スバルショップ三河安城の最新情報。未来のクルマのあるべき姿とは。中心にあるは、常に「人」たるべし。| 2020年9月13日更新

 
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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

未来のクルマのあるべき姿とは。

スバル・360

複合材料製ルーフパネルとポリカーボネイト製リヤウィンドウ、超薄板厚鋼板による軽量ボディ。そして、極限までコンパクトに設計された、軽量なドライブトレイン。

これを聞いて、どんなクルマを想像するでしょうか?最新の欧州製BEVでしょうか?はたまた、トヨタのコンセプトカーでしょうか?

いいえ。これは、国民車として広く親しまれた日本初の本格軽自動車、スバル・360です。驚くべきことに、1958年(昭和33年)3月3日に発表された富士重工初の軽自動車は、現代にさえ先んじる革新的構造設計を導入していたのです。

スバル・360を誕生させた背景には、戦後復興への強い思いと、その裏にある明日食べていくための焦り、そして、航空産業で培った高度な構造解析技術がありました。そして何より、そうした技術の中心には、常に「人」がありました。しかも、それは創る側ではなく、使う側の「人」です。

「乗れれば良い、走れば良い。」という創る側視点での設計思想ではなく、限りのあるパッケージングの中で、最大限の快適性を限界まで安価で提供する、という使う側の視点に立った発想です。そう、スバル・360の主役はクルマではなく、人なのです。だからこそ、日本国民に広く親しまれた存在となり得たのです。

工業的先進性に秀でたクルマは、数多く存在してきました。しかし、それらがすべて広く親しまれた訳ではありません。なぜなら、そうしたクルマの多くは、得てしてクルマが主役だったからです。技術のためにクルマがあるのではありません。人のために、クルマは存在するのですから。

今回は、未来のクルマのあるべき姿について、幾つか提案をしていきたいと思います。

 

1.重量半分・寿命半分・価格半分。

「重量半分・寿命半分・価格半分。」という、衝撃的なキーワードを掲げて1992年(平成4年)に登場した、JR東日本901系試作通勤電車。当時の鉄道車両は、30年の継続使用を前提にしつつ、逐次改修を施すことで半世紀近く使用が可能な設計を採用していました。主要構造はその分だけ堅牢な設計としていたため、重量も価格も嵩んでいたのです。

一方で、90年代は技術的発達が目覚ましく、これを逐次取り入れるには、30年では寿命が長過ぎると考えられました。そこで、寿命を税法上の減価償却期間である13年に設定し、極限まで簡略化した構造を採用することで価格と重量を半減。使用電力と維持費を劇的に改善。この費用を新車更新費用に宛てて、逐次置き換えることで利用者に最新のサービスを提供することを目指したのです。

自動車に於いて、こうした発想に基づいて設計された事例は殆どありません。一例を挙げれば、インドのタタが開発した「ナノ」が挙げられるでしょう。ただ、それとて成功とは言い難いものでした。

近年の自動車技術には目覚ましいものがあり、これを逐次取り入れるのならば、現在の10年・10万キロという寿命設定は長過ぎるのかも知れません。これを5年・5万キロに改めつつ、重量半分・価格半分が達成し得るのであれば、自動車の経済性は劇的に改善されるはずであり、新たな需要を開拓できる可能性があります。

 

2.モジュール化

ここで言うモジュール化とは、エンジンの気筒数変更やプラットフォーム導入による車体サイズ変更等、現代の自動車工業におけるモジュール化を指すのではありません。それは、車両そのもののモジュール化です。

鉄道車両の場合、旅客需要に応じて車両数を増減させて対応することが可能です。気動車特急では閑散期は4〜5両としつつ、繁忙期は9両に増結して対応しています。これにより「空気輸送」が解消され、運用効率・経済性が向上します。

自動車で、このような芸当は不可能でしょうか?例えば、朝の通勤渋滞。当然ながら、ほぼすべてのクルマが1人乗車。これを超コンパクトな1人乗り車両に置き換えられれば、渋滞は相当程度解消されるはずです。ただ、1人乗車の自動車など不便すぎて、使い物になりません。

そこで、まるで戦隊モノのロボットのように、車両をモジュール化。需要に応じて、必要数を「合体」させるのは、どうでしょうか?つまり、4人乗りならば、1人乗りモジュール4台を購入するのです。買い物で荷物が多いのなら、2モジュールを連結。旅行に行く際には、4モジュールを合体させます。

そんなアイデアは実現不可能。荒唐無稽・笑止千万?確かにそうでしょう。でも、不可能を可能にするのが、そもそもエンジニアの仕事です。そこに至る思考を放棄するのなら、今後一切の革新はあり得ないでしょう。

 

3.まったく新たな価値の提供

現代に於ける自動車の付加価値は、ブランド価値や絶対性能、快適性・居住性、希少性といった観点から決定されます。つまり、メルセデス製大型モデルの大出力グレードは、ダイハツ製小型モデルの通常出力モデルより、10倍も高額である。そういう価値観は、長年に渡って自動車業界の「常識」となってきました。

ただ、そうした価値感は、如何せん陳腐化しつあると考えられないでしょうか?加えて言えば、この価値観の主役はクルマであって、ユーザー本人に直接的に作用するものではありません。これを、すっかり人を中心とした価値観にすり替えることが出来るれば、新たな価値観を創出し得るのではないでしょうか。

近年、自動車技術は飛躍的進化を遂げており、革新的な能力を手にしつつあります。ただ、何れもその中心にクルマを据えているがために、いまいちピンと来ない感は否めません。それは、そうした技術の数々が、人を中心にして体系付けられていないからです。

現状、クルマの運転・乗車には、少なからず疲労を伴います。つまり、「快適性」という言葉を用いながらも、実質的にはそれは「疲労度」なのです。これを転じて、本当に「快適性」を付与したらどうでしょう。クルマに乗れば乗るほど、疲れが取れる。まるで温泉のような効能があったとしら、それは新たな価値と見なせるのではないでしょうか。

自動車とは斯くあるべし。という観念の元では、革新は生まれません。人を中心に置いて、クルマを単なる移動体として、すべてをゼロから考えたとき。まったく新たな価値観を持った自動車が誕生するはずです。

 

4.移動空気清浄機

現状、自動車というモノが母なる地球に仇なす存在であるのは、間違いありません。果たして、こんな不忠者を許しておいて良いのでしょうか。

質量がある物体を移動させるには、当然ながらエネルギーが必要です。自動車は、このエネルギーを化石燃料に依存してきたが為に、環境負荷を与える「負の存在」となっているのです。そこで、化石燃料を持続可能なエネルギー源に切り替えることで、環境負荷を低減しようという試みは長年研究が進められてきました。そして、漸く人類はEVの時代に達しようとしています。

ただ、発電とて環境負荷とは無縁ではありませんから、環境負荷低減は出来ても、環境負荷ゼロ達成は相当に困難な試みとなるでしょう。ただ、そうした自動車とて、傷付いた地球を癒やすには力不足です。では、負荷を転じて、環境に貢献する=プラスの作用をする技術は実現不可能でしょうか。

例えば、植物は地球環境に貢献しつつ、エネルギーを生み出しています。つまり、地球環境にプラスの作用をしつつ、エネルギーを得ることは原理上不可能ではないのです。

当然ながら、現用の技術では自動車ほどの重量物を動かすことは不可能です。しかし、技術開発が進展すれば、将来的にそれが可能になる時代が来るかも知れません。走れば走るほど、空気をキレイにしていく自動車。自動車が増えれば増えるほど、地球がより良くケアされていく。そんな自動車が実現できたとき、漸く自動車は「孝行者」となることができるでしょう。

 

5.運転席シートの超小型モビリティ化

自動車は、数万もの多様な部品で構成されています。惜しむらくは、それら部品が自動車を動かす以外に役を成さないこと。。。そんなこと、当たり前だ。「自動車部品」なんだから。と、仰る方もいらっしゃるでしょう。

では、スマホはどうでしょう。スマホを単なる「携帯電話」として使っている人は、むしろ少数派でしょう。今や、スマホは自身を投影する写し鏡であり、自分自身の可能性を如何様にも広げてくれる、もっとも身近で、もっとも自在なデバイスです。スマホの登場により、携帯音楽プレーヤーやCDは不要の存在となりました。

一つのモノに複数の役割を与えれば、ムダは削減され、可能性は拡大するのです。

自動車では、このような可能性はあり得ないでしょうか。もし、クルマから取り外したある部分が、まったく別の目的を果たすとなれば、自動車の可能性はもっと広がるでしょう。PHVを非常時の家庭用電源として使うというアイデアは、こうした考えに基づくものです。

運転席を超小型モビリティとするのも、自動車部品の可能性拡大の一つです。駐車場にクルマを停めれば、シートに座ったそのままで移動ができる。それが実現すれば、障害を抱える方々に大いに役立つことでしょう。

でも、自動車にはもっともっと多くの部品が搭載されており、今後さらに発展を遂げていきます。各種ランプ、大画面モニタ、エアコン、センサー、カメラ、高速大容量ECU、大容量バッテリモジュール等々。これらを活用することで、自動車の可能性も大いに広がるのではないでしょうか。

 

6.空飛ぶ自動車

空飛ぶ自動車。それは、本当に「理想的なモビリティ」なのでしょうか?もし、そうならば、空飛ぶ自動車を世界中の人々がマイカーの如く利用する未来を想像するべきでしょう。

空は統制が取れぬほど混雑し、地上にいる者は常に落下物を恐れて生活せねばなりません。そもそも回転翼機が回転翼機の真下に至ると、揚力を失ってアッという間に墜落します。固定翼機でも、機体同士を接近させるのは大変危険な行為です。ブルーインパルスのパイロットに誰でもなれる訳ではないのは、皆さんもご存知でしょう。たくさんのドローンで空が通勤渋滞なんてことは、気流が安定しないため、絶対にあり得ないなのです。

航空機が絶対的に不利である理由は、重力へ逆らうことにあります。つまり、航空機は自らを空中に留め置くために、相当慎重に空気の流れを管理しつつ、莫大なエネルギーを使用しているのです。固定翼機の場合、これを対気速度によって揚力を発生させることで、その多くを補っています。だからこそ、3000m級の巨大滑走路と緻密な航空管制を必要としているのです。

そもそも、自動車メーカーが空飛ぶ自動車に取り組むのであれば、現在全力を投じている環境性能向上及び交通事故ゼロへの取り組みとの「論理的整合性」を説明しなければならないでしょう。

航空機は悪天候下では飛べません。加えて、事故・故障は確実に「死」を意味します。それに、9.11を振り返れば分かるように、航空機は強大な「殺人兵器」ともなり得るのです。誰しもが空を自由に飛べるという未来は、人類にとって決して幸福とは言えないでしょう。

 

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