スバリズムレポート第3弾「ステルス技術の全貌。」完全版:U-2からF-22まで。 [2019年02月06日更新]

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

ステルス技術の全貌。40年間秘匿され続けた、米国秘中の秘。

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世界初の実用ステルス機、F-117A。その威力は絶大で、ミリタリー・バランスを一変させた。 出典:US AirForce

東西冷戦末期、米国で確立された魔法の技術。それが、ステルスです。レーダの探知を逃れ、我が物顔で敵地上空を飛び回り、痛恨の一撃を加える。その発明は、軍事技術とミリタリー・バランスを一変させる程のインパクトがありました。

現在の防空網は、複数の対空レーダによって形成されています。敵機を強力な対空レーダで可能な限り遠方で探知し、対空ミサイル及び迎撃機で迎撃します。ステルスは濃密な敵防空網を完全に無力化し、空を支配します。敵は、いつ来るか知れぬステルス機に怯え続けねばならないのです。

今回は、80年代に公にされて世界に衝撃を与えたステルス技術について、その原理と歴史を詳しく見ていきましょう。

 

見えている側と、見えていない側。尊い命が、容易く奪われていく非情さ。

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1942年8月、猛烈な対空砲火の中、超低空を突き進む日本の一式陸攻。出典:Wikimedia Commons

第二次大戦での日本の戦局が一方的に決した要因として、レーダとVT信管を挙げる意見があります。

大戦後期に於いて、レーダの威力は特に絶大でした。日本軍は尋常ならざる損害を嫌って、奇襲を常套手段としたものの、日本の航空攻撃はレーダですべて被探知されており、薄暮でも夜間でもまったく奇襲の体をなしていなかったのです。

大戦末期の海軍航空基地。地上員の「帽振れ」の中、薄暮を突いて攻撃機が次々に飛び立っていきます。目標は沖縄近海の敵機動艦隊。しかし、搭乗員は未熟な者ばかり。雲間を抜ける度に1機、また1機と減っていきます。機位を失う、つまり方角と現在位置を失ってしまうと、若い彼らには為す術が無いのです。無電からは、悲痛な玉砕報告が次々に響きます。

そして、編隊進路上に待ち受けるのは、数百もの敵戦闘機。レーダ誘導された彼らは、正確に会敵可能。乱れ打ちの弾幕を潜り抜けると、攻撃機編隊は櫛抜けのボロボロに。攻撃ポイントに辿り着けるのは、歴戦の勇敢な搭乗員に導かれた僅かな機体のみ。しかし、彼らの最期の望みを打ち砕くのが、濃密な対空弾幕。VT信管は高性能な磁気信管で、敵機の至近に至ると自動で炸裂。直撃せずとも、装甲の薄い機体に致命傷を与えます。歴戦の猛者たちは、南の洋上で次々に散華していきます。

日本にとって、逆襲などまったくの夢物語。特攻機もまた同じで、飛び立った特攻機は、敵艦突入はおろか、目標上空に到達することさえ奇跡だったのです。

 

日本を壊滅に追い込んだレーダー技術の基礎は、日本人が作ったものだった。

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F-22Aに搭載されるAN/APG-77アクティブフェイズドアレイレーダ。出典:Wikimedia Commons

レーダとは、Radio Detecting and Rangingの略で、電波で距離と方位を測る装置です。アンテナから発射した電波が、対象物体に反射して、再びアンテナに戻る時間を元に、対象物体の方位と距離を測定します。電波は、可視光線よりも遥かに波長が長いため、雲や霧に遮られることなく、遠方の対象物体を探知できます。

そのレーダの成立に不可欠だったのが、高出力で安定したマイクロ波を発振するマグネトロンと、電波を受信するアンテナの技術でした。実は、その技術が飛躍するキッカケを作ったのは、何と日本人だったのです。

当時、陸軍は興味を示したものの、海軍は「暗闇に提灯を灯す」ようなものと、冷たい態度に終始しました。この研究の遅れが、大戦末期の悲劇的な戦況を予告しているとは、誰もが予想だにしないことでした。

同様の事例は、日本に限りません。ステルス技術飛躍のキッカケとなった、技術論文は何とソビエトの科学者によるものだったことが知られています。

 

マグネトロンと八木・宇田アンテナの発明。

1920年頃から、東北帝国大学工学部電気工学科では、マグネトロンの研究を始めていました。1927年には岡部金治郎が、強力で波長の短い電波を実現する分割陽極型マグネトロンの開発に成功します。

