アイサイトまるわかり便覧:2021年2月最新版 [2018年07月27日更新]
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ご存知ですか?各モデルで異なるアイサイト。
スバルの誇る先進運転支援システム・アイサイトは、スバルブランドに今や欠くべからざる存在であり、国内では水平対向エンジンやAWDを越えて、今やブランドを象徴する技術へと成長を遂げています。
2008年にWRCでの活動を終えたスバルが、自身を新たに象徴する個性派技術として選択したのが世界最高峰の安全性能でした。そして、その核となる先進技術として開発を進めたのが、先進運転支援システム(ADAS)です。
2010年、レガシィの後期型に搭載して、アイサイトver.2が誕生。「ぶつからないクルマ?」とのキャッチコピーとともにアイサイトの先進性と安全性を訴求。これを機会に、国内自動車市場は「燃費競争」から「自動ブレーキ競争」へと大転換を果たし、世界のOEMは一気にADAS及び自動運転システム開発に傾注することとなります。アイサイトは、世界の自動車産業に大きなインパクトを与えたのです。
2020年、BRZの生産が終了。現在では、「国内販売のスバル製スバル車」は全車がver3.5以降のアイサイト装着車となっています。名実ともにスバルを象徴する技術となった、アイサイト。但し、その仕様・機能は多岐にわたっており、それを理解するのは並大抵のことではないと思います。
今回は[2021年早春版]として、現行ラインナップに於ける各モデルのアイサイトについて整理して参ります。
2種類存在する、現行モデルのアイサイトのバージョン。
現状のアイサイトは、2種類です。1つは、いま巷で話題の「アイサイトX」を実現した「新世代アイサイト」で、2021年春時点では新型レヴォーグ専用装備となっています。2つ目が、ツーリングアシストを実現したアイサイトver3.5で、フォレスター、XV、インプレッサに搭載されています。現状のラインナップではこの2種のアイサイトのみが存在しており、既に販売を終了しているBRZ、アウトバック、WRXに新たに後継車種が登場するまで、この体系が続くものと思われます。
アイサイトは、2つのカメラを組み合わせたステレオカメラが最大の特徴です。2つの画像を重ね合わせることで立体視を行い、時間差処理を加えることで対象物体との相対距離・相対速度を演算。これを元に未来予測を行って、リスクがあると判断された場合に、ドライバーの運転操作に介入を行います。
新世代アイサイトでは、これに四隅のミリ波レーダを新たに加えることで360度センシングと全方位安全の実現を目指している他、オプションのアイサイトXではGNSS衛星と高精度マップデータを加えることで、渋滞時ハンズオフを含めた最新の機能を実現しています。
アイサイトの足跡。研究着手から、産声を上げるまで。
スバルが予防安全技術の研究に着手したのは、1988年のこと。1991年の東京モーターショーでは、ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)として一般公開。ADAはステレオカメラ方式と呼ばれる、2つのカメラから得た映像を高速で画像処理して、複数の物体の形状と距離を高精度で同時認識する方式を採用していました。これが、アイサイトの原型です。ところが、当時の技術ではそもそも連続高速演算さえ容易に実現できるものではなく、実験車のレガシィの荷室は満載状態のコンピュータで埋め尽くされていました。
ようやく市販に漕ぎ着けたのは、1998年。レガシィランカスターADAに搭載としての発売でした。次の進化は、さらに5年後のこと。2003年にレガシィツーリングワゴン3.0R ADAが発売されます。この時、ステレオカメラにミリ波レーダーを追加。しかし、これに伴ってオプション価格が70万円に達したため、価格低減が大きな問題となります。
そこから、さらに5年。2008年、ついに初代EyeSightが登場します。センサーをステレオカメラのみのシンプルな構成に戻して、低価格化を実現。さらに、プリクラッシュブレーキを初搭載。しかし、国交省の認可が降りなかった為に、減速は0.4Gに制限されてしまいました。
ADAの研究は、決して順調ではありませんでした。無謀とも思えるプロジェクトは、何度も中止になりかけます。そんなのは未来の空想話、とバカにされる毎日だったようです。苦節、20年。新人でいきなり開発専従を任じられた担当者は、すっかり中年になっていました。その間の、苦労は並大抵のものでは無かったはずです。しかし、喜びも悲しみも幾歳月。ようやく日の目を見る日がやってきます。それは、2010年のことでした。
EyeSight ver.2:2010年〜2018年
2010年5月、BM/BR型レガシィの後期型に搭載された登場したver.2。初めて衝突回避ブレーキを搭載したバージョンで、+10万円という「格安」のオプション価格と「ぶつからないクルマ」というフレーズは一気に評判となりました。以後、スバル=安全というイメージが世間に定着するキッカケとなりました。
フロントウインドウ上部のステレオカメラユニットが、左右2つのカメラの白黒画像を連続処理。車両、2輪車、歩行者を識別し、2.5秒後に衝突の危険が予測される場合には、警報音発報ののち衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を自動作動させます。公称30km/h(非公式実験:50km/h)までの衝突回避を可能にする性能を有していました。
新たに、全車速追従機能付クルーズコントロール(ACC)も搭載。0km/h〜114km/hの間で先行車に追従。速度制御を自動化することで、長距離走行での運転負荷を大幅に低減しています。また、40km/h以上で作動するふらつき運転警報やはみだし警報など、その後のアクティブレーンキープに繋がる技術も一部実用化されていました。
2011年11月、フルモデルチェンジしたインプレッサの2.0Lモデルに搭載。漸く、普及価格帯でラインナップされたことが衆目を集め、一気に人気が爆発。アイサイトを第一目的に購入するお客様が現れるなど、スバルにとって一大転機となります。アイサイト中興の祖であるver.2は、世界に自動運転技術競争の流れを作ったエポックメイキングな存在として、自動車史にその名は永遠に刻まれることでしょう。ver2は、EXIGA CROSSOVER7が最後の搭載車となり、2018年3月を以てその役目を終えています。
EyeSight ver.3:2014年〜2019年
2014年6月に先代レヴォーグと共に登場した、ver.3。白黒画像認識からカラー画像認識に進化し、カメラ視野角と視野距離をそれぞれ40%拡大したのがトピックでした。カラー画像認識によって、ACC時の減速タイミングを「減速」から「ブレーキランプ点灯」に早めたため、ACCの速度制御が格段にスムーズになって実用燃費が大幅改善された他、AEBの確実性がより高まっています。さらに、視認できるエリアが拡大したことで、対象物体の早期発見が可能になりました。その結果、衝突回避上限速度が公称50km/h(非公式実験:70km/h)まで引き上げられています。
ステレオカメラには、土砂降りや豪雪等の視界不良時には使用できない欠点があります。ver.2では朝日・夕日の逆光や大雨時に作動を停止することがよくありました。この問題も、ver.3では大幅に改善されており、耐候性が向上しています。
ACCの設定速度はver.2と同じく、40km/h〜114km/hで設定可能です。
それまで、アイサイトの介入はアクセル・ブレーキに限られていましたが、ver.3からはステアリングへの介入も開始されました。アクティブレーンキープ(ALK)の実現によって、居眠りや突然の体調不良による進路逸脱によるリスクを大幅に低減しています。なお、ALKには2タイプあって、高速域でのオートライントレースを実現する車線中央維持機能を搭載したものと、レーンアシストのみの機能を持つものの2タイプが存在しました。
追加オプションはアドバンスドセイフティパッケージと呼ばれ、主にスバルリヤビークルディテクションとハイビームアシスト(フォレスターのみアダプティブドライビングビーム)が設定されていました。
なお、2016年に登場した前期型インプレッサでは少々変更がなされており、ACCの加速レベルを4段階で選択可能とすることで、不意の急加速を回避できるようになっていました。
2019年秋のマイナーチェンジに際して、インプレッサ/XVがver3.5に換装したため、現在では搭載車種はありません。
EyeSight ver.3(ACC上限速度135km/h仕様):2017年〜2021年
2021年1月に生産を終了した、BN/BS型レガシィ向けに用意された仕様です。ACCの設定速度領域を、30km/h〜135km/hに拡大。これに伴って、ALKの作動も最高140km/hまで引き上げられています。これは、高速道路の法定速度引き上げに備えたもので、高速道路でのACCの有効性を高めています。
オプションは、アイサイトセイフティプラス。運転支援として、ハイビームアシスト、スバルリヤビークルディテクション。視界拡張は、フロントビューモニター、サイドビューモニターが設定され、RABは標準装備でした。
年次改良でアップデートがなされ、自車と同一方向に進行するターゲットに対するAEBの作動タイミングを早めました。また、極低速域で前方障害物があるにも関わらず、アクセルを誤って踏んだ場合にもAEBが作動するようになっています。
この仕様が登場した時点で、既にレヴォーグはマイナーチェンジを実施しており、同時にver3.5も登場していました。にも関わらず、レガシィ系は結局ver.3のまま存置されました。その理由として、レガシィ系の主戦場たる米国でver3.5をリリースするには、綿密なテスト走行が必要だったこと。次に、MFDを搭載しないレガシィ系で作動状況を表示するには、インターフェースに限りがあったこと、これら2点が考えられます。何れにせよ、ver3.5搭載のレガシィ系モデルが国内販売されることはないでしょう。
ver3は、後期型レガシィ(アウトバック/B4)に搭載された後、2021年1月のアウトバック受注停止に伴って、過去帳入りとなっています。
EyeSightver3.5・ツーリングアシスト:2017年〜
社内呼称ver3.5として知られるツーリングアシストは、先代レヴォーグの後期型と共に2017年に登場しました。ver.3のハードウェアはそのままに、ソフトウェアを処理能力の限界までアップデートすることで、予防安全性能はそのままに、ALKの作動領域を0km/hまで大幅拡大しています。
ACCの設定速度領域は高速道路120km/h制限に対応する、30km/h〜135km/h。ALKの作動領域は大幅に拡大されて、0km/h〜145km/hへと一気に拡大されています。Ver3.5では、低速時での進路維持を実現。高速道路の長距離渋滞での運転支援を可能にしています。また、進路の制御対象が左右白線から、片側の白線および先行車に拡大。片側の白線が消失している区間や、白線が見えないほど先行車に最接近した渋滞時でも、進路の維持が可能です。これにより、片側1車線の高速道路に於けるACCの有効性が、大幅に改善されています。
ただ、依然として交差点での進路維持は不可能ですので、一般道での使用は控える旨の注意書き付です。ACCで停止した場合は、3秒以内に限って自動再発進が可能になりました。また、停止時でもACCの作動が開始できるよう変更されています。
追加オプションは、アイサイトセイフティプラスと呼ばれるもので、運転支援と視界拡張の2つのセットが用意されています。運転支援は、スバルリヤビークルディテクション、アダプティブドライビングビーム(フォレスターのみオプション設定、インプレッサ/XVは標準装備)。視界拡張は、フロントビューモニター、サイドビューモニター(新型フォレスターは標準装備)、スマートリヤビューミラー(フォレスターのみ選択可)が設定されています。また、後退時自動ブレーキシステム(RAB)が標準装備となっています。
現在では、フォレスター、インプレッサ/XVに搭載されており、スバルの主力ADASとして多くのお客様に先進の予防安全技術を提供しています。