スバルの未来を占う試金石。それはレヴォーグじゃない。次期インプレッサだ。 [2020年03月27日更新]

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

スバルの未来を占う試金石。それは、新型レヴォーグじゃない。次期インプレッサだ。

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100年に一度の激変期。自動車は今、革新の戸口に立っています。誰しもが、10年後、20年後の姿を想像すらできない。そんな暗中模索の時代を迎えています。

あらゆるものが激変すれば、各モデルの継続性も確実では無くなります。そんな時代にあって、インプレッサの歴史はあと何年紡がれるのでしょうか?あと、5年?10年?少なくとも、電動化の時代はスバルにも待ったなしにやってきます。自動車を自己所有する時代だって、いつまで続くか分かりません。スバルショップはおろか、自動車販売店なんてものも、過去のものに。。。

もしかしたら、インプレッサは「次のモデルが最期になる」かも知れない。そう考えてみても、決して荒唐無稽ではないのです。

スバル情報といえば、巷は新型レヴォーグ、次期WRXの話題で持ち切りです。しかし、それらはスバルの将来戦略にとって見れば、最重要モデルではありません。既存のSGPに直噴リーンターボを搭載して登場する新型レヴォーグ/次期WRXは、あくまでも既存技術の最終進化系モデルなのです。

これに対し、次期インプレッサは登場時期から考えて、次世代技術を大胆に搭載して登場することが考えられます。つまり、スバルの近未来を占うのは、この次期インプレッサなのです。その出来如何によって、スバルの有り様が大きく変わってくることでしょう。

6代目インプレッサを紐解くカギは、4つあります。環境性能と安全性能、そしてスバルらしさと、求めやすい価格。それらは同時に、スバルが未来に生き残るために成し遂げねばならないタスクでもあります。では、そのタスクを一つずつ見ていきましょう。

 

参考記事

 
 

2020年、トヨタの傘下に入ったスバル。ここから、スバルの新しい未来が拓けていく。


スバルの近未来、ここに最も大きな影響力を持つのが、トヨタです。2020年2月6日、トヨタの株式保有割合が20%を超過したことを公表。これを機会に、スバルはトヨタ傘下に入りました。今後、トヨタはスバルに対し一定の発言力を有することとなり、経営に関する指針を示しつつ、両者共同して未来へと歩みを進めていくことになります。ただ、それがスバル(=スバルファン)にとって、マイナスに働くことはないはずです。

トヨタは、日本経済の一翼を担う巨大企業です。時代の激変を必ずや生き抜き、日本の自動車産業に未来を授けねばなりません。トヨタは、モビリティカンパニーへの改革を公約に掲げていますから、旧来技術の乗用車モデルに賭けるウェイトは、当然低下していくことになります。トヨタが全力を傾注すべきは、未来の自動車を形作る次世代技術だからです。

そこに、スバルを傘下に収めた意味があります。スバルはトヨタグループの一員として、旧来技術による自動車開発の一翼を担いつつ、自動車本来の魅力を前面に押し出したブランドとして、近未来を描いていくことになります。

ここに関わってくるのが、GRです。GRは、未来志向のトヨタに対するカウンターパートとして、自動車らしい魅力を前面に押し出しています。TVCFで積極的にブランド展開し、自動車に対する憧れやワクワクを演出。「もっといいクルマづくり」を最大化する存在となっています。もちろん、GRはモリゾー氏の趣味活動ではありません。

GRの戦略の根幹は、コモディティ化に対するアンチテーゼ。自動車本来の魅力を強烈にアピールすることによって、自動車に対する「憧れ」を惹起させ、自動車が単なるモビリティに「縮退」せぬよう楔を打っているのです。

スバルは、このGRの動きに呼応していくことになるでしょう。STIブランドを強化しつつ、自動車らしさを前面に押し出す戦略へと転じていくはずです。そして、自動車らしいトヨタモデルの開発の一端さえ担っていくことになるでしょう。

 

スバルに課せられたタスク。それは「スバルらしさ」の追求。あの懐かしいスバルが帰ってくる。

この動きを暗示しているのが、先ごろ公開された「SUBARU on-Tube」の衝撃的な動画です。ここに登場するのが、SUBARU代表取締役社長中村友美氏と、トヨタ自動車代表取締役社長豊田章男氏。資本業務提携強化以来初となる、両者揃い踏み映像が公開されたのです。たった2分40秒のこの「忙しい」動画には、スバルの未来を指し示す重要なカギが幾つも隠されています。

冒頭に現れる「いっしょに いいクルマつくろう」には、共同開発の深度化と切磋琢磨という2つの意味があると考えられます。今後、スバルとトヨタは互いに自らの得意分野を共有し、「もっといいクルマづくり」を目指していくことになります。86/BRZ、新開発BEVに留まらず、今後は様々な車種で共同作業が展開されていくことでしょう。そして、そこには6代目インプレッサも含まれてくるはずです。

そして、動画の最後は、中村社長本人の「スバルらしさに本当に全力投球していかなくちゃならない」という言葉で締めくくられています。さて、そもそも「スバルらしさ」とは一体何なのでしょうか?

米国市場で大成功を収めたSUV路線でしょうか?アイサイトを筆頭格とする安全性能でしょうか?直近のスバルが繰り返し使う「動的質感」の追求?それとも・・・?

そのカギも、動画の中にあります。二人が訪れた、STIの総本山たる三鷹。猛然とダッシュする、モリゾー所有のGRBの姿。そして、豊田章男氏が敢えて強調した、水平対向と四駆。つまり、「スバルらしさ」=「あの懐かしいスバル」だと言うことです。「金太郎飴化」と「コモディティ化」が進む自動車業界。その中で生き抜くには、分かりやすいブランドイメージと、ブランドの個性強化が最善策なのです。

フロント搭載の水平対向エンジンと左右完全対称のAWDシステム。そして、その有効性を実証するために始められた、偉大なるWRCへの挑戦と栄光の足跡。その中で磨き上げられていった、世界唯一のドライブトレインから生み出される、清々しく安心感溢れる楽しい走り。

これを最大化していくことが、スバルの新たな使命となります。もちろん、スバルもBEVも発売していかねばなりません。自動運転やコネクテッドにも、注力していかねばなりません。しかし、トヨタと違って、それが全てではない、ということです。

 

スバルイメージの変遷を体現してきた、インプレッサという存在。



考えてみれば、インプレッサほど「スバルらしさ」の変遷を体現するモデルはありません。

インプレッサが計画されたのは、レオーネが「ヘバル・ボローネ」とあだ名され、経営危機のどん底にあった頃。当初予定の新開発直列4気筒を泣く泣く諦め、レガシィのパワートレインを丸ごと流用した「妥協の産物」として、1992年に誕生しています。

打算的に誕生したインプレッサの運命を決定付けたのが、計画途中で追加されたターボモデルでした。後にWRXと呼ばれるこのモデルは、1993年にレガシィに代わってWRCへ参戦を開始します。デビュー戦でいきなり2位表彰台を獲得すると、以降快進撃を展開。独特のボクサーサウンドを響かせるインプレッサは、WRCの伝説へと成長を遂げていきます。

スバル=WRC=インプレッサ。このイメージは非常に鮮烈で、WRX STIこそが真のインプレッサでした。しかし、2代目インプレッサはWRCでは大柄で、徐々に苦戦を始めます。3代目インプレッサでは完全なる苦境に。。。そして、2007年、WRC撤退。

2011年に登場したのは、4代目インプレッサ。WRXは独立し、ターボモデルは全廃。翌年には、クロスオーバーモデルのXVが登場。米国では空前のSUVブームとあって、スバルはこのクロスオーバーモデルに、並々ならぬ期待を掛けていました。とは言っても、4代目インプレッサのイメージ牽引役は、やはりアイサイト。この新技術が、インプレッサを世界で最も安全なクルマの一つとして印象付けることになります。スバルは、インプレッサを「安全なファミリーカー」へと大きく変針させたのです。

2016年登場の現行5代目は、4代目を継承する正常進化版。新たにSGPを採用し、走りを徹底的に進化させたインプレッサは、この年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。翌年には、満を持してXVが登場。米国ではXV(現地名クロストレック)の販売が順調に伸びており、今やスバルブランドの柱の一つへと成長を遂げていきます。

WRC直系のハイパフォーマンスイメージから、アイサイトを筆頭とする安全性能と、XVのSUVイメージ。インプレッサは、近代スバルのイメージ変遷の縮図そのものと言えるでしょう。

 

2022年発表?6代目インプレッサの基本コンセプトとは??

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これらを鑑みた上で、6代目インプレッサの基本コンセプトを考えてみましょう。

「スバルらしさ」を最大化させるとすれば、それを体現するフラッグシップグレードが必要です。その一方、6代目のモデルライフは2022年末から2029年頃まで続きますから、次世代の燃費規制CAFEへの対応や、2030年死亡交通事故ゼロ達成も考慮せねばなりません。

これらを上手くバランスさせるに際し、クローズアップされるのがSTIです。GRを事例に考えてみましょう。GRは、専用モデルとしてGR・ヤリスやスープラを開発。モータースポーツにワークス参戦し、これをイメージ展開させつつ、CH-Rやアクア、ノアなどに「薄味」のGR版をラインナップしています。このGRの存在は、トヨタ全体のラインナップを「若々しく」「エキサイティング」な方向に牽引する役を果たしています。

この戦略をそのままインプレッサに適応すれば、GR=STIとなります。つまり、ハイパフォーマンス仕様の「STI・インプレッサ」なるものが登場。この「STI・インプレッサ」を前面に出して、イメージ戦略を展開。インプレッサ=ハイパフォーマンスのイメージを惹起させつつ、一方の「スバル・インプレッサ」は世界最高峰の環境性能と安全性能を装備する。これが、基本線となると考えられます。これにより、インプレッサは若々しく刺激的なモデルとして再認知されるようになるでしょう。

このSTI・インプレッサは、現在のSTI Sportのような薄味では全く意味を成しません。人々にWRC時代を思い起こさせるような、スバルらしく分かりやすいパフォーマンスが不可欠です。強烈なイメージが無ければ、インプレッサのイメージを再構築出来ないからです。2019年1月の東京オートサロンで参考出品された、現行インプレッサのSTI Sportが沙汰止みとなっているのは、この辺りを考慮してのことかも知れません。

一方、スバル・インプレッサの方は、CAFE規制ゼロの段階施行への対応と死亡交通事故ゼロ達成を主眼に、ハイブリッドユニットをメインに据えて燃費を稼ぎつつ、最高峰の予防安全技術と衝突安全性能を得て、先進的かつ洗練されたイメージが付与されるでしょう。

 

ハイブリッドがメイングレードに。e-BOXERとTHSの2本立て。

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パワーユニットに関するロードマップを信じる限り、ストロングハイブリッドは2023年発売開始。e-BOXERは、2030年頃まで継続される計画です。もし、6代目インプレッサが2022年秋発表、2023年初頭発売とすれば、ストロングハイブリッドは問題なく間に合います。

主力グレードは、2.0Lのe-BOXERとなるでしょう。ただ、現状のままでは如何せん燃費不足ですから、エンジンの燃焼効率改善による熱効率向上と、モータの出力向上による回生効率向上は必須です。WLTC総合値では現行比+20%の改善となる、22〜25km/Lは最低限必要でしょう。但し、メイングレードですから、価格転嫁には限度があります。コストダウンも、大きなテーマとなるはずです。なお、e-BOXERは、この改良を以て最終進化版となり、次期フォレスターのモデルライフが終了する2030年には、退役となる計画です。

本命のストロングハイブリッドですが、こちらは米国専売のPHVユニットの改良版です。THSベースのトランスミッションに、新開発のハイブリッド専用高効率エンジンが組み合わされますから、相当の燃費改善が見込まれます。WLTC総合値では、最低限27〜30km/Lは期待したい処です。THSは、e-BOXERよりも上級に位置づけられ、より高い性能を標榜することになるでしょう。

ただ、スバルらしさを追求するに際し、THSのドライブフィールは悩みの種となるでしょう。エンジンとモータのトルクミックスで作られるTHSの加速感は、その時々のバッテリ残量次第。次の加速がどんな感じなのか、それはアクセルを踏むまで予測できないのです。「燃費マシーン」ならばそれも許容されましょうが、スバルファンは決して許さないはず。そんな加速感では動的質感などあったものではありません。

もちろん、THSの特性は制御マップ次第ですから、やり様はあるわけです。例えば、標準を燃費最優先の「Ecoモード」として燃費値を稼ぎつつ、「Sモード」ではたっぷりスバルらしさを盛り込む、そんな芸当も可能です。そして、そのスバルの「こだわり」は、THSに新たな進化をもたらすことでしょう。しかし、それにはトヨタ側の協力が不可欠です。それを具現化できるかどうか、それは両者の協業の深度化を示すバロメータともなるでしょう。

 

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