続く1924年頃、同じ東北帝国大学工学部電気工学科の学生が、実験中に金属棒を置くと受信電波が増大する奇妙な現象を発見します。これがきっかけとなって発見されたのが、アンテナの基本となる原理でした。1926年には、東北帝国大学工学部電気工学科の八木秀次と宇田新太郎の連名で発表されたのが「八木・宇田アンテナ」です。この研究のもっとも重要な成果は、多数の導体棒の配列で構成された短波長アンテナの放射指向性測定によって、短波長ビームを発生させる配列方法を解明したことでした。

この2つの発明は、レーダの成立に大きく貢献します。欧米の学会や軍部は、2つの論文にいち早く着目。早速これを応用して、遠方の航空機を早期発見する装置の研究に着手します。これが、レーダです。米英は、大戦後期にはレーダ技術を確立。大戦中盤以降の戦局の逆転に、レーダは大きく資することになります。

 

情報を制するものが、勝つ。偵察こそ、最高の兵器。

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1956年から偵察任務に就いていた、RB-57。被撃墜のリスクが高く、代替機は必須だった。
出典:Wikimedia Commons

第二次大戦に於いて、連合国側が圧倒的優勢となった要因に、情報量が挙げられます。特に、諜報と偵察は重要でした。大戦後、米ソ対立が深刻化すると、ソ連は情報を厳しく統制。すべては鉄のカーテンの向こう側に隠されます。疑心暗鬼にならざるを得ない米国は、対ソ連の情報収集に躍起となります。

東西冷戦下に於ける情報戦に備え、CIAは独自にソ連及び東側諸国に対する航空機での戦略偵察を企てます。見るなと言われると見たくなる。それは人間の心理なのかも知れません。

こうして計画されたのが、遥か高空を飛行することで、迎撃体制が整う前に敵地上空の偵察ミッションを終えて離脱する、敵機に決して撃墜されることのない、戦略偵察機。それは、表向きにはNASAが保有する気象観測機と説明され、すべては秘密のベールに隠されました。

 

米国の秘密基地、エリア51。その存在を信じるか信じないかはあなた次第。

新たなる戦略偵察機の開発のためだけに用意された、地図に記載されない秘密基地。それがグルーム・レイク空軍基地、通称「エリア51」です。ネバダ州の山脈に挟まれた塩湖に設けられたこの基地は、公式には長らく「存在しない」ことになっていました。

CIAがその存在を認めたのは、何と2013年のこと。それでも、米国が絶対に知られたくない何か、があるのは間違いありません。そう、今でもブラックプロジェクトと呼ばれる秘密開発プロジェクトは、ここで行われているのです。ステルスのように、未だ誰もが見たことも聞いたこともない革新的な技術がテストされているかも知れません。

当然ながら、一般人の立ち入りは厳しく制限されており、付近一帯は厳しい警備体制が敷かれています。無闇に撮影を行ったり、侵入を試みた場合、生きて帰れる保証はありません。

 

ロッキードの先進開発部門、その名はスカンクワークス。

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スカンクワークスのエントランスに並ぶ、展示機。処女作P-80と、F-117A。
Alan Radecki [CC BY-SA 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

ベル社の案で内定していた高高度偵察機計画に強引にねじ込んだのは、スカンク・ワークス代表のケリー・ジョンソン。あらゆるコネを使ってコンペに強行参加します。

スカンクワークスはロッキード(現ロッキード・マーティン)の先進開発部門で、超人的な能力を持ち、絶対の機密保持が可能な少数の人員で構成されたスペシャルチームです。スカンクワークスの最大の強みは、研究開発部門と設計部門と生産部門のすべての垣根を取り払ったことです。すべてのエキスパートは、ひとつの部屋に詰め込まれ、机を突き合わせて議論を戦わせました。あらゆる作業は迅速かつ正確に進められ、その信頼は絶大なものとなりました。

しかも、そこには物理学者や数学者もおり、彼らは時に突拍子もないアイデアを思いつくのです。ステルス技術も、そうしたアイデアの中の一つです。

それ故、スカンクワークスは新たな技術を、外部の協力なしに完全にゼロから作り上げることが可能です。外部の人間、それはもしかしたら、ソ連のスパイかも知れないのです。知るものは話さず。話すものは知らず。これが、機密保持の鉄則です。

 

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