航当初、搭載のリチウムイオンバッテリが発熱・発煙するトラブルが相次ぎ、運行停止に追い込まれる事態を経験しています。この解決方法は、キテレツと言えるものでした。ボーイングはバッテリをそのままに、そのケースを極めて堅牢なアルミ合金製に置き換えたのです。バッテリに例え異常があっても、運行に支障を与えないことを保証したのです。この処置を妥当としたFAAは、運行停止処置を解除。今では、787は安全に運行を継続しています。
この様なキテレツな手法は、EVでも採用されるのでしょうか。膨大な電力を蓄え、重量が500kgにも達するバッテリ自体、間違いなく危険です。ならば、如何なる状況に於いても最悪の状況に至らぬことを、「保証」するしか無いのです。
衝突安全性能の確保は、EVにとって最も高いハードルとなる可能性があります。
日本人のもったいない精神がつくる、バッテリのライフサイクルプラン。
また、トヨタの提唱する新たな課題として、バッテリのリユースが挙げられています。年間100万台ものEVを生産し、それが順次退役していく時代になれば、そのバッテリの廃棄とレアアースの回収は、極めて重大な社会問題となるでしょう。ただ、劣化したEVバッテリは大容量高速充放電の能力が低下していたとしても、電池自体が全く「役立たず」になっている訳ではありません。
そこで、トヨタはバッテリをリユースする構想を提案しています。退役したEVからバッテリを取外し、これを家庭用蓄電池等で再活用する計画です。ただ、各バッテリはその使用環境や充放電回数等によって、そのコンディションは異なります。そこで、バッテリの容量や残寿命を公正に評価・鑑定し、価値を判定する仕組みづくりについて研究を進めていくようです。
トヨタの偉大さは、ここに集約されるでしょう。ドイツ系メーカーは、堰を切ったようにEV開発に取り組んでいますが、バッテリのライフサイクルを地球規模で考えているメーカーは他にはありません。EVやHVは、ただ販売すれば良いというものではないのです。そのライフサイクルすべてに責任を持つ、それがトヨタのポリシーなのです。なお、初代プリウスもバッテリ回収の必要性から、10万円でメーカーが引き取ることとなっています。
これをトヨタは、日本人ならではの「もったいない」発想が原点にあるとしています。もちろん、スバルのこの構想に従って、「もったいない」プログラムに参加することになるでしょう。
スバル初の本格的EV、ミディアムSUVは何処で生産される?
トヨタの言う通り、顧客の趣向や社会情勢、ブーム等に左右されるため、EVの普及速度を予測することは困難です。ただ、プリウスがそうであったように、税制上の優遇や社会倫理等の推移によって、ある時点でEVの普及が爆発的に加速することは考えられます。
その時問題となるのは、その生産拠点です。現在、スバルはトヨタ86の生産を受託している他、ジャスティや軽自動車の開発・生産をダイハツに委託しています。では、この新たなるミディアムEVは、何処で製造されるのでしょうか。
例えば、エンジンやトランスミッション、バッテリ等のサブアセンブリ品であれば、鉄道・トラックによる定期輸送によって、車両組立工場への搬送が可能です。しかし、今回の協業ではプラットフォーム全体が共有されます。こういった場合、86/BRZのように、生産効率を考慮して1箇所に集約して生産されることが殆どです。もし、その生産拠点をトヨタに置いた場合、EV普及速度によってはスバルの生産台数の低下することが懸念されます。となれば、将来的にスバルの群馬+SIAという生産体制が大きく変革されることが想定されます。
場合によっては、将来的に自動車業界はさらに大きく再編され、開発部門と生産部門が完全に分社化されて経営されることも考えられるでしょう